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悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第十八章 欲望の末路

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 ユレナの失策について、ニムは語る。


『しくじったわね、ユレナ。あなたがスキルに頼らずに、ゲームのヒロインと同じように攻略対象たちと心を通わせていれば。……ううん。攻略対象じゃなくたって、構わない。本当に好きな人と、本物の絆を築けていれば……。たとえインクイジターが現れたとしても、あなたをそこから救い出してくれるヒーローはいたはずよ。その可能性を、あなたは『魅了』を使って自分で捨てたのよ』


「そ、そんな……」


 ユレナは顔面蒼白になり、声だけのニムに縋った。


「お願い、助けてニム。あなたの彼に頼めば、私をここから出すことくらい簡単でしょ? お礼なら、後でいくらでもするから……!」


 遠い国にいるニムは、『花ロマ』や『ななダン』とも関係のない全く別のゲームのヒロインだ。彼女が選んだ相手は、攻略対象ではない絶大な魔力を持つ魔塔の(あるじ)だったはずだ。


 こうして魔法による会話ができているのも、その人物の力だろう。


『――それはできない相談ね』

「え……?」


 断られたユレナは、挙措を失う。


「……ど、どうして!? 同じヒロイン同盟のリーダーでしょ!? ちょっとくらい助けてくれたって……っ」


『確かに私は同盟の創始者だけど、あなたを助ける義務はないわ。あなたを始め、ほかのヒロインたちにはこの世界の十分な情報を共有してきたし、色々な助言もしたわ。それを全部無視して自滅したのは、あなたの自己責任よ。……何より私の彼に、罪人の脱獄幇助(ほうじょ)なんて罪を背負わせたくないもの』


「何よ……。わざわざ連絡してきて、そんな言い方……っ」


 見る見る血の気が引いていくユレナ。このヒロイン仲間のニムこそが、最後の砦だとユレナは思い込んでいた。何とか助けてもらわなければと。


 その時、会話に若い男の声が割り込んだ。


『……おや、ニム。今、私の話をしていなかったかい?』

『デュラン!? あ、あなたを巻き込めないという話を……っ』


 間髪入れずに、ニムのうろたえたような声が響く。あの冷静なニムの感情を乱す相手なら、一人しかいない。ユレナは光の玉に身を乗り出して声を上げた。


「魔塔の主!? そ、そこにいるのね!? お願い、助けて! 助けてくれたら、子爵家の財産でも何でもニムにあげるわ! 私は一生、ニムの妹分で構わない。受けた恩は必ず返すわ。だから……」


 ユレナは子爵家を追放されているにも関わらず、子爵家の財産と口にした。

 それに気付いてかいないか、魔塔の主はユレナを試すようなことを言った。


『ねぇ、きみ。ヒロイン裁判とやらの最後で、リネン聖者に弟子入りを打診されていたよね?』

「へ?」


 ユレナが間抜けな声を発していると、魔塔の主は嘲笑うかのように語り始めた。


『知っているかい? どんなに莫大な魔力を身に付けた大魔術師も、神霊魔法を極めた大神官も、覚者(かくしゃ)の力には及ばないんだ。……きみは奇跡ともいえる、あの方の救いの手を蹴って自ら地獄を選んだんだ』


「そっ、そんなつもりは……!」


(あ、あのお子ちゃま裁判長がそんなにすごい人だったなんて、知らなかったのよ!)


 ユレナがたじろいで言い繕う。ユレナの目には、リネンが子供に化けた妙な人物にしか見えなかったのだ。今さらながらユレナは失敗したかと焦ったが、もう遅すぎた。


 ニムたちは裁判を直に見ていたかのような情報の早さだ。それも魔塔の力であった。


『そういえば、インクイジターはどうやってユレナを地獄の獄卒に引き渡すつもりなのかしら?』

『暗黒魔法に、そういうのがあるよ。闇魔術師やデーモンが使うような代物だけど』

『インクイジターって、神官なのでしょう? そんな暗黒魔法に通じているなんて……』


『それを含めて見ものだけど、そうだな。もし彼がその領域にいるなら、私の敵は彼だけということになるね』


 もはやニムと魔塔の主は、ユレナを放置して会話し始めた。ユレナは眼前の視界や音が遠くなっていくような気がした。


「あ……あの。助け……て」


 みじめだった。だが、ユレナは声を振り絞った。


 ニムはそれを分かっていて会話をやめ、ユレナに最後の言葉をかけた。


『……あなたに接触したのは、インクイジターの情報を得るため。……あれはヒロイン全体の脅威になるわ。あなたみたいにダメな子もいるけれど、それなりに忠告を守ってくれる子たちのために情報収集したかったのだけれど……。でも残念だったわね。あなたも報道以上の情報は持っていないみたい』


「な……何よそれ。私もヒロインよ……!」

『あなたはヒロイン失格よ』

「ま、待っ……!」


 突き放す言葉の後、声を伝えていた光の玉は掻き消えた。


 最後の希望を持たされたうえで切り捨てられたユレナは、牢屋の中で狂ったように泣き叫んだ。

 見張りの兵士がやって来て腹を蹴られるまで、阿鼻叫喚は続いた。




 それ以降、誰もユレナに接触する者はいなかった。












ヒロイン同盟なんてものが出てきました。

ラビはまだ知らないようです……。



更新

【あるゲーム(作品名不詳)】

・ヒロイン:ニム

・???:魔塔の主 非攻略対象 ←New!


前回、フライングして出してしまったのは内緒……



各勢力ごとのまとめも追加します

【秘密サロン『フリーダム』】 ←New!

悪役令嬢・モブ令嬢支援系自由理念


オーナー:エクリュア王女(ななダン・花ロマ)

メンバー:ミラフェイナ(ななダン)

メンバー:ディアドラ(花ロマ)

メンバー:シエラ(あるネット小説)


新入り:リク(ななダン)

新入り:アミ(不明)



【ヒロイン同盟】 ←New!

たくさんいるヒロインを支援・情報共有


盟主:ニム(あるゲーム)

メンバー:ユレナ(花ロマ)※処刑寸前




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