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ゼインは調合したい  作者: トウカ


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第43話 死角

銀髪の男がゆっくりとレイムに近寄ってくる。

この雰囲気、新手あらてか。


「お前が第一王子のレイムか?」

「誰だと聞いている」

「そんなピリピリすんなよ。俺ぁハクエイの第五の使者ラッシュだ」

「ハクエイだと?ハクエイが何でここに…まさかタオウと組んだのか?」

「ハッハ!頭の回転がはええな。正解だ」


倒れたメイランとリューズに目を向ける。

タオウほどの大国が裏組織と手を組むとは。それだけこの戦争に賭けていたということか。


「タオウのお姫様にはもう少し期待してたけどなぁ。王子様はほぼ無傷じゃねぇか。弱えなぁ」

「彼らのことを悪く言うのはやめてもらおう」

「おいおい、コイツらはてめえの敵だろ?敵を庇うってのか?」

「メイラン殿ともリューズ殿とも話したことはある。彼らは無闇に争いを起こす者ではない。この争いの火種は誤解から生まれている。本来、争う必要がなかったんだ」

「ハッハ。誤解ねぇ。ロムレスの王子様はお人好しだなぁ。いつか痛い目見るぜ」

「痛い目を見るのはお前だ」


レイムは拳に炎を宿し、ラッシュを見据える。

第五の使者というこは、ハクエイの中でもトップクラスの実力者だ。

どんなスキルかは分からないが、最初から全力でいかせてもらう。


「へぇ、カッコいいなぁ、おい。じゃあ俺も最初から本気でいかせてもらうぜ」


ラッシュは短い棍棒こんぼうの柄の先端に鎖付きの鉄球が付いている武器を取り出す。

あれが奴の武器か。初めて見る武器だな。 鉄球には鋭いとげもある。殺傷能力は高そうだ。

ということは遠距離タイプか?

それなら距離を詰めて、一気に叩く。先手必勝だ。

レイムはラッシュに向かって走り出す。

瞬間、死角から硝子がらすの破片が飛んでくる。咄嗟に右手から炎球を放ち、跡形もなく溶かす。

まだどこかに仲間がいるのか?

しかし、周囲を見渡しても人影は見えなかった。


「ハッハ。他には誰もいねえよ」


奴のスキルか?

だが、スキルを使った気配はなかった。

どういうことだ?


「不思議そうな顔してんなぁ。お前はもう俺の領域に入ってんだよ!」


ラッシュは鉄球を床に投げつける。

すると、砕かれた破片が宙を舞う。


「俺のスキルは『絶対領域』。俺を中心に半径十メートル以内の物体を操ることができるんだよ!」


そうか。使える物を増やすために、あの武器を使ってるのか。

この場所は奴に有利すぎる。

早く奴の範囲から出なければ。

レイムは領域外に出るために距離を取る。


「させねえよ」


しかし、レイムの狙いに気づいたラッシュが距離を詰めてくる。

ちっ、そう簡単には逃がしてくれないか。


「言ったよなぁ?俺は物体を操るって」


ラッシュは歪んだ笑みを浮かべる。

そのときラッシュが持っていた鉄球がなくなっていることに気づく。

しまった!

上を見上げると、鉄球が空中に浮いていた。

そして、避ける間もなくレイムに向かって勢いよく落下した。


「ぐあっ…!」


ラッシュの手に武器が戻っていく。

くっ…このままでは一方的にやられるだけだ。

その前にケリをつける!

レイムは飛んでくる瓦礫を対処しながら、ラッシュに迫る。


烈火乱撃れっからんげき!」


絶え間なく炎拳を撃ち放つ。

しかし、ラッシュを守るように瓦礫が壁となる。

瓦礫を粉々にした先にラッシュがまた愉しそうに笑っていた。

レイムは再び鉄球が放り投げられていることを察知する。

二度も同じ手を食らうわけにはいかない。

レイムが距離をとると、その間に鉄球で壁や床を壊すラッシュ。

これでまた奴が使える武器が増えてしまった。キリがない。


「…って」


天井から落ちてきた砕片がラッシュの腕に当たる。

当たった?

もしかすると奴はあくまで目で見えた物に対応しているだけで、死角からの攻撃には反応できないのか。

もしそうならまだ勝機はある。

レイムは床に手を置く。


熱波煌煌ねっぱこうこう!」


レイムは天井に吊るされたシャンデリアを全て壊し、大広間を暗転させる。

さらに続けて技を放つ。


紅蓮撃ぐれんげき!」

「ハッハ。暗闇にしようが、てめえの技は炎だ!どこからの攻撃だろうと防げるんだよ!」


再び瓦礫の壁を作り出して攻撃を防ぐと、すぐさま破片の数々を反撃にまわす。


「残念だな。俺はここにいる」


レイムの声が真横から聞こえてきた。

いつの間に。

まさかさっきの技は俺の正面にいると誤認させるためか。

俺が瓦礫で防いでから反撃することも見越して、その隙に俺のすぐ傍まで来やがった。

レイムはラッシュと視線が交わる前に鞘から剣を引き抜き、ラッシュの腹から胸にかけて斬り上げる。


「ハッハ!やるなあ」


傷は浅いか。鉄球はまだ奴の手にある。

反撃に出られる前に、このまま押し切る!

レイムが強く踏み込んだ瞬間、ラッシュはたかぶる感情を抑えきれない様子だった。


「でも、残念」


右足に強烈な痛みが走る。


「ぐっ!」


奴の鉄球は手元にある。何故…。

足元を見ると、レイムの足にリューズの槍が突き刺さっていた。


「死角からの攻撃は俺の専売特許なんでなぁ」

「くっ、ま、まだだ…」


こいつを野放しにするのは危険すぎる。

ここで必ず食い止めねば。


「しつけえな。まだやること残ってるし、そろそろ終わらせるかぁ」


ラッシュは瓦礫を集めるとレイムに勢いよく射出する。


天墜衝破てんついしょうは!」

「ガハッ…」


腹部から大量の血が流れ、そのまま倒れる。

ラッシュはゆっくりとレイムに歩み寄ると、足でその身体を仰向けにする。


「さあてと…」



ハクトが暗がりの大広間に戻ると、激しい戦闘が繰り広げられた後だった。

立っている人間は誰もいない。

部屋の中央にはレイムが血を流し、横たわっていた。


「兄さん!」


駆け寄ると、僅かだがまだ息はある。

ハクトは持っていた布をレイムの腹に巻き付けると、大広間から急いで駆け出す。

早く医療部隊を探さないと。


「誰か!誰かいないか!」

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