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ゼインは調合したい  作者: トウカ


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第57話 独裁都市ゲルダ (1)

「やっと街に着いたな…」


疲弊した冒険者二人組が街に近づいたとき、男の一人が足を止める。


「おい、待て。ここはダメだ」

「ん?何がダメなんだ?」

「知らないのか?ここは独裁都市ゲルダだ。能力者殺しの街だよ」



宿屋を出た後に驚いたのは、もう夕方になろうとしていたことだった。

俺達はそんなに眠っていたのか?

いや、この身体のダルさ、昨日の夜飯に何か入ってたのかもしれない。

守り人達が先導した先は街の奥地にある建物だった。窓が一つもなく、まるで要塞のようだ。

中に入ると、その地下へと進む。

地下は思ったより開けた場所で、下水道のような臭いが立ち込めていた。

大きい空洞のような道を静かに歩く。

一体どこに連れて行かれるんだ。

手錠は頑丈で簡単に外せそうにない。

しかも、この手錠は恐らく内側に針のような物が仕込まれている。そこから少しずつ血が抜かれているのを感じる。

能力者の力を封じるためか。

血を抜かれれば当然出せるスキルの力は小さくなる。

エンキは相当な手練れだ。雷魔剣があれば分からないが、それも手元にない。

それにログもいる。人質に取られたら面倒だ。

今は動けないな。

右に曲がって、左に曲がる。今度はまた右。

エンキは迷いなく進んでいく。

どれくらい歩いただろうか。少なくとも一時間以上は歩いてる。

ログがいるから迷うことはないけど、やけに入り組んでいる。

ここは何のための場所なんだ?

ようやく行き止まりが見えてきた。

そこにはまた別の守り人が二人立っていた。

そして、男らに何か言い寄る女の姿があった。

彼女はエンキと同じ格好をしている。この女もエンキと同じくらい強いのだろうか。

それと、ここが目的地というわけでもなさそうだ。

左右にはレンガ造りの道が続いている。壁には電灯も設置され、明らかに人の手が加えられていた。


「アイミー、こんな所で何をしている」

「何って見たら分かるでしょ?口説いてんのよ」

「遊んでないで、さっさと持ち場に戻れ」

「ハイハイ。じゃあ、今日私の部屋に来てね」


鼻の下を伸ばした男達は嬉しそうに「はい」と答える。

エンキが門兵である守り人を睨見つけると、緩んだ顔から怯えた表情へと変わる。


「業務に集中しろ」

「は、はい…!申し訳ありません!」


門兵の謝罪に目もくれず、エンキは右の道に進む。


「ねえ、エンキ。どこ行くの?」


アイミーが呼び止める。

エンキはその問いかけに呆れたように答える。


「決まっているだろ。男牢だんろうだ」

「ちょっと待って。この子は女の子だよ」


アイミーはログの肩に手を回し、その顔を撫でるように手をわせる。

反論しようとするエンキに見せつけるように、アイミーはログの胸を下から持ち上げる。

その小さな膨らみが露わになる。


「や、止めて下さい!」

「ほらね?君はお姉さんとコッチ」


ログの背中を押し、左の道に進もうとするアイミー。しかし、エンキは何も言わなかった。

どうやらログを女だと認めたようだ。

男と女で行き先が変わるのか?

そんなことよりもログを連れて行かれては俺が困る。

抵抗する俺を守り人の一人が止める。


「おい、待て!ログをどこに連れて行くつもりだ!」

「大丈夫。君と同じ場所だよ」


アイミーは悪戯いたずらっぽく微笑んだ。

ログは後ろ髪を引かれながらも、大人しくアイミーについていく。

まさかゼインと別々にされるとは思わなかった。

でも、同じ場所に連れて行かれるってどういうことだろう。


「ログちゃんは好きな子いる?彼がそう?」


アイミーは楽しそうに話し掛けてくる。


「いや、そういうのは…」

「そっかそっか!私はアイミー。よろしくね!お姉さんが色々教えてあげるね♡」


アイミーはログの頭、頬、肩、腰へと触れる。

身体がゾクゾクと反応する。

この人、何か危ない…!

アイミーの異常な交流に困惑しながらも、道の先にある螺旋階段を降りる。

まだ地下があるようだ。

降りた先の扉にアイミーは手の平をあてる。

すると、ピーッという音が鳴り、電灯が緑色に光ると同時に鍵が開いた音がした。

そして、アイミーは楽しそうに扉を開ける。


「さあ、着いたよ♡」



その反対側。

エンキは彼の手を承認した扉を開ける。

そこには小さな個室だった。

机しかない簡素な部屋だ。机の上には無地の白服が用意されていた。


「この服に着替えろ」

「手、塞がってるんだけど」


守り人が俺の手錠を外す。

だが、繋ぎの部分を外しただけで、かせは付けられたままだった。

エンキは繋ぎのカプセルを振る。やはり俺の血が入っているようだ。

ふらつくほどじゃない。スキルは普通に使えそうだ。

でも枷を外さないってことは、いざという時にこれで俺の血を抜いて無力化するつもりなのだろう。

だが、遠隔では操作できないはずだ。脱出できる望みはある。

白服に着替えると、俺の服やポーチは没収された。


「来い」


入口とは違う別の扉へと進む。

そこは地上に届きそうな高さまで吹き抜けのある場所だった。壁一面に檻が所狭しと並んでいる。しかし、中に入っているのは魔物ではなく人だ。

値踏みをするように俺を観察してくる者も入れば、出せと叫ぶ者もいた。


「何だここは…」

「ここはゲルダ収容所だ」


どれもが男だった。あの女が言ってたのはこういう意味か。

ログもここと同じような場所に連れられたのだろう。そしてそこには女しかいないはずだ。

エンキは檻の前で立ち止まる。


「ここがお前の部屋だ」


中に入れられると、扉に鍵を掛けられた。

ここで過ごせってことか。

それでも今は血を抜かれてないし手の自由も効く。脱出までの算段をつけることはできるだろう。

ログと会った村を思い出すな。

だが、あのときとは状況が違う。

まずはログと合流しないとな。

部屋には簡易的な二段ベッド、簡易トイレ、小さな洗面所があった。

ベッドの下の段には男が一人座っていた。


「よう、新入り」

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