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ゼインは調合したい  作者: トウカ


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第44話 守るための戦い (1)

ルートが教えてくれた方向から戦闘音が聞こえてきた。その後、悲鳴にも似た声が耳に届く。

嫌な予感がする。

さらに速度を上げて王都の門をくぐると、ボロボロになって倒れているホムラが視界に入ってくる。そのうえ少年がホムラに襲い掛かろうとしていた。


「ホムラ!」

「ホムラ様!」


夢中で走っていたから、チェイズが近くにいたことも気が付かなかった。

チェイズはスキルを発動し、少年の剣からホムラを守る。


「ゼイン様!チェイズ!来てくれたの…ね…」


そう言ってホムラは意識を失う。まさかと焦ったが、まだ息はあるようだ。ホッと胸を撫で下ろす。

だが、左足が切断されて出血量が多い。

このままだとまずい。


「チェイズさん、二十秒あいつらを抑えられますか」

「分かりました。守護結界しゅごけっかい!」


チェイズは敵二人を包むように半円型の結界を展開する。


「なんだこれ!?」


身動きが取れなくなったルルフとミルルは、結界を壊そうとスキルをぶつける。

二人ともスキル保持者なのかと驚くチェイズ。

横目でホムラを見る。

よくお一人で持ちこたえましたね。

ゼインはホムラに向き合うと、すぐさまポーチから小瓶を取り出す。

切断された左足と切断面を近づけ、瓶に入っている液体をかける。

すると、みるみるうちに皮膚が繋がっていき、何事もなかったかのように足が治った。

奇跡のような出来事にチェイズは目を見張る。


「ゼイン様、それは一体…」

「前に倒した魔物に再生する能力がいて、そいつの成分を分析して作ったんです」


ルルフ達の次々と繰り出される攻撃に、結界に亀裂が入る。

ホムラの呼吸が安定してきた。足を繋げたことで身体への負担も大きい。

暫くは目を覚さないだろうが、このまま安静にしていれば大丈夫だろう。

ゼインは立ち上がると、チェイズの隣に並び立つ。


「チェイズさん、ここは俺がやります。ホムラを連れて逃げてください」

「しかし、彼らはスキル持ちです。一人で戦うのは危険です」

「奴らの目的はホムラをさらうことです。それだけは阻止したい。ホムラを守るためにお願いします。あいつらはチェイズさんの分まで俺がぶっ倒します」

「…分かりました。ホムラ様を安全な所に連れて行ったら戻ってきます」

「それまでには終わらせてみせますよ」


そのとき結界が粉々に砕かれる。

チェイズはホムラを抱えると、王都への道を走り始める。

ゼインはさやから剣を抜く。


「ミルル、あの女を…」


ミルルはスキルを使用し、身体を浮かせる。


「ルルフに言われなくても分かってるよ。でも私のスキルだと、あの結界を壊すのに時間かかる。早く終わらしてよ」

「こんな奴に時間が掛かるわけないだろ」


ミルルは空中を素早く移動し、射程圏内に入ったチェイズに風の刃を放つ。


「チェイズさん!」


ゼインの呼び掛けにチェイズは後ろを振り向く。どうにか当たる寸前で避けると、急いで自らの周囲に結界を張る。

くっ…結界を張ったら、その場から動くことはできない。

このままではホムラ様を安全な場所にお連れできない。

ちっと舌打ちをするゼイン。

そう簡単にホムラを諦めるつもりはないか。

でも、チェイズさんのスキルなら暫くはしのげるはずだ。

それまでに俺がこいつを倒す。

ゼインは怒りを剥き出した眼で睨む。


「ディシー。お前こんなところで何やってんだよ」

「ハッ。ディシーは城に潜り込むための仮の名だ。俺は一年も前から潜入して計画を遂行してたんだよ」


オドールを影から操っていたのはこいつだったのか。

ホムラを狙うためだけに一年も前から潜入していたのか?


「お前は一体何者なんだよ」

「俺はハクエイの第十の使者ルルフだ。組織との掛け持ちは大変だったぜ。その間も別任務は振られるし。部下にやらせてたが、その部下も使えなくてよぉ」


ルルフ?

どこかで聞いたことがある名前だ。

そうだ。ミナリと連絡を取り合っていた奴の名前だ。

いや、今はそんなことはいい。

こいつを倒す。それだけだ。

ゼインは剣に稲妻を纏わせる。


「お前、その剣はミナリのじゃないか?」


俺がミナリと行動を共にしていたと知られるのは都合が悪いかもしれない。


「ミナリ?誰だそれ」

「俺の部下が持ってた剣にそっくりな…」


ゼインはルルフの言葉を遮るように斬り込む。


「お喋りに付き合ってる暇はない」

「俺も次から次に邪魔されていらついてんだよ」


ルルフも氷の剣を作り出し、応戦する。

ゼインと刀を交えると、氷の剣を通して稲妻が手に走る。

しまった、氷は雷が流れやすいのか。

ルルフは咄嗟に氷の剣から手を離す。

その隙にゼインは斬りかかるが、ルルフは難なく避ける。

奴のスキルは氷。氷は電気が流れやすいから、俺にとっては相性が良い。

これならいける。

ゼインはルルフにさらに接近した、そのとき、


凍絶氷槍とうぜつひょうそう!」


ルルフは地面から氷の棘を広範囲に繰り出す。

うお、危ねえ!

もう少し反応が遅かったら、串刺しになるところだった。


「俺に勝てると思ったか?あめえんだよ」


有利だと思っていたのに、そんなにうまくいかないか。

氷に通電すると言っても至近距離からじゃないと効果がない。

でも、あの遠距離攻撃がある限りルルフに近づくことができない。

どうする…。



茂みから戦況を見守るログとシリル。

シリルの鼻を頼りに、ゼインの匂いを辿って来たはいいけど、僕達の出る幕はなさそうだ。


「僕達、忘れられてないかな」

「暫く出番がなかったから忘れられてると思うニャ」

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