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煌びやかな王宮のホールには国の有力貴族たちを始め、諸外国の外交官や特使、有名ギルドのオーナーに至るまで、そうそうたる面々が招待されていた。
聖女召喚の成功と、魔の森討伐の凱旋祝いパーティーである。
「すごーい! どこもかしこもキンキラだぁ~」
王宮内の装飾や意匠に施された宝石や金箔に目を眩ませながら、正装をした十一歳の巫女セミュラミデがラビたちの前ではしゃいでいた。
「汝は聖火神殿出身だったな。五大神殿もそれなりの装飾だったと思うが」
「やはぁ~、聖地の星河神殿はきらっきらだけど、ほかの神殿はこんな贅沢じゃないよ~?」
「そうだったか」
ラビは星河以外の五大神殿はうろ覚えだった。
「はぁ……。何か緊張してきたのだ……」
ラビの一歩後ろを歩くカレンが溜息を吐いた。彼女も『星河の巫女』として正装している。
巫女たちの正装は、儀式用の手足に鈴が付いたものだ。歩くたびにリン、リンと心地よい音が鳴っている。
「汝が緊張してどうする。我らの最上級切り札だろう」
ラビが悪戯めいた視線で振り向くと、カレンは「その言い方やめて……」と呟いた。
「どこかのインクイジターが不安だからなのだ……」
「安心せい。向こうの『ヒロイン』より、汝の方が神々しければそれでよい」
「うっ、胃が……」
カレンの心労は絶えない。
一行は現地の神官・カルマンを伴って王宮入りしていた。
今夜はあくまでも『聖女の器』の凱旋パーティーだ。無論、神殿関係者も招待されている。こうしてラビたちも堂々と入り込めるという訳だ。
それを利用して、今回『ヒロイン』をひとり処す。
「先に国王と官僚たちへ挨拶を済ませておきましょう」
「分かった」
カルマン神官の案内で、一行は祝賀会場の奥へと進んでいく。
貴族の招待客たちの視線が、僅かながらに突き刺さる。
「おっ、おれも来てよかったんでしょうか? 場違いな気が……」
一行と共に来ていたウォルター・ジンデル少年が、不安げに辺りを見回す。正装していても、セミュラミデと変わらない歳の子供だ。
カルマンが気を遣って振り向く。
「今回は聖女……の器、の祝賀会ですからね。国内外の貴族や要人たちが広く招待されています。子爵令息である、あなたがいても問題はないでしょう」
少年が連れて来られた理由をカルマンもどことなく聞き及んでいたが、ウォルターのような子供を証人に使おうとは、ラビ審問官の考えは未だに雲の上であった。
ラビが尋ねた。
「ジンデル子爵に手紙は渡したか?」
「はっ……はい。父も驚いていました。おれが審問官様のお手伝いをすることになるなんて……。それも、姉のために……」
当初は何も分かっていなかったウォルターだが、のちにサンクテン墓地で知り合った審問官が大神官と並ぶ大物だと知った時には、両親と共に驚愕せざるを得なかった。
「子爵の許しを得ているなら、胸を張るがいい」
「……はい!」
ウォルターは覚悟を決めた。姉の運命をねじ曲げた者たちへ思い知らせるためにも。




