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ゼインは調合したい  作者: トウカ


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第35話 探る (4)

城の廊下を歩いていると、シリルが心配そうにログに声を掛ける。


「ログ、なんか元気ないニャ」

「うん、ちょっとね…」

「シリルみたいに腹減ったとか言うなよ?」

「ねえ、ゼイン。明日チェイズさんのことをレイムさんに聞いてみない?」


チェイズさんが無実だと信じたい。

でも、もしチェイズさんが今回の件に関わっていたとするなら、早急に手を打たないといけない。

彼女はホムラに近すぎる場所にいる。


「チェイズさん?なんで?」

「チェイズさん、さっきホムラのことを凄い顔で睨んでたんだ。それが気になって…」

「チェイズさんはホムラの側近なんだ。もし、チェイズさんが襲撃に関わってるなら、いつでもホムラを連れ去れたはずだ。それに探してるのはフードの男だろ?チェイズさんは女だし」


確かにその通りだ。

でも、ゼインの言葉を聞いても、まだチェイズの表情が脳裏から離れなかった。

浮かない顔をするログを見て、ゼインはふーっと息を吐く。


「まあ、人を使えばチェイズさんにもできるか。明日どうせ今日の調査結果話さなきゃいけないし、ついでに聞いてみるか」



翌日、揃ってレイムのもとを訪れた。

報告しあった結果、お互い大した収穫がないことが分かった。

疑いのある三人の監視は、キーソンの部下が受け持ち、何か動きがあれば知らせが入る手筈(てはず)になった。


「あの、レイムさん、チェイズさんはなんでホムラの警護をしてるんですか?」


ゼインがレイムに話を切り出してくれた。


「うん?チェイズは元々うちの隠密部隊に所属していた。女性であるし、上長からの推薦もあったのでホムラの側近として任命した」

「その前は?」

「その前?どうした、急に。チェイズがどうしたんだ?」

「いや、ログが…」


ゼインがログをチラッと横目で見る。


「昨日、チェイズさんがホムラを凄く睨んでるように見えたんです。それがどうしても気になって…」

「チェイズに限って、そんなことはないと思うが…。いや、フードの男と関係がないとは言い切れないか。キーソン。チェイズが隠密部隊に入る前に何をしていたか分かるか?」


キーソンは手早く本棚からファイルを一つ抜き出すと、パラパラとページを(めく)った。


「西地区の生まれで、十二歳の頃には隠密部隊に入っています。身内はもういないようですが、特にこれといって怪しい遍歴はありません」


ホムラに恨みを持つようなことがあったかは分からないか。

いや、そもそも書類に書いてあることだって、どこまで本当か分からない。


「疑いたくない気持ちは分かるけど、注意するに越したことはないんじゃないの」

「…それはそうだな」


話し合った末、ホムラとチェイズを二人だけにしないようにするため、ログはホムラの部屋に泊まるよう手配してもらうことになった。

ホムラが夜一人で不安にならないように、という理由であれば怪しまれることはないだろう。

敵に遭遇することに備え、引き続き稽古に励むようにレイムがゼインに念押ししていた。

嫌そうな顔をしていたゼインだが、最後には仕方がないと頷いた。


一度部屋に戻るため廊下を歩いていると、廊下の先にチェイズの後ろ姿が目に入った。

ゼインとログは顔を合わせると、チェイズの後を追いかける。

しかし、途中で見失ってしまった。


「どっち行った?」

「こっちニャ」


シリルについてそのまま進むと、チェイズの話し声が聞こえてきた。

柱の陰から曲がり廊下の先を覗く。

黒い服を着た男と何やら話し込んでいるようだ。男は後ろ姿なので、顔が見えなかった。


「ええ、予定通りお願い」

「しかし…」

「あなたが気にすることじゃない」

「失礼しました」


何の話だ?

あの男はフードを被ってはいないが怪しすぎる。

まさか本当に彼女がフードの男と何か関わりがあるのか?

話が終わったのか黒服の男は立ち去っていく。

チェイズがこちらに戻って来た。ゼイン達は慌てて廊下を戻ると、その先にある柱の裏に隠れ、息を潜めた。

足音が過ぎ去っていくと、柱から顔を出して首を振る。誰もいなかったので、ようやくひと息ついた。


「危なかったな…」

「でも、さっきのって…」

「怪しかったニャ」


すると、背後から聞き慣れた声がした。


「皆さん、どうしました?こんな所で」


思わずヒッと声が出た。

そこにはチェイズが立っていたからだ。

なんでここに。通り過ぎたんじゃなかったのか。

まさか盗み聞きしていたのがバレていたのか。


「いや、迷子になっちゃって…」

「そうでしたか。どちらに行きたいのですか?」


苦し紛れの言い訳だったが、チェイズはすんなりと受け入れる。

どうにか誤魔化せるかもしれない。


「あ、えーっと、書庫に行きたいんですけど」

「書庫はこの廊下を真っ直ぐ進んだ先にある階段を下りて、右に進むとあります」

「ありがとうございます」

「…好奇心はほどほどにしてください。では」


釘を差された。

やはり俺達の存在に気づいていたのか。

さすが元隠密部隊。チェイズを尾行するのはかなり難しそうだ。

だが、彼女の疑惑はさらに濃くなった。

男と話していたときのチェイズは明らかに普段とは違う厳しい表情をしていた。

何か普段の彼女とは違う一面があるに違いない。


それからゼインとログはチェイズに対する警戒度を上げたが、特に動きはなかった。

それはチェイズだけでなく、マイロ伯爵らも同様だった。

結局、フードの男の正体は掴めないまま建国祭を迎えることになった。

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