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ゼインは調合したい  作者: トウカ


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第5話 復讐

「早く…しろ!」


瀕死状態のミナリを見下ろすように立つゼイン。

その瞳は赤黒く光って見えた。


()()このときを待っていた」

「何の、つもりだ…てめえ」


ゼインはポーチから小瓶を二つ取り出す。


「この薬はそれぞれ使っても人体に害はない」


青い液体を赤い小瓶に注ぐ。


「でも、スライムとワームの成分は相性が悪い。合わせると反作用が働く。その意味が分かるか?」


液体の色が濃い紫色へと変化する。


「毒だよ」


歪んだ笑みを浮かべるゼインは、さっきまでの怯えた少年とは思えない雰囲気だった。

優位に立ったと思って、気持ちが高揚しているのだろう。

これを好機だと思っているのか。思い上がりにもほどがある。

ミナリはよろきながらも立ち上がる。

手で押さえた脇腹から血が流れ出ていた。

驚いた。

これだけダメージを受けても、まだ立てるのか。

コブは気を失っているのか、倒れたまま動かなかった。

二人を相手にするとなると厳しいが、瀕死のミナリだけなら、まだどうにかできる。


「言ったろ。お前の首なんか二秒で飛ばせるって」


ゼインは落ちている雷魔剣を拾う。


「それは昨日までの話だ」

「てめえじゃ…そいつは扱い切れねえよ…」


ゼインは力強く剣を握ると、刃に電光を這わせる。

ミナリは目を丸くする。

スキルは一人に一つしか発現しないはずだ。

こいつの能力は薬を作ることじゃないのか。


「なんで、てめえが…」

「俺のスキルは『調合』。物質を結合したり、分離させることができる能力だ。空気中の物質を動かし、摩擦を生めば、こうして雷だって作れる。調合を繰り返してきた俺にとって、これくらい簡単だ。昨日の夜、ちょっと練習すればできたくらいにな」


昨日の夜、部屋を抜け出したのはこのためか。

だが、まだその光は不安定だ。

こいつは田舎暮らしのガキで、戦闘経験はないはずだ。

さっさとこいつを殺して身体を休ませねえと。

ミナリは稲妻で全身を覆う。


「だからなんだ。剣を振ってきたこともないお前に俺は殺せない」


ゼインに向かって、手刀を突く。


「速い…!」


ゼインは剣でどうにか防ぐが、その力強さに思わず()()る。

素早い攻撃の連続に反撃するタイミングがない。

避けたはずが、頬と腕が切られる。手に纏わせてる稲妻のせいか。

まだこんな力が残っていたのか。想定外だ。

この距離はまずい。

しかし、距離を取ろうとしてもミナリが距離を詰めてくる。

どうにか受け流すが、手数の多さに捌ききれなくなる。

ミナリの手刀が太ももに刺さる。


「ぐっ…」


瞬時に背後へと飛び退いたので傷は浅い。

ミナリの傷口から血がさらに流れる。息も大きくなっている。

このまま闘いが続けば不利だが、今は耐えきればいい。

奴はそろそろ限界のはずだ。

双方動きを止め、出方を窺う。

ミナリの血が地面に零れ落ちたとき、同時に動き出す。

お互いが大声をあげながら、走り出す。

ゼインの刃とミナリの手刀が交差する。

ゼインは脇腹を斬られ、膝から崩れ落ちる。

次の瞬間、ミナリは血を噴きながら倒れ込む。


「く…そが…」


ゼインは脇腹を押さえながら、ミナリの傍に歩み寄る。


「せっかくだ。特製の毒を味わえ」


毒の液体をミナリの口に流し込む。

ミナリは体内に入ったと同時に、瞳孔が開き、首を両手で掻きむしる。

身体をよじりながら、苦しみ足掻いていた。

抵抗する力が次第になくなると、ピタリと動かなくなった。

こと切れたミナリを見届けると、コブへと視線を移す。


「次はお前の番だ」


ゼインの呼び掛けにもコブは動かない。

身体の下は血溜まりになっていた。

足を使って、コブの身体を仰向けにする。


「なんだよ…もう死んでるのかよ」


シュナイダーの言葉を思い返す。

あの男、トドメは刺さないとか言っていたのに。

お前は俺の手で殺したかった。

ゼインは死んだコブの口元に毒を注いだ。

だが、当然何の反応もない。


「くそっ!」


コブの身体を力いっぱい蹴り飛ばした。

ゼインは月が輝く夜空を見上げる。

セイラ、皆、見てるか?(かたき)はとったよ。


ゼインはミナリとコブの持ち物から使えそうな物を取り上げると、森の奥深くへと消えていった。



タオウ国。

水に囲まれた国で、街の至る所に水路が通る。透き通った水が絶え間なく流れ続けていた。

都市の中央部にある国のシンボル、大噴水。

その噴水前に佇む騎士のもとに兵士が一人やってくる。


「オズモ殿!」

「どうした?」

「団長がお呼びです!」


オズモは騎士団支部に向かうと団長室を訪れる。


「君に魔物の討伐を頼みたい」


団長のフルータルは単刀直入に言った。


「討伐?そんな雑務、この私が出向く必要がないのでは?」

「いや、もう既に二度小隊を向かわせたが、誰一人帰ってこないんだ」

「なんですって?」

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