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悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第十九章 繋がる物語

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 魔の森の一件で異世界人の能力は鑑定だけでは測れないと魔術師団副団長のクライド・ドゥラクロワが提言したことにより、アミの能力の再審査が行われた。


 クライドはリクとの約束通りアミの付与術が、ぶっ壊れ性能であることについては黙っていたため、おもにドローンを用いた幾つかの応用能力への審査となった。


 審査はクライド立ち会いのもと、魔術師団の練習場で行われた。


 この世界の人間はAIを人工の妖精、ドローンを使い魔だと思っている。


 審査官の魔術師はアミのドローンを紹介されると、微妙な顔をした。『スズメ』と『モンシロチョウ』と『()』という、ジョークのような組み合わせなのだから無理もない。


「君の使い魔は、索敵と結界術以外にできることはあるのか?」

「わ、分かりません……」

《企業秘密です》

「それじゃ審査にならないよ、きみ」

「ふぇぇ……」


 審査官がキレ気味にツッコみ、アミは涙目になる。


 アミのパーソナルAI・イリスはアミに属性付与されると魔法が使えるようになるため、最近少し調子に乗っていた。


 説明を受けるアミの様子を眺めながら、クライドはリクに尋ねた。


「あのどろーんとかいうの、リクちゃんは持っていないのかい?」

「私は持って来なかった」


「そうかい。じゃあ鑑定で測れない能力を発揮できるのは、あの子だけってことでいいのかな」


「ええ」


 リクは実弾入りの銃を持っていたが、クライドを信用していないため話すつもりはなかった。


 銃についてはミラフェイナも知っていたが、リクが黙っていれば漏らすことはないだろう。




 アミの審査が始まったようだ。審査官がアミに魔導具を見せている。


「魔力を発するダミーだ。この練習場にいくつか隠してある。制限時間内に全て見付けてみろ」


 審査官の手の平の上には、指の先ほどの小さな石が乗っていた。


「ええ~。そんなの無理だよぉ」

《マスター。私とドローンたちに、雷属性の付与を。マイクロ波探知を試みます》


 さっそく諦めかけたアミに、個人端末のブレスレットから男性の声が響く。アミのパーソナルAI・イリスだ。


「うそ!? そんなことできるの!?」

《属性付与を頂ければ可能です》

「すごい! イリス、天才!?」

《天才です》


 どう見てもAIイリスは調子に乗っていたが、アミの助けになっているのでリクはクライドと一緒に静観していた。


「『サンダーエンチャント』!」


 アミが付与を行うと『スズメ』のドローンが飛び立ち、練習場を一周して戻って来た。


「ど……どうだった?」

《対象の検知に成功。全部で9箇所です》


 アミのブレスレットからレーダーのようなホログラムが立ち上がり、九つの赤い点が表示された。


「9箇所……? 8箇所のはずだが……」

《もう一つは、そこです》

「うおっ!?」


 パタパタッと羽音がして飛んで来たのは『スズメ』のドローンだ。審査官の首後ろに止まると、背中のフードから嘴でダミー石を挟んで出てきた。


 『スズメ』はアミの元へ飛んで来て石を渡した。


「あっ、これが9個目ってことかな?」

「ぐっ……。正解だ」

「やったぁー!」


 素直に喜んでいるアミだったが、後方で見ていたリクは審査官の態度に物申した。


「あれはわざとじゃないだろうか」

「う、うーん……。後で言っておくよ。そう怖い顔しないでおくれよ」


 冷や汗を掻いたのは、クライドの方だった。




 その次は結界術の審査らしく、練習場をアミのドローンが飛び回ったり審査官の攻撃魔法がアミを追いかけ回したりした。


「『アイススピア』」

「ノォォォー!」


 涙目で逃げ回るアミに、審査官の放った氷の矢が迫る。


《電磁シールドを展開》


 飛んでいるドローンたちが空中で陣形を作り、攻撃を弾いた。魔の森で見せた技と同じだ。


「『フレイムアロー』」

「ひえぇぇぇぇぇ」


 今度は炎の矢がアミの皮膚を掠めた。審査官は苛ついた。


「逃げるな! 結界術の審査にならんだろうが!」

「そ、そんなこと言ったってぇぇぇ」


 しばらく攻防が続いた後、審査官もアミも肩で息をしていた。


「チッ……。まあ、ある程度の攻撃は防げるようだな。もういい。全く……」

「終わったかい?」


 頃合いを見て、クライドが審査官に話しかけた。


「はい、副団長」

「ご苦労さま。君もね」


 クライドはアミと審査官、両方を労った。


「はぁはぁ……。やっと終わった……。つ、疲れたぁ~~」


 アミは息を切らしながら、何とか切り抜けることができて胸を撫で下ろした。




 結果は『索敵Lv.4』、『結界術Lv.2』がアミの能力として認知されることとなった。


「思った通り、索敵のレベルは高いね。レベル4の評価があれば、冒険者ギルドでも重宝されるよ」


 雷属性の付与を受ければドローンの充電がほぼ制限なくもつことと、鳥や虫に擬態していることが索敵の評価を上げる結果となった。


 クライドの解説に、アミは手放しで喜んだ。


「ほんと!? 私、ここを追い出されても一人でやっていけるかな!?」

「そ、それは……。どうかな」


 リクに睨まれたクライドは、言葉を濁した。


「あなたを追い出すようなら、私もそんなところに用はないわ」

「それは困るなぁ、リクちゃん」


 シビアなリクを、クライドが宥める。リクはクライドと目が合うと、ふいっと視線を外した。


「そう嫌わないでよ。同じ秘密を共有する仲じゃないか」

「そのことを口にしないで」

「はいはい。分かってるさ」


 冷たくあしらわれても暖簾に腕押しのクライドは、にやにや笑いながら会話した。

 秘密というのはもちろん、アミの付与性能のことだ。


 実際に付与を受けたリクが自分で検証したことだが、アミの付与は相手の全バイタル値を倍にする。生命力と魔力値も倍加したため、ほぼ全ての戦闘スキルが恩恵を受けることになる。


 これほど特級の付与が、さらに『スキル無効効果無効』スキルによって保護されている。そして本人は『幸運・神』という、もはやよく分からない次元の保護を受けていると言っていい。


 本人がレベル1の時から、その性能だった。付与の効力は本人のレベルに関係ないと見ていいだろう。


 以前クライドが言っていた通り、これでは()()()()と表現せざるを得ない。


 今は共にドラゴンゾンビを倒したことでリクはレベルが23になった。アミはレベル9まで上がったそうだ。討伐序盤の小型魔獣戦に参加していなかったとはいえ、レベルの上がり方もアミは遅いように思えた。


 それでも、付与が目的なら度外視できるデメリットだ。


 戦闘を生業(なりわい)とする者なら、アミの能力は喉から手が出るほど欲しいことだろう。不用意に知られれば、アミの力は利用されるに違いない。誰か強い者が守ってやらなければならないのだ。


「リクー! やったよ。ドローンたちが役に立つって!」

「よかったわね」


 小走りで戻って来たアミのまわりを、ドローンの『スズメ』や『モンシロチョウ』が飛んでいる。『蚊』に至っては飛んでいるのか止まっているのか、どこにいるのかすら分からない。


「じゃあ、戻ろうか。アミ」

「うん! 今日のこと、早くミラさんに言わなきゃね」

「そうね」


 きゃぴきゃぴしている娘たちの背後に、クライドが残念そうな声を投げかける。


「リクちゃんたち、もう帰っちゃうの? もう少し、ここにいてもいいんだよ?」


 リクは歩みを止めない。アミが、リクの袖を引いた。


「……ねぇ、リク。クライドさんが何か言ってるよ?」

「そうね。()()()()()()()()()()()()()わね」


 リクはひと言でぶった切ると、アミを連れて立ち去っていった。






 一連の流れを目撃していた審査官は、クライドに同情した。


「副団長……。聖女様に何かしたので?」

「うーん……。したような、していないような……」


 わざとらしく考えるポーズをするクライドを見て、ダウトだなと審査官は思った。











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