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ゼインは調合したい  作者: トウカ


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第19話 盗賊 (2)

「ボウズ、良い観察力だな。だが、それが命取りになるってことを教えてやるよ」


カシラが剣を抜くと同時に取り巻きも刀を取り出した。

ゼインも雷魔剣に電気を纏わせる。


「ほう、スキル持ちか」


カシラの目つきが変わる。

ゼインがただの子どもではないと察したのだろう。


「ログは下がってろ」

「ゼイン、気をつけて」

「ああ」


ログはゼイン達と距離を取り、木陰に身を隠す。

戦闘は予想していたが、相手は四人か。

構えを見る限り、カシラが一番隙がない。

こいつは後回しだな。

ゼインはすぐさま動き出す。

カシラからの攻撃を躱すと、奥にいた男の脇腹を斬る。

まず一人。

さらに、取り巻きが二人同時に襲いかかってくくる。

これは受けきれない。

横に飛び退き、避ける。

それを見越していたのか、カシラが剣を振り下ろす。

それも避ける。

そのまま取り巻き二人に向かって走ると、右にいる男の太ももを斬る。

膝をついた男の首を持ち、一気に電気を流し込む。

ゼインの動きに怖気づいたのか、取り巻きの男は腰が引けていた。隙だらけだ。

容赦なく男の腹部を斬った。


「残りはあんただけだな」

「見くびっていたよ、ボウズ、お前相当強いな」

「そりゃどうも」


瞬間、カシラが一気に距離を詰める。

ゼインは剣でその振りを受ける。

だが、雷魔剣をもってしても、パワーで押し負けそうになる。


「お前の強さはそのスピードにある。それを殺しちまえば、お前はまだ弱い」

「くっ!」


このままではまずい。

受けきれない。


ボンッ!


爆発音と共にカシラの顔が歪み、ゼインに向かって倒れかかってきた。

その身体の重さに耐えきれず、気絶したカシラに押し潰されるようにゼインは倒れる。


「少年!大丈夫か?」


男の声がしたかと思うと、カシラの身体がどけられた。

そこには羽織っている白いマントを燃やしそうなくらいの真っ赤な髪を持つ男が立っていた。

カシラを見ると、丸く切り取られたように服が燃えてなくなっていた。

さらに剥き出しになっている背中は軽く火傷していた。

スキルの力によるものだと瞬時に分かった。

どうやらこの男はスキル持ちのようだ。


「た、助かったよ、ありがとう」

「君が無事で良かったよ」

「レイム様!」


レイムと呼ばれた男の背後から続々と男達が現れる。全員レイムと同じ白いマントを羽織っていた。

何の集団なのか。

カシラを倒しているところをみると、盗賊達の味方ではなさそうだ。


「いきなり飛び出して何だというのですか!」

「少年が襲われているのが見えたからな。キーソン、許してくれ」


キーソンは深い溜め息をつく。

レイムは倒れた盗賊達に目を移す。


「で、彼らは何者なんだい?」


まさか盗賊だと知らないで攻撃したのか。

随分と喧嘩っ早い。


「こいつらは盗賊だよ」

「やはりそうか!俺の見立てどうりだ!」


…知らなかったくせに。

このテキトーな返しを聞くとオズモを思い出す。


「あ、そうだ」


ゼインは荷台に近づくと、底板の木板をガコッと外す。

すると、そこには数々の盗品があった。この数はじいさん達以外から盗んだ物もありそうだ。

その中に眠りこけているモップ姿の魔物もいた。

檻に閉じ込められているところをみると、盗賊達は売り飛ばす予定だったのかもしれない。

檻の扉を開け、魔物の体を揺り動かす。


「おい!お前!起きろ!」

「むニャ…」


モップ型の魔物が目を開ける。まだ寝足りないのか、起きて早々大きな欠伸(あくび)をする。


「あれ、ここどこニャ」


人の言葉?

まさかベオロクと同じく言葉を話す魔物なのか?


「…お前、喋れるのか?」

「お前じゃないニャ、僕はシリルって立派な名前があるニャ。あれ、僕の言葉が分かるニャ?」

「今までは話せなかったのか?」

「僕の言葉分かる人間なんていなかったニャ」


まさかあの試作品を食べたことで言葉が話せるようになったのか?

いや、一度スライムで試したときには言葉を話せはしなかった。

この魔物にだけ作用したのか?それともこの種類の魔物には効くのか?

これは仮説を立てて調べてみるしかない。

…面白そうだ。必ず原因を特定してやる。

ゼインは思わず顔がにやける。


「ますますお前を手放すわけにはいかなくなった!絶対喋れる原因を突き止めてやる!」

「いやニャ。僕は自由に生きたいニャ」

「ついてくれば、これを毎日お前に食べさせてやる」


ゼインは僅かに残っていたドライフードを見せる。


「ニャにー!」


シリルが食べようとした寸前で手をさっと避ける。


「ついてくるか?」

「…しょうがないニャ。ついていってやってもいいニャ」


意外とチョロいな。

なにわともあれ研究対象が手に入ったのだ。早く戻って研究をしたい。

すると、レイムがシリルを見ながら言った。


「おや、それはキャトリアじゃないか?」

「キャトリア?」

「個体があまり少なく、魔物には珍しく雑食で人間を食べようとしないから、貴族の間でペットとして飼われていたりする。うちにも一匹いるぞ」

「てことは、あんたも貴族なのか?」

「おい!お前、失礼だぞ!」


キーソンが怒気を含んだ声で言った。


「いや、大丈夫だ」


レイムがキーソンを(なだ)めると、姿勢を正してゼイン達に向き直る。


「名乗るのが遅くなった。俺はレイム・ロムレスだ。君は?」

「俺はゼインだ」

「ゼインか。よろしくな」


ゼインはレイムが差し出してきた手を握り返す。


「ロ、ロムレスって…。まさか王子様!?」

「まあ一応そうなるな」

「なんだ、あんた凄いのか?」


ログが慌ててゼインの手を引っ張る。


「言葉遣いは気をつけてください!王子様に無礼を働けば、牢獄行きだってありえるんですから!」

「俺は堅苦しいのは好きじゃない。普通に接してくれてると助かる」

「だ、そうだ」

「まあ、それなら…」


ここはロムレスとタオウの国境辺りだ。

国の中でも外れにあたる場所に何故王子がいるのだろう。


「でも、ロムレスの王子様がどうしてこんな場所に?」

「それは…」

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