第52話 親睦会 (3)
「シリル、他の人間がいるかどうか分かるか?」
「そんなの簡単ニャ」
シリルは道に鼻をつけると、すぐに匂いを探しあてたようだ。
この辺りは人がほとんど来ないなら辿るのはさほど難しくないのだろう。
シリルに付いて進んで行くと、標的を探して弓を構えている男の姿があった。
「いたぞ!」
見つかった!?なんで!?
カーネスは捕まったのか?
シュタインは逃げながら矢を放つ。しかし、リューズが簡単に払い除ける。
「スキル持ちでしょうか?走りながら我々を正確に狙ってきますね」
「ああ。だが、我々の敵ではない」
射線が通るということは、こちらも同じだ。
レイムが炎球を放つ。
弓と同じ軌道を辿り、シュタインに命中し、その服が燃え上がる。
「あっつ!あつ!」
メイランが燃えた部分に水弾を当てて消火する。
皮膚は赤くなってはいるが、火傷はしていなさそうだ。
痛みで会話ができなくなっては困るからな。
「シリル、他に仲間はいそうか?」
「他の奴の匂いはしないニャ」
「メイラン殿、先程は助かった」
「いえ、このくらいは当然です」
カーネスと二人並べて尋問を始める。
「何でこんなことをした?」
「俺達はこの辺りにいた魔物を倒していただけだ!冒険者として正しい行いだろ!」
「お前達が拠点にしていた場所にハシュビーの首飾りや腕輪が見つかっている。言い逃れはできないぞ」
「くそっ」
「申し訳ありませんでした…!」
見たところ金に困って魔物狩りを始めたってとこか。
こんな希少な物が出回れば、怪しんだ騎士団がいずれ出どころを確かめにくるだろう。
遅かれ早かれ、この悪行は明らかになっただろうが、早めに捕らえられて良かった。
希少な魔物の生態系を守ることができた。
「君、名前は何という?」
「え、シュ、シュタインと言います」
「シュタイン、君のスキルは正確に弓を射るものか?」
「は、はい。正確には標的として認識した所に身体の向きを調整する力になります」
「ハシュビーは翼に傷を負っていた。見るに、君はこの狩りに迷いがあったのではないか?」
確かにその腕があれば、ハシュビーの頭を撃ち抜くことができただろう。
シュタインは何も答えなかった。
仲間の手前、言い辛いのかもしれない。
「君のスキルはもっと正しく使えるだろう。罪を償ったら、ロムレス騎士団に来るといい。私が推薦しよう」
「え?」
「その力を民のために使って欲しい」
「は、はい!ありがとうございます…!」
カーネスは舌打ちする。
仲間だけ手を差し伸べられたのが気に食わないのだろう。
「お前はそうだな。偵察部隊なんてどうだ?」
「は?」
「魔物の飛行経路を見抜くのは相当骨が折れる。視力も観察力もいいのだろう。そちらで存分に力を発揮してくれ」
反省の色をみせていない男にもそんな道を提示するのか。
この人はお人好しだな。
いや、騎士団に入れば、厳しい縦社会のもと更なる更生に繋がるか。それに他の兵士がいる以上、必然的に監視の目もある。
やはりこの人は食えない男だな。
「キーソン、悪いが彼らの身柄を受け渡してきてくれ」
「承知致しました」
キーソンは二人を連れて森を離れる。
レイム達はハシュビーのもとに残したスオナとハクトと合流する。
「あ、あれ、ハシュビーじゃないか?」
ハシュビーの群れが夜空を旋回するのが見えた。その中の一匹が何かを探すように鳴いていた。
ハシュビーの子どもも答えるように鳴くと、群れへと飛んでいく。
良かった、ちゃんと飛べてる。傷は問題なさそうだな。
途中、ハシュビーの子どもはこちらに顔を向けると、高らかに鳴いた。
「助けてくれてありがとう、ご飯も美味しかったって言ってるニャ」
「そうか」
「元気でねー!」
ログはハシュビーに大きく手を振った。
思わぬ出会いと別れ。
魔物との出会いは恐ろしく、悪いことばかりだが、今日の出会いは数少ない良い方だな。
「よし、これで一件落着だな」
そのとき、空間を割くように勢いよく男が飛び出てきた。
「ババーン!!呼ばれて飛び出て、いざ来たれ!情報屋のヒロトだよ!」
「うわっ!」
こいつは毎度心臓に悪い。
もう少し静かに出てきて欲しいもんだ。
突然の来訪者にレイムは問いかける。
「どうした、ヒロト?」
「今日はゼインくんに用があって来たんだ」
「俺に?」
「君にこれを渡してくれって」
ヒロトはゼインに手紙を渡す。
「何だこれ?」
「招待状だよ」
「招待状?」




