おまけ ティータイムはお静かに
これはルルフがロムレス城に潜入する前のこと。
ハクエイの基地の一つ。
任務地近くの移動拠点で休むことにしたルルフとミルル。
偶然ラッシュとマニとも任務地が近かったため、同じ拠点で暫く同じ時間を過ごすことになった。
しかし、ルルフの「俺より弱えくせに」という一言から平穏な時間は幕を閉じる。
「あ、誰がてめえより弱いって!?」
「あんたは所詮範囲内に敵がいないと何もできねえだろ」
「ヒッ。俺の魔物なら街一つ壊すなんて容易い」
「てめえは黙ってろ!」
「あんたは何もやってねえだろ!魔物がいなきゃ無能なくせに!」
「ヒッ。何だと!」
口論は次第に過熱し始めるが、ハクエイの構成員達は使者同士の争いに口を挟めずにいた。
そんなどうでもいい喧嘩を傍観するミルル。
さて、次の依頼まで時間あるし、おやつでも食べよう。
ミルルはケークと紅茶を優雅に用意すると、周りの喧騒も気にせず至福の時間を満喫する。
はあー、この時間が一番幸せ。
「じゃあ、この場で誰が一番強いか教えてやるよ」
「ハッハ!上等だ!」
「ヒッ。ここでやるのは公平じゃない!もっと広い場所でやるべきだ!」
「じゃあ、てめえは負けだな!強い奴は場所に関係なく強いんだよ!」
ラッシュに突き飛ばされたマニは机にぶつかる。
その勢いで食器が割れ、ミルルのケークも床に落ちてしまう。
「「「あ」」」
現実を受け止めきれず、落ちたケークを見つめるミルル。
その後、狂気に満ちた瞳で三人を睨む。
三人の髪や服が見事に風の刃によって切られる。
「あっぶねえ!」
「お、おい、お前の妹、完全に殺る気だったぞ」
誰もが肌で感じた。
ミルルの怒りが頂点に達していることを。
「ミルルのイチゴール…最後にとっておいたのに…私の幸せを…よくも…」
やべえ。
ミルルがいつも最後の楽しみにとっておいたイチゴールが…!
菓子のことでミルルを怒らせたら暴走しちまう!
男達は咄嗟に理解した。このままではこの場にいる全員が殺されると。
初めて一致団結した彼らの行動は早かった。
壊した食器や机を即座に片付ける。
「ミ、ミルル!俺の分のケークあげるからさ、機嫌直してくれよ、な?」
「ヒッ。このカップ、良い柄だろ?ミルルにあげよう…!」
「ほら、紅茶、淹れておいたぜ」
ミルルは静かに座り直すと、穏やかなティータイムを再開した。
肝を冷やした男達は、安堵の吐息を漏らした。
それ以降、ミルルがティータイムをしているときは喧嘩禁止という暗黙の了解が組織内に知れ渡った。




