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「――アミ!」
「リク様……!」
リクが駆けつけると、アミは穏やかな顔で寝息を立てていた。
「特にお怪我はされていないようでしたけど、魔導具で回復魔法を掛けておきました」
シエラの説明を聞きながら礼を言い、リクは『浄化』を施した。
「これで毒や睡眠薬を盛られていたとしても、影響は消えたはずだ」
「よ、良かったですわ……!」
心配のあまり目を潤ませていたミラフェイナは、リクのおかげでようやく胸を撫で下ろした。
それでも目を覚まさないことから、ある程度のダメージを負った可能性はある。
「とにかく連れて行こう。今日は目を覚ますまで、私がそばにいた方がいい」
「そうですわね。では、わたくしたちのタウンハウスでお休み頂きましょう! ヘイデン家に連絡するように致しますわ」
久しぶりにアミと三人になれると、ミラフェイナは顔を綻ばせた。
リクは軽々とアミを抱え上げた。『筋力増幅』が常時発動しているため、お手のものだ。
「行きましょう」
「はいですわ!」
そのまま、アミを抱えたリクはミラフェイナとシエラを伴って部屋を出て行く。途中で一度振り返り、冷たく刺すような視線で侯爵――ウルツァイトの方を見た。
「もう二度とアミに近付かないで」
相手は答えなかったが、リクたちはそのままオペラハウスを後にした。
リクたちがオーナールームを出た後、オリヴィアが小走りでウルツァイトの方へと駆けてきた。
「ちょっと、オーナー。どうして……?」
「何故行かせたのか、ですか?」
「それもあるけれど……」
「とにかく今は、様子見ですね。僕、彼女たちについて何も知りませんし」
「あの子……。アミちゃんのこと、放っておくの?」
「まさか」
ウルツァイトは静かに眼鏡を上げ、先ほどのやり取りの全てを思い出した。
あの時、ウルツァイトは嘘をついた。
「あれほどダウトな人も珍しいですよ。あの子が心配ですね」
「じゃあ、何故?」
「中途半端なことはしたくないですね。場合によっては逆効果になる可能性もあります。……今は、ヘタに介入しない方が良いかと」
「何よ、冷たいじゃない」
「そうでもないですよ」
ウルツァイトの理性的な判断も、情が深いオリヴィアには理解し難いようだ。
「とにかく。まずは情報収集が先ですね。本国のギルドと、学園の事情通に当たってみましょう」
と、眼鏡を上げながらウルツァイトは言う。
オリヴィアは溜息を吐くと、床に落ちている招待券を拾いに行った。アミが曲を気に入ったと言っていた歌劇のVIP用招待券を、支配人からもらってきたのだ。
オリヴィアはそれを無造作にウルツァイトに押しつけると、お節介な姉のように懇々と言った。
「だったら、これ。オーナーから渡してきて。同じアムリタ学園生でしょ?」
「え……」
招待券チケットを渡されたウルツァイトは、幾分か動揺した。
「でも彼女は魔法魔術科で、僕とは……」
「渡・し・て・き・て」
「はい……」
オリヴィアの迫力に根負けしたウルツァイトは、ただ頷くしかなかった。




