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ゼインは調合したい  作者: トウカ


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第55話 シリルの初恋 (2)

「そうだ、どこから来たか分かる?」

「ずっと歩いてたから、どこから来たか分からなくなっちゃった…」

「ちょっと待ってて」


シリルは建物の柵や看板を伝って道に降り立ち、店の前で椅子に腰掛けている老人に声を掛ける。


「すみませんニャ」

「なんだい?」

「エリーって人、知らないかニャ?」

「うーん、知らないねえ」

「ありがとニャ」


同じように降りてきたリリーが感嘆の声を漏らす。


「凄い、人の言葉が話せるの?」

「そうだよ!」

「カッコいいね!」


リリーの言葉に顔を赤らめる。

やる気を出したシリルは更に他の人にも聞いてまわる。

しかし、誰からも有力な話は聞けなかった。


バレないように遠目から見守っていたログ。

仲良く話してるみたいだから声掛けなかったけど、あの子の飼い主を探してるみたいだ。

ログも道行く人にエリーという人を知らないか尋ねるが、誰も知っている人はいなかった。

あ、シリルがいない!どこ行ったんだ?

ログは左右を見渡し、当てずっぽうに歩き始める。



ログがシリルを再び探し始めた頃、シリルは路地裏にいた魔犬と対峙していた。

シリルと魔犬はお互い威嚇し合う。痩せ細ってはいるが、体格は向こうの方が何倍も大きい。

リリーは怯えて身体を震わせている。

こいつに特別な力はないけど肉食ニャ。

腹減ってるんだろうけど、ご飯になってあげるわけにはいかないニャ!

シリルが魔犬の首元に飛びかかる。

これで噛みつかれないニャ!

しかし、魔犬は首を素早く左右に振る。その勢いで吹き飛ばされてしまう。

さらに噛みつこうとする魔犬が迫る。

どうにか寸前で避けると、シリルは壁に向かって飛び跳ねる。そのまま反対側の壁に飛び移り、高さを確保する。

食らえニャ!

両足を揃えて魔犬へと飛び蹴りを食らわせる。

まともに攻撃を受けた魔犬は、その場に倒れた。


「シリル!凄く強いのね!」

「こ、これくらい余裕だよ!」


危なかったニャ。倒れてくれて良かったニャ…。

ホッと息をつくシリル。

リリーは目をまわす魔犬に近寄る。そのとき、何か気になる匂いがした。


「あ、この匂い、嗅いだことある!エリーが好きなお菓子の匂いだ!」



ホスブラが引く馬車の中。


「お嬢様、リリーは他の執事達が探しています。どうか気を落とさないでください」

「でも、でも、もしリリーとこのまま会えなくなったらって思うと…」


まだ幼いお嬢様はまた悲しそうに目を潤ませる。

リリーがいなくなってから二日。

不安は募る一方なのだろう。

何か手がかりの一つでも見つかればいいのだが。


「リリーが戻ってきたとき、お嬢様が元気じゃないとリリーも悲しみますよ」

「でも…」

「今日はお嬢様のお気に入りのお菓子でも買って帰りましょうか。あそこにはリリーが好きなおやつも置いてましたね。もしかしたら匂いにつられて帰ってくるかもしれませんよ」

「うん…」


店に着くと色とりどりの菓子が出迎えてくれた。

しかし、その菓子でさえもお嬢様を笑顔にするには足りないようだ。

しかし、たとえ気休めでもないよりはいい。


「さあ、お嬢様。どれにしましょうか?」

「やっぱり今日はいい…」


少女は小さく首を振った。

そんな気分ではないか。仕方ない。


「そうですか…。ではお屋敷に戻りましょうか」


馬車に戻ろうとしたとき、背後から大きな鳴き声が聞こえてきた。


「ニャア!(エリー!)」


振り返ると、リリーが飛びかかってきた。

少女は泣きながら強く抱きしめる。

二人は幸せそうな笑顔を浮かべていた。


「リリー!!リリー!!良かった、本当に良かった…!」

「ニャアッ!(ありがとう!)」


リリーがシリルに目を向けたとき、彼の姿はどこにもなかった。


「リリー!早くお家に帰ろう!」

「ニャア!(うん!)」


執事は店主に声を掛ける。


「店主殿。店の前で騒がしくして申し訳ない。このお得意様セットを一つもらいたい」

「いえいえ、毎度ありがとうございます。エリザベスお嬢様の嬉しそうなお顔が見れて、私も嬉しくなりますよ」



もう夜になっちゃったニャ。

ゼインとログ寂しがってないかニャ。

トボトボと道を歩いていると、曲がり角からログが現れる。


「あ、シリルいた!」

「ログ!」


シリルはログに駆け寄ると、そのまま抱きつく。

その身体には至る所に擦り傷や汚れがついていた。


「用事は済んだの?」

「…うん、終わったニャ」


シリルは満足そうに笑った。


「そっか。じゃあ帰ろう。今日の夜ご飯はシリルの食べたい物にしようか!」

「やったニャ!魚がいいニャ!」

「よし、じゃあ市場行こっか!」


その頃、ゼインは部屋のベッドで大の字になって、手足をジタバタさせていた。


「あー、腹減ったー」

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