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ゼインは調合したい  作者: トウカ
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第13話 洞窟

慎重に梯子を降りる。

いつからこの梯子が設置されたか分からないが、しっかりした縄で作られているようだ。

地下は冷気が漂っている。半袖のままだとやや寒いくらいだ。

周りには明かりが全くなかった。

光を放つような素材は持っていないので、夜目が効くまで待つしかない。

すると、暗がりの中に一本道が浮かび上がってくるように見えてきた。

ログは怖いのかはゼインの服の(すそ)を掴む。

暫く進むと、洞窟を照らす光がいくつも現れる。


「わぁ、綺麗…」


感嘆の声が漏れるログ。

ライトバグが道を照らすように至る所に生息しているようだ。

本物は初めて見るが、図鑑で見たことがある。

全身が点滅するように白く光る虫だ。

こいつらは基本的に人間に襲ってくることはない。

捕らえて分析したいところだが、ライトバグは群れで活動する虫で、さらに縄張り意識が強い。

群れに対して害がある存在だと分かれば襲いかかってくることもある。

これだけの数が一気に攻撃してくれば、身体中を噛まれて致命傷を負うことになる。

ゼインは研究欲を抑えながら進むと、行く手が二つに分かれていた。

両方とも入口の見た目はほとんど同じだ。

どちらに進むべきか。

判断材料がないなら、自分の直感を信じるしかない。

ゼインは右の道を選ぶことにした。

道なりに進んでいくと、また分かれ道。

次も右へ進む。

ずっと洞窟がひたすら続いていた。

だが、ここにはライトバグ以外に魔物の類はいないようで安心した。

凶暴な魔物に出くわせば、この無防備状態では太刀打ちできない。


「あれ?」


ログが不思議そうに声をあげる。


「この場所、さっきも来ました」

「え?」


確かに、さっき来た分かれ道の場所によく似ている。

正解の道ではなかったのか?


「今度は最初の分かれ道を左に行ってみよう」


ログはこくりと頷く。

だが、どの道を選んでも結果は同じだった。

かなり歩いたので、足が痛くなってきた。

そろそろ昼ご飯の時間だろう。

奴らに部屋にいないことがバレる前に戻らないといけない。

梯子を登って部屋に戻ると、ちょうど昼食が運ばれてきた。

ログはトレーに乗ったシチューを眺める。


「これ、ママが作ったシチューだ…」


スプーンで口に運ぶと涙ぐみ始める。

母のことを思い出しているのだろう。

十二歳の子どもが親から離れて過ごしているのだ。

親が恋しくなっても無理はない。

ゼインには分からない感情だが、理解はできた。


「ママ…パパ…。早く会いたいよ…」

「ここを出れば会えるだろ」


親とは子にとって唯一無二の存在らしい。

本で読んだことがある。

ゼインは実際の親がどういうものなのか気になった。


「ログの親はどんな親だったんだ?」

「パパとママはすごく優しいんだ。ここに来るときも、試練なんか受からなくていいから、また三人で暮らしたいねって優しく抱きしめてくれたんだ」


笑顔で話すログ。

その様子から彼が両親からの愛情を一身に受けて育ったのだと伝わってくる。


「だから、僕はここから出てパパとママとまた暮らすんだ」

「そうか。また会えるといいな」

「うん!」


昼食を食べ終えると、ゼインは洞窟の形を地図を描いていた。

洞窟内は梯子を降りた道を進んだ後は、どの道を進んでも最初の分かれ道に戻ってくる構造だ。

昔試練を受けた人達が、ここを抜け出したのであれば、どこかに仕掛けがあって、それを解かないと出口が現れないようになっているのかもしれない。

それから食事の時間以外は洞窟内の探索をした。

しかし、抜け道のような場所も仕掛けも全く分からなかった。

布団を被りながら、ゼインは深い溜め息をつく。

ずっと歩き回っていたので、身体はクタクタだった。

これだけ探しても見当たらないとなると、この洞窟はフェイクで本当の出口がどこかに隠されているのではという気さえしてくる。

残りはあと三日か。

時間も残り少ない。明日こそ仕掛けを見つけなければ。


夜空に浮かぶ月が地上に淡い光を降り注ぐ。

ブレイジスが試練を行っている小屋の見張り番に近づく。


「そろそろ交代だ」

「ああ、ブレイジスか。助かる」

「候補者の様子はどうだ?」

「順調だよ。あのガキを入れたのは正解だったな。ログだけだったら、こんなに上手くいかなかったよ」

「そろそろ頃合いか?」

「ああ、そうだな」


ブレイジス達は共に笑みを浮かべた。



翌日。

ゼイン達は洞窟に再び訪れると、引き続き仕掛けを探すために目を凝らしていた。

洞窟の最奥にあたる場所に大きい石が転がっていることに気がつく。


「こんな石あったか?」

「ううん、こんな石なかったと思うけど…」


暗がりだったから気がつかなかったのだろうか。

ゼインは石を持ち上げたと同時に、目の前の壁が動き出し、新たに道が現れた。

通路の壁は人工的に整えられていた。松明(たいまつ)も置かれ、洞窟よりかなり明るく感じる。

そのまま進むと、出口が見えてきた。

これでようやくこの生活ともおさらばだ。

意気揚々と飛び出た先には巨大な地底湖があった。

水は青白く光り、周囲を照らしていた。

すると、地面が揺れるように動き始める。

地底湖から巨大なクラーケンが姿を現した。


「何だ…こいつは…」

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