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悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第十七章 シナリオは、ぶっ壊れました

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 一方、全てを見ていたアルベール王は額を抑えながら忸怩たる後悔に苛まれていた。これでは王子の教育に二人連続で失敗したことになる。


「すまぬ……。王妃を亡くしてから、王子たちを甘やかしすぎたのかもしれん……」

「あら、今さら気付いたのですか陛下?」


 エクリュア王女が含み笑いをした。


 乳母に育てさせたこの第一王女だけが、まともになったのは天からの皮肉以外の何ものでもない。容姿が故王妃にうり二つであったため、過干渉も放置もせずバランス良く教育できたのだろう――と、国王は考えた。


 しかし、実際は少し違う。


 エクリュア王女は地球からの転生者であり、数十年生きた良識ある大人の記憶を持っている。そのうえ優秀なのは、異世界の乙女ゲーム『ななダン』『花ロマ』両方の知識があるからだ。


 転生者チートというものだが、父王がそれを知ることはない。


 アルベール王は騒いでいるコルネリウスの元へ歩いて行き、肩に手を置いて怒りの表情で制止した。


「コルネリウス」

「ち、父上!?」


 現れた国王が、無情な事実を告げる。


「王族である以上、自らの言葉には責任が伴うことを分かっているな? ローゼンベルグ公爵家の後ろ盾を失ったそなたが、王位に就くことはないだろう」


「へ……?」


 思いもしなかったことを言われたのか、コルネリウスは頓狂な声を上げた。


 アルベール王は、王子たちや側近が聞いているなかで宣言した。


「これで王位継承権は、エクリュアが第一位にくり上がる。その意味が分かるな?」

「うそぉ……」


 この流れは想定していなかったらしく、エクリュア王女は面倒くさそうに肩を竦めた。


「国王の名に於いて命ずる。エクリュアよ、アシュトーリアの統合学園で帝王学を学んで来い。次期国王に、そなたを指名する」


「――!!」


 これには場の全員が驚愕した。


 永世中立国アシュトーリアの統合学園といえば、東大陸随一の学園である。


 あらゆる学問、錬金術、魔法、剣術、医術、神学など学べないものはないと言われている。


 東大陸中のあらゆる国々から王侯貴族の子弟たちが集まり、また平民出身でも優秀な者であれば広く門戸を開いている。


 有名ギルドのS級隊員や、各国の優秀な戦士たち、また頭脳集団たちもこの学園の出身者であることが多い。


 グランルクセリアにある貴族学院とは比べものにならないレベルのものを学べるだろう。


「姫様が、王に……指名された……!? それに、アシュトーリアの学園って……」

「わたくしたちの姫様が、女王に……!?」


 感激したのは、『フリーダム』のメンバーであるシエラや、ミラフェイナだ。


 しかし、エクリュアは一応反論してみせた。


「第三王子は、どうするのよ……」

「まだ二才の赤子だ。それに体も弱い。王妃の血を引く、そなたの敵ではないだろう」

「買い被られたものね……」


 上の兄王子二人の醜態を見せられてからでは、無理もないかもしれない。


 エクリュア王女は幼少の頃から国の治水事業に口を出したり独自の商売をしたりと、大人顔負けの才能を発揮してきた。


 元より、遊びほうけている兄王子たちよりずっと王座に近かったのかもしれない。


 しばらく沈黙してから、エクリュアは抱えた頭で天井を向く。


「分かったわよ。行ってやるわよ、統合学園!」

「姫様!」


 シエラとミラフェイナ、アミたちが駆け寄って、きゃあきゃあと騒いだ。

 それを少し離れたところから、リクが見守っている。


 そんな彼女たちを、コルネリウスが絶望の(まなこ)に映し出す。


「そ……そんな……。俺様が、立太子するはずだったのに……」


 湧き上がる、劣等感。

 愕然と腰が抜けたコルネリウスは、情けなくもその場に尻をついたのだった。






 その日は、実に様々なことが起きた。




 『聖女の器』リク・イチジョウの、魔物討伐任務凱旋祝賀パーティーが開宴。


 その会場で起こった、子爵令嬢ユレナと第二王子たちによるフラウカスティア伯爵令嬢への冤罪・婚約破棄事件。


 そこへインクイジターが現れ、『ヒロイン裁判』が開廷。


 途中、聖地の五大巫女とリク・イチジョウが小競り合いの戦闘となる。


 子爵令嬢ユレナが有罪となり、子爵家は没落。


 同時に第二王子が失脚し、その元婚約者が永世中立国アシュトーリア王国の大公と婚約。


 第一王子がローゼンベルグ公爵令嬢との婚約破棄を独断で発表。王位継承順位が逆転。


 国王が第一王女を次期国王に指名。


 第一王女、アシュトーリアの統合学園への遊学が決定。






 翌日の各新聞社紙面がカオスになったことは、言うまでもない。











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