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悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第十七章 シナリオは、ぶっ壊れました

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64/129

1  ★


 光の扉を注視していたリク・イチジョウは、その僅かな揺らぎを見逃さなかった。


「……!」

「ひぐぅぅぅぅう」


 何故か泣きながら全力疾走してきたアミ・オオトリは、大胆にもスカートの裾をたくし上げて裸足で扉から出てきた。走るのに不便なのか、ヒールの高い靴は手に持っている。


「アミ!」

「アミ様!?」


 一緒に待っていた公爵令嬢ミラフェイナ・ローゼンベルグが顔を赤らめて見咎める。


「何ておてんばな……っ。アミ様、ストップですわ!」


 ミラフェイナが声を掛けようとする矢先、アミは盛大に転んだ。


「ひべしっ」

「あ……」


 まだ会場には残っている客もおり、リク関係の美形たちも見ている中でこれは恥ずかしい。見ていた貴族令嬢たちが、何人かくすくすと笑っている。


 そんなことは気にも留めず、風のように駆けつけたリクが急いでアミを助け起こした。


 アミは何か怖いものを見たような顔をしている。出て来るのが遅かったことから、やはり『法廷』の映像が消えてから何かあったようだ。


「こ、怖かった……」

「何があったの?」


 アミは小動物のように震えていたが、やがてか細い声で言った。


「怒られた……」

「怒られた?」


 リクが視点をずらすと、遅れて光の扉からインクイジターが出てきた。彼はこちら――というよりアミの方を一瞥したように見えた。


 インクイジターは光の扉が消滅するのを見届けると、巫女たちやカルマン神官と合流した。そうして神殿関係者を伴い、リクたちの方へと近付いて来た。


 リクの護衛のレンブラント・ラッハや騎士団のアウグストが何事かと両者を見遣る。


 リクはアミを背中で隠すように立ち塞がった。


「何の用?」

「次はない、とだけ言っておく」

「……何?」


 厳しい口調のインクイジターに、リクも眉を顰める。


 インクイジターは、リク越しにアミを指差して言った。


「『法廷』に侵入するなど、言語道断。次は法廷侮辱罪で処罰を与える。よいな」

「すっ、すみましぇんでした……」


 アミがリクの後ろで、分かりやすくビクビクしている。


 リクは言い返そうにも、アミが『法廷』に巻き込まれたのは事実なため、何も言えなかった。


 インクイジターは巫女たちと共に立ち去った。






 少し離れてから、『星河の巫女』カレン・スィードがアミたちのいる方を振り返った。

 異世界から召喚されたという、同じ年頃の少女たち。


 『法廷』から出てきたラビは、待っていたカレンたちに『法廷』に巻き込まれたというアミ・オオトリと話をしていたとだけ告げた。


「あの子、何なのだ? 『法廷』に巻き込まれるなんて、ある? 聞いたことないのだ」


 アミ・オオトリの側には、もう一人のヒロインであるリク・イチジョウがいる。警戒してしまうのも無理はない。


「おかげでインネンつけられて、大変だったんだよ~」


 報告するセミュラミデは、口とは裏腹にご機嫌な表情をしている。


 ラビは会場を振り返り、横転しているテーブルや割れたグラス、集まった男たちを見て何となく察した。

 無限武神の巫女である彼女に、戦わせる事態にでもなったのだろう。


「リク・イチジョウが、アミ・オオトリを探して暴れでもしたか?」


「およ。な~んで分かるの~? そうそう。急に返せとか言ってきて、姉やんを襲おうとしたからぁ~。やっつけちゃったよ」


「それでいい」


 セミュラミデをねぎらい、ラビはそれ以上振り返ることはしなかった。


「ああ言っておけば、ひとまずあちらは……大丈夫だろう」

「どういうこと? いい加減、説明するのだっ」


 勘のいいカレンが詰め寄ってくる。


 説明を求められたものの、ラビは顎に手を添えて唸ってしまった。


「うーむ……」

「私たちにも言えない話なの?」


 カレンが唇を尖らせて言った。ラビは肩を竦める。


「言えないというより、私にも詳しい事情は分からんのだ。あの娘は、『混沌の竜眼』でも鑑定できんからな。今のところ、『ヒロイン』でないということ以外はさっぱりだ」


「ウソ! オールド様の神眼で!?」


 カレンが初めて驚いた顔をする。ラビが頷いた。


「ああ。汝に聞こうと思っていたのだが、理由をオールド様にお尋ねできないか?」

「えっ……?」


 混沌龍神オールド。


 インクイジターを任命した神々の一柱(ひとはしら)で、ラビにわだつみの霊格と右目の『混沌の竜眼』を与えた神である。


 これによりラビはスキル『完全鑑定』と、鍵となる人物を探し出す運の良さを得た。


 カレンは考えて、少し首を傾げながら言った。


「うーん……。私でも、できなくはないけど……。龍神様にお尋ねするなら、一度持ち帰ってヒルデに頼んだ方が間違いないかも」


 ヒルデとは、聖地五大神殿のひとつ混沌神殿の巫女ヒルデナーダのことだ。


 セミュラミデより一つ上の十二才で、聖地では龍神との交信に最も長けた巫女として知られている。


 龍神限定ではあるが、複数の神々と同時に交信できるのはカレン以外では彼女だけだ。五大巫女では序列一位に数えられる。ちなみにセミュラミデは序列三位である。


 カレンの提案も、ラビは予想していた。


「やはり、そうか。では処刑が済み次第、一度アシュトーリアへ戻る必要があるな。お伺いを立てるのに、魔導通信ではな」


「あっちのヒロインは、放っておくの?」

「今はまだ、何もしていないからな。だが、いずれまた会う時が来るだろう」

「それって、いつになるのだ?」


 と、カレンが疑問を抱く。ラビはおや、という顔をしてアイロニカルに笑った。


「それが分からん汝ではないだろう。……神のみぞ知る、だ」

「……それもそうなのだ」


 カレンはアミ・オオトリに何かを感じかけていたが、途中で手放して視線を外した。


 『法廷』で解散後、ジンデル子爵令息はバードラン男爵子息と共に帰路についたようだ。

 裁判を終えたラビたち神殿関係者も、会場を後にした。












更新

インクイジターサイドまとめ

★インクイジター:ラビ

裁判長:リネン 知識の神の地上代行者。どこかの山奥に住むショタ


お手伝い出張

・星河の巫女:カレン 17才

・無限の巫女:セミュラミデ 11才 五大巫女


お留守番組 ※インクイジター第0話に出てます

・責任者:大神官ツクミト

・混沌の巫女:ヒルデナーダ 12才 五大巫女 ←New!

・大地の巫女:ナディア 8才

・神門の巫女:キスカ 10才

・心泉の巫女:シプリス 9才


五大巫女①~⑤ ※能力順 ←New!

①ヒルデナーダ ←New!

②???

③セミュラミデ ←New!

④???

⑤???


※『星河』を持つカレンは①より上です




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