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悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第十三章 ヒロイン裁判の裏

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 一方、国王はカルマン神官の説得に応じていた。


「ぐ……ッ。(あい)分かった。こちらもラビ殿の裁定に従おう」

「それでは、裁判をご覧になりますか?」

「見られるのか!?」


 アルベール国王が驚いてカルマンを見た。カルマンは頷き、一呼吸置いて答えた。


「はい。国王陛下の許可があれば、中の様子を開示すると。ただし、その時はこの場で公開するとし、人払いなどはしないことが条件だと……」


 つまり今広間にいる国内貴族は元より、使用人から他国の招待客までをも含めた全員が目撃するということになる。


(……あの審問官、なんて条件を出すのよ!?)


 国王の隣で聞いていたエクリュア王女も唖然とした。

 『法廷』内部の様子を、魔法か何かで皆に公開するという意味だろう。


「何だと……? それが条件?」

「いかがなさいますか? 『法廷』にはクリスティン殿下もいらっしゃいますので……」


 審理対象でないとはいえ、万が一ということもある。


 何より面子(メンツ)や威信を重要視する王家が許す訳がない。それは第一王女としてエクリュアも同意するところだ。


 しかし『ゲーム』を知る転生者としては、笑わずにはいられなかった。「子爵令嬢」と聞いた時点で、エクリュアには読めていた。


「ぷふぉっ。そうよねぇ。元婚約者よりだぁーいじなカノジョのためなら、醜態を晒してるかもしれないわねぇー?」


 エクリュアは込み上げる笑いを堪えようとしたが、震える肩が抑えきれていなかった。


 先ほど、第二王子クリスティンが婚約者のフラウカスティア令嬢と勝手に婚約破棄したところを国王は壇上から見ていた。


 フラウカスティア伯爵家は、古くから王家に仕える忠臣の一族で国王派の重要な家門のひとつだ。あのような公衆の面前での婚約破棄など、侮辱でしかないだろう。


 あれの尻拭いだけでも頭が痛いというのに、裁判で浮気相手の女のために権力を行使などしようものなら目も当てられない。


「いや……許可しよう。見せてくれ」

「よろしいのですか!?」


 カルマン神官は国王が断ると思っていたため、目を丸くした。


「もうよい。あやつは先ほどの騒ぎで、どちらにしろ責任を取らせる」


 国王はそう言ったが、好奇心には勝てなかったのかもしれないとカルマンは思った。


「……お二方! お願いします」


 カルマンは両腕を上げ、広間の中央にいるカレンたちに合図を送った。


 数分前まで第二王子たちが寸劇をくり広げていたその場所に、今は二人の巫女が立っている。


 そこへカルマン神官が国王の指示で合図を送ったため、自然と国王のいる壇上からホール中央への道から人がはけ、皆が巫女たちに注目した。


「分かりました。……ミュウ」

「はいよ~」


 カレンが答えてセミュラミデを呼び、二人は左右に間を空けて横並びになる。

 宙空に手を翳し、二人同時に祝詞を唱えた。


「『水と 風と 火と 土の目 四隅(よすみ)の精霊たちよ (そら)(そら)を巡り見よ』」


 すると青、緑、赤、黄色の光が場に現れ、四隅を形成して大きな横長の長方形を作り出す。


 巫女たちの魔法もさることながら、そこに映し出された『法廷』の映像に人々は釘付けとなった。




『――何それ? 王子妃でもないのに王宮暮らしって……。ああ、あれですか。王子殿下専属のナントカってやつ? コドモのおれには全然分かんないなぁ~』


『なっ……!』

『貴様……ッ! ユレナ嬢は今し方、正式に私の婚約者となった女性だぞ! 侮辱は許さんッ!!』




 誰かが言い争っている。

 それが第二王子クリスティンであることは疑いようもなかった。


「これは……」


 国王が呆気に取られている。


「あらお兄様じゃない。予想通りすぎて、笑いも出ませんわぁ」


 一方のエクリュア王女は、笑いも出ないと言いながら目が笑っている。




『――ユレナ嬢はあそこにいる悪女にひどい嫌がらせを受けていたのだ。知っての通り、彼女は私の元婚約者だ。だからこそ私がユレナ嬢を保護しなければならなかったのだ。学院の女子寮では私も手が出せないからな』


『そ、そうよ! クリスティン様は私を守ってくれただけよっ!』

『そうだそうだ!』

『……私はユレナ様に嫌がらせをしたことなどありません!』

『ハン! 白々しい言い訳だな、実に醜い女だ』




 親友の叫び声が聞こえたミラフェイナは、映像を指差してあっと声を上げた。


「ディアがいますわ!」


 リクも声を聞いて映像を見ていた。近くにいる黒衣の男も、映像を見上げている。


 その場所をどのように表現したらよいのだろうか。


 奥の法壇と、手前の傍聴席。被告席に生えた巨大な樹木がなければ、『法廷』と呼んでいいのかもしれない。


「あれが『法廷』……?」


 それがどこにあるのかは分からない。一瞬で人を移動させるテレポーテーションのような魔法もあるらしい。魔法でどこまでのことができるのかはリクにとっても興味がある。


 傍聴席の左側に、ディアドラ・フラウカスティアがいるのが見えた。先ほどまで彼女を糾弾していた者たちも。


「間違いありませんわ。今、『法廷』にいるのは『花ロマ』の関係者ですわ」

「……そうみたいね」


 第二王子やその他の白炎に包まれた者たちを見れば一目瞭然だった。

 だが、その共通点が理解できるのはミラフェイナやディアドラたち転生者か、リクやアミのような転移者だけだろう。










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