第51話 親睦会 (2)
ログはレイム達に事情を伝えると、魔物がいる場所に皆が集まった。
「魔物の子どもがどうして?」
「この辺りに魔物の住処はないはずだが…」
「こいつ、怪我してるな」
ゼインの言う通り、確かに翼の上部に怪我をしていた。
この傷が原因で飛べず、食事を取れないまま弱っていたのかもしれない。
ゼインは魔物をじっと観察すると、記憶の中の知識と結びつける。
「この魔物、ハシュビーじゃないか?」
「ハシュビー?」
「ハシュビーは数が少なく希少な魔物で、小さい魔物を食べて暮らしています」
「あー、確かに。この羽根を使った装飾品を見かけたことがあるな」
「シリル、ハシュビーと話せるか?」
シリルはゆっくりとハシュビーに近づく。
お互い短い鳴き声を繰り返す。ちゃんと会話ができているようだ。
「皆と飛んでたら、誰かに射られたらしいニャ。お母さんの所に帰りたいって言ってるニャ」
「射られた?ここに侵入者がいるのか?」
下から射られたなら、誰にやられたか分からないだろうな。
「大分衰弱している。まずは治療が先だな。ゼイン、スオナ治せるか?」
ハシュビーは近づこうとする二人を威嚇し、翼を広げる。人に射られたのだから当然か。
だが、傷が痛むのか再び倒れてしまう。それでも立ち上がろうとしていた。
このままでは傷口が広がってしまう。
「大丈夫ニャ!皆、良い人ニャ!」
シリルが必死に訴えてもハシュビーの興奮状態は収まらなかった。
ゼインが一歩前に出る。
しかし、ハシュビーは倒れたままゼインの腕に噛みつく。
ゼインは痛みを堪えながら、ハシュビーを優しく撫でる。
「もう大丈夫だ、大丈夫だからな。すぐ皆の所に帰してやるからな」
怒りに満ちたハシュビーがようやく落ち着きを取り戻す。
「ゼイン、腕が!」
「俺は大丈夫です。ハシュビーの方を先に診ましょう」
腕に包帯を巻いて応急処置をした後、ハシュビーの傷の具合を確かめる。
深めに抉れている。これは結構血が流れているな。
「少し染みるぞ」
手持ちの治癒液を垂らしてみると、痛そうに悶える。
しかも、思ったより効果がなさそうだ。魔物用に作った訳ではないから当然といえば当然か。
魔物と人は根本的に身体の構造が違う。
「手持ちの薬では魔物には効果ないみたいです」
「この薬草を加えてみてはいかがですか?」
スオナが取り出したのはドトクダミだった。
人間に使うなら少量で済むほど、効能が強い薬草だ。手持ちの薬との相性も悪くない。
これをそのまま使えば効果が出るかもしれない。
「やってみます」
今使った治癒液との整合性を調整しながらスキルを発動する。
再構築した薬をもう一度傷口に塗ると、みるみる塞がっていった。
ハシュビーは嬉しそうに翼を広げる。
「よし、これで大丈夫だな。でも、まだあまり無理するな。かなり衰弱してる。このまま飛べば体力なくて途中で墜落するぞ」
ゼイン達が治療している間に、レイム達は細かく切った余った肉をハシュビーに与える。
ハシュビーは匂いを嗅ぐと少しずつ食べ始めた。
「さあ、次は…」
「悪者を捕まえないとだな!」
◆
レイム達から離れた森の中で下品な笑い声が響く。
そこには袋一杯の金貨を数える男と不安そうにそれを眺めている男がいた。
「ハッハッハ!にしても、いい金儲けを見つけたな」
「なあ、カーネス。このまま狩りを続けて大丈夫なのか?そのうちバレるんじゃ…」
「この辺りはほとんど人が来ないんだ。バレる訳ねえだろ。シュタイン、夜になる前にもう一狩り行ってこい。俺はさっき撃ち落としたハシュビーの子どもを探してくる」
「…ああ」
「今度はちゃんと頭を仕留めろ。羽根に傷をつけるな。お前なら簡単だろ」
「ああ…分かったよ」
こんなことをいつまでも続けていいのだろうか。
いや、ここまでしたんだ。もう後には退けない。
やるしかないんだ。
シュタインは手に持つ弓に力が入る。
◆
「確か、この辺に落ちてったはず…」
茂みを掻き分け進んでいると、人影がいくつもあることに気づく。
なんで、こんな所に人が!?それにあれはレイム・ロムレスだ!
ちっ、ハシュビー狩りがバレたか。
まだ俺達の存在は知られてないはずだが、このままシュタインに狩りをさせては居場所が突き止められる。早く止めさせないと…。
「誰かいるニャ!」
何!なんでバレたんだ!?まだ距離があるはずなのに!
カーネスは慌てて逃げるが、当然向こうも追いかけてくる。
だが、幸い今は夜だ。
上手く行けば、このまま逃げ切れるかもしれねえ。
その瞬間、背後から肩や足を何かに噛まれる。
痛っ!何だ!?
よく見ると水で作られた犬だった。
何かのスキルか!?
犬は振り払おうとしても離れない。
拳でどうにか叩き潰したときには、レイムを中心に取り囲まれていた。
「観念しろ!お前がハシュビーを襲っている者だな?」
「…何の話か分からねえな」
「いやいや、逃げ出してる時点でバレてるから」
「仲間は何人いる?」
「知らねえよ」
簡単に口を割る気はなさそうだ。
それなら別の方法を試すか。




