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悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第十九章 繋がる物語

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 『フリーダム』フルメンバーでの最後のお茶会から数日が経った頃のことだった。




「こっ……これは……! 天才だ……っ」


 王宮で知能試験を受けていたリク・イチジョウとアミ・オオトリは、目の前で唸り始めた担当官を見て首を傾げていた。


 担当官が震える手で答案用紙を持ち上げている。二人が渡された紙面には、地球でいう中学生レベルの数学の問題が並んでいた。


 AIの助けを必要とすることなく、二人は問題を解いて帰された。


「何だったんだろうね」

「さぁ……?」


 二人は様々な試験を受けさせられたが、ほぼ白紙で出した答案もある。それは、この世界の歴史や地理、魔法学や神学といった科目だった。






 一通りの試験を終えたリクとアミは、後日シリングス宰相の執務室に呼ばれた。


 城の侍従に通された二人が中へ入ると、そこには魔術師団長であるグレゴール・ローゼンベルグ公爵の姿もあった。


「聖女様方がお見えになりました」

「グレゴール!」


 来ていたの、とリクが名前を呼ぶと、ローゼンベルグ公爵が振り向いて目を細めた。


「リク……! と、アミ殿。ご苦労だった。いきなり試験を受けさせてすまなかったね。疲れたろう」


「問題ない。アミは平気?」

「私も大丈夫だよっ」

「それはよかった」


 二人はソファに促され、侍従が席にお茶を運んだ。

 ローゼンベルグ公爵は、二人の向かいに座った。


 部屋の入口には、リクの護衛である神殿騎士レンブラント・ラッハが待機している。

 シリングス宰相は、リクの顔を見て誇らしげな顔をした。


「よく来たな、『光の乙女』よ」

「それで、次は何をすればいい?」


 リクは執務席のシリングス宰相に、先んじて言った。彼からの呼び出しは、そういうことだと理解していた。


 シリングス宰相は少し驚いた後、ゆっくりと首を振った。


「ああ、そういうことではない。試験の影響で警戒させてしまったかな」

「……私たちの新しい任務の話ではないの?」

「任務といえば、任務であるが……」


 シリングス宰相は、苦笑した。


 リクが視線を正面に戻すと、向かいの席でローゼンベルグ公爵が優しく微笑んだ。


「こちらが、お二人の試験結果だ。試験官が腰を抜かしていたよ。特に数学が学団博士レベルだと。……あなた方の元いた世界は、学者の世界なのか? それとも、お二人が特別で英才教育を?」


「学団博士?」

「英才教育?」


 リクとアミは顔を見合わせる。


「ただの義務教育だけど……」

「う、うん。普通……だよね?」

「義務教育ですと!?」


 シリングス宰相は、顎が外れんばかりに驚いた。


「みんな十五歳までに、あのレベルの教育は受けている」


「いやはや、それはそれは……。末恐ろしいことだ。これだけの知識があれば、スキルがなくとも武器になる。我々は、異世界人を見誤っていたという訳だ」


「……。今回の本題は?」


 リクが表情のなかに僅かな厳しさを滲ませて、先を促した。


 シリングス宰相が頷くと、ローゼンベルグ公爵が別の答案用紙を並べた。


「こちらは対称的に、お二人の結果が芳しくなかった科目だ。この世界特有の地理や歴史、神学は致し方ないとして……。魔法学も白紙で出しているね」


「私たちは神にもらったスキルは持っているけど、魔法に関しては専門的な知識はないんだ」


 事実を述べたリクに、ローゼンベルグ公爵は気を遣って穏やかに話した。


「分かっている。魔法がない世界から来たと言っていたね。代わりにカガクというものが発達していて……、それで人工の妖精や使い魔が生み出されていると」


「ええ」

「うん」


 リクとアミが一緒に頷いた。


 人工の妖精や使い魔とは、個人端末にインストールされているパーソナルAIやドローンのことだ。先の討伐戦で認知されたのは、当初無価値とされかけたアミにとっては良かったのかもしれない。


 シリングス宰相が言葉を継ぐ。


「――今回の試験結果を受け、リク殿たちには現時点で欠けている、この世界特有の知識や学問を学んでもらおうということになった」


「……!?」


「つまり、お二方にはこの世界の学校に入学して頂く。あなた方の試験結果を見て検討した結果、アシュトーリア王国の統合学園がよかろうという判断になった」


 聞き覚えのある学校の名前だった。


「それってディアドラさんやシエラさんたちが行く、外国の学園と同じ……!?」


 シリングス宰相の説明に、アミが身を乗り出して両目を瞬かせた。


「左様。リク殿、あなたは『光の乙女』――聖女という立場上、神学科に通ってもらうことになる。アミ殿は、魔法魔術科だ」


「…………」

「えっ……」


 リクは黙ってしまい、アミは絶望的な顔をした。


 二人の反応を受け、ローゼンベルグ公爵がリクに申し出た。


「リク、何か異論があるなら言ってくれ。国の方針を変えることまではできないが、私にできることなら可能な限りの要望を叶えたい」


「……少し解せない。この世界での一般教養を学ぶだけなら、この国の学校でも事足りるはずだ。それが……」


 リクが言いたいのは、国として手放しがたいはずの『聖女の器』を敢えて国外に出す理由だった。











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