表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第十七章 シナリオは、ぶっ壊れました

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/130


「――ディアドラ!!」


 その時、祝賀会場の外から駆け込んでくる人物がいた。

 衛兵が止めないからには、城の高官か要人だ。


 案の定、その人物は宰相補佐官の一人、フラウカスティア伯爵であった。


「お父様!? どうしてここに……」


 宰相補佐室は忙しい。夜会に参加するヒマなどなかった伯爵だったが、彼は娘のために息を切らせて駆けつけたようだ。


「聞いたぞ。裁判のことだ」

「ああ、そのことですね」


「まさか、殿下が裏切るなど……。お前がずっと婚約解消したがっていた理由は、そういうことだったのだな。私がもっと真剣に受け止めていれば……」


「もう過ぎたことですわ」


 ディアドラは父親に対して丁寧に受け答えしたが、大公からの求婚にいつ触れられるかとハラハラした。


「殿下とは白紙になりましたわ」

「当然だ! 早い段階で発覚してよかった」


(早い段階? もう婚約して十年は経ちますけれど)


 フラウカスティア伯爵は、以前は第二王子との婚約解消を希望するディアドラに全く理解を示さなかった。あの裁判があったおかげか、態度が百八十度変わったように見える。


「……それより、お前に新しい縁談が……ん?」


 ここへきてようやくフラウカスティア伯爵は、ディアドラの隣にいる男に気付いたようだ。


 やっと気付いてもらえたガルフィデルヘルムは、営業スマイルを浮かべて(いや)やかに腰を折る。


「フラウカスティア伯爵、お初にお目に掛かる。私はアシュトーリアの大公、ガルフィデルヘルム・ラムザ・シェイドグラム。先にお送りした書簡は、お読み頂けたようで何よりです」


「こ……これはこれは大公殿!? まさかここでお会いできるとは!?」


 さすがに予想外だったのか、フラウカスティア伯爵は目を丸くする。しかしガルフィデルヘルムは、容赦なく追撃をかけた。


「実は、貴国の国王に許しを得たところです。先ほどの裁判の前に、彼女が元王子に辛く当たられるのを見て一刻も早く救い出したかった」


「元王子……? いや、それより。もう陛下の許可を!?」


 フラウカスティア伯爵は口をあんぐりと開けた。情報量の多さと事態の進行の早さに、お手上げに近い状態だ。


 同時に、ディアドラも驚きを隠せなかった。


「あれをご覧になっていたのですか?」


 あれ、とはヒロイン裁判の前にくり広げられていた断罪劇のことだ。


 ディアドラは責めるつもりはなかったが、ガルフィデルヘルムはすっと真剣な表情になった。


「……すまない。インクイジターから接触を受けていて、裁判が起こることは事前に知っていた。その場で助けられなくて悪かった」


「あ……」


 ディアドラは例の証拠となった魔導具のことだと思い至り、謝罪するガルフィデルヘルムを止めて首を振る。


「い……いいえ。最後には、助けて下さいましたわ。いつものように……」

「いつも?」


 フラウカスティア伯爵が訝しげな顔をする。


「娘には、王家主催の夜会で一目惚れしたと書かれていましたが……」


 それはガルフィデルヘルムの書いた方便だ。そうでも言わなければ、国外の大貴族との接点など説明しがたいものがある。


「ええ。彼女ほど美しい花は、そういない。お見かけするたびに絡まれていたので、余計な世話と思いつつも干渉してしまいました。お許し下さい」


「そ、そうでしたか。ははは……」


 ガルフィデルヘルムの能弁さに、フラウカスティア伯爵はすっかり信じている様子だ。


 実際には絡まれた場所は社交パーティーではなく貴族学院で、絡んでいたのは見知らぬ貴族の子弟ではなくユレナなのだが――。


 ディアドラは、こっそりとガルフィデルヘルムの方を見た。父であるフラウカスティア伯爵と難なく受け答えしている。こういう場面に慣れているようだ。


 彼が何故、名前や姿を変えてまで他国の学院で教師を務めていたのか。ディアドラには分からない。ほかにも顔や名前があるというようなことも言っていた。


 彼は本当は何者なのだろうと、ずっと考えていた。『花ロマ』のゲームでは、悪役令嬢の最期に関わる人物であるということしか分からない。


「ここで立ち話もなんです。馬車を用意してあります。彼女のことで話もありますし、よろしければ伯爵邸までお送りしよう」


「そ、そんな滅相もない」


「いえいえ。私としては、一刻も早く彼女を連れて行きたいのです。書簡に書いた通り、結婚の条件を詰めさせて頂きたい」


「む……。分かりました」


 フラウカスティア伯爵はたじろぎっぱなしだったが、ガルフィデルヘルムの前向きさに押されて折れざるを得なかった。


「私も同席しますので、皆様これで失礼致しますわ」


 ディアドラは礼儀正しくカーテシーをすると、伯爵や大公たちと一緒にその場を後にした。












実は悪役令嬢サイドの悪役令嬢や他の令嬢たちの幸せストーリーには副題があります。

いわゆる長文タイトルのあれです。


第一部終了後の小話で明かしますが、どんなタイトルなのか予想してみて下さい。

当たった人や、かなりいい線いった人、そもそも予想なんてしてない人。

皆さんにニマニマエピソードをお届けしますのでお待ち下さい。



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ