I wish
あー、今日も死ねなかった・・・
周りには仲間と化物の血と死体。生きてたら腹も減る。しょうがないから砦に帰る。そして金を手に入れる。戻ってきたのは出撃したうちの三分の一程度。だるい。寝て起きたらまた明日が来る。
この砦に来てから一年。周りの連中はほとんど一日二日で死んでいく・・・俺は・・・。
俺はジョシュ。死にたくてここに来た。ここに居るのは、ほとんどが金目当ての傭兵か流刑になった犯罪者達。指揮官は左遷されてきた騎士様。血と泥と骸の混じった大地。大概の人間はこんな所には来たがらない。
酒を持ってガロンが寄って来る。こいつは俺と違って本物の強者。戦バカ。俺より長くここにいる。そしていつも通り、楽しそうに今日の戦の話を始める。
「よー、相変わらずしけた顔してるな。まー飲め。そして喜べ!今日の俺の戦果は上々だ!」
うるせーよ、バカ・・・
「あら、また生き残ったの。」
今度はエルフのガリエフ様だ。エルフ達は特別。人間の兵千人より価値がある。王が多大な見返りを差し出し、エルフの国がやっと派遣してくれた天使様。そして俺達傭兵は使い捨て。俺たち人間の傭兵はエルフ様達を守る盾。なんてったって、魔法を使えるのは魔族とエルフ様だけだ。こいつらが死んじまったら、この砦はおしまい。
「死にたい者が生き残って死にたくない者が死んでいく。皮肉ね。でもあなたエルフじゃなくてよかったわね。あはは。」
こいつ殺したいわ・・・。
数日後・・・今日も戦が始まる。化物を殺しまくって死んでやる!
弓やら魔法なんか飛んでくるが構わず目の前の化け者を殺して突き進む。俺を止めたきゃ殺せ!つーか殺して・・・。さっきまで後ろにいた友軍はもう見えない。いつも通り突出して突撃。いつ弓や魔法が当たっても、目の前の化け物どもに殺されてもおかしくないのに、なぜか死なない。何かに憑りつかれてるのか俺は・・・。
お、目の前に大物。強そうな魔族。ぱっと見メデューサ。突進!殺してくれハニー!目見て石にされちゃ、死ねるか分からない。とりあえず目は見ない。雑魚ども切り倒して突進。そしてそいつに切りかかる。手ごたえは・・・。無傷・・・。もちろん俺のほう・・・。相手の頭の蛇が何本か落ちてる。彼女はお怒りのようだ。さー殺しあおう!
ん・・・?やつが別方向を向いた・・・。かまわねー。殺してくれないなら死ね!
ドゴン!突然前方に吹き飛ばされた。どっから・・・?方角は砦上層、おー、ありゃエルフのガリエフ様だ。見事に俺に命中。腕、脚・・・ねーな。こりゃ死んだ・・・。やっと死ねる・・・。
ぐ・・・。目の前に見覚えのあるメデューサがいる。地獄に落ちたか・・・。そんなもん信じちゃなかったのに。クソッ・・・。
「オキロ。ワガケンゾクヨ。」
なんだ?ケンゾク?
「キョウカラワレガキサマノアルジダ。オキヨ。」
あるじ?とりあえず起きる・・・。ん?違和感・・・。爪が長くて尖ってる。鋭い牙。いやそれより、背中!なんかついてる・・・。尻にも・・・。ついでに頭にも・・・。
角、翼、尻尾・・・。こりゃつよそーだ。といかデーモンだなこれは・・・。
くそが!やっと死ねたと思ったに。これじゃ余計死ねねーじゃねーか!こうなりゃ、やることは一つ、とりあえず目の前のこいつを殺す。殺してくれりゃもちろんありがたい。
全力で飛び掛かる。結果・・・はるか彼方の壁に頭をぶつけた・・・。いてー、なんだこりゃ・・・。
「ククク」
おーおー楽しそうだな我が主。もう一度。・・・動かねー。石化?いや違う。主には逆らえないってことか?
「キョウカラキサマノナマエはアゴラダ。ワレニシタガエ。」
えー・・・。従いたくねー・・・。そしてネーミングセンス・・・。
「ユケアゴラ。ニンゲントエルフドモヲミナゴロシニシテコイ。」
いきなりかよ・・・。自分で行けよ。拒否権は?もちろんなさそうだ。体が勝手に動き出す。