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悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第二部 第十章 可能性の旋律

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 商業区の街並みは、変わらずの賑わいを見せていた。

 休日ともなれば、各種催しや商店の客引きなども盛んだった。


「……前も通ったけど、ここは随分と洗練された街ね」


 整備された街道と、行き交う人々の服装や表情から分析してリクが呟いた。


 グランルクセリア王国も大きな国だったが、このアシュトーリアという国の学園都市エクスには、技術や建築などの精粋が集まっているような印象だ。


 異世界からの被召喚者であるリク・イチジョウとアミ・オオトリは、昨年の冬の間に召喚国であるグランルクセリアでこの世界のことを学んだ。


 この世界はアークヴァルトという大地の上に成り立っていて、今いるのはそのうちの東大陸に属する。

 ここは様々なゲームやネット小説などの舞台になっている国が、幾つも存在する。


 アークヴァルトは、不思議な世界だった。


「はい。エクスに最先端の分野が集まるのは、やはりアムリタ統合学園あってこそですわね。学園には東大陸中から様々な国の貴族や王族、ひいてはその資金が集まる場所ですもの。当然といえば当然ですわね」


 話しながら、うきうきとした感情を隠しきれないのはローゼンベルグ公爵家の悪役令嬢ミラフェイナである。


 身に纏った深紅のドレスは、薔薇を思わせる華麗さと気品を感じさせるミラフェイナならではのデザインとチョイスである。


 ドレスコードがあるとはいえ、どう見ても気合いが入っていた。


 今日という日はブレーザー侯爵へ直談判しに来ているのだが、ミラフェイナは密かにオペラハウスへ訪れることを相当楽しみにしていたようだ。


 一方のリクは、いつもの神学科制服だった。正装が必要というなら、制服で充分だった。


「それで、この街は……」


 話を続けるミラフェイナが、ふとリクたちの背景を思い出した。


 オペラハウスもエクスの街並みも、リクたちにとっては取るに足らないものかもしれないと気付いたのだ。


「……といっても、未来の地球からいらしたリク様やアミ様には、味気ないと思われるかもしれませんわね」


 ミラフェイナの前世は2020年頃に命を落としたシズカ・サクライという日本人だ。


 リクとアミは、それより何十年も未来の地球から転移してきたのだ。ミラフェイナが知らない科学技術も日常的だった。


「いや、ここは魔法が存在する世界。地球とは違うから新鮮だよ」

「お心遣い、ありがとうございます」


 リクが事実を口にすると、ミラフェイナはホッとしたように微笑んだ。




 オペラハウスへは現地集合となっていた。

 リクとミラフェイナは、公爵家の馬車でオペラハウス前の広場へ到着した。


 護衛の神殿騎士レンブラント・ラッハが馬車の扉を開けて、リクに手を差し伸べる。リクの護衛としてグランルクセリアから付いて来た『ななダン』の攻略対象の一人だ。


 彼の手をいつものようにスルーして、リクは馬車を飛び降りた。


「ご苦労さま」

「……おい」


 そうして憮然とした表情になるレンブラントの手を、代わりにミラフェイナが借りる形で馬車を降りる。


 恒例となったこんなやり取りに、ミラフェイナも申し訳なく感じてはいた。もう何度も断られているのに、レンブラントも諦めが悪かった。


 男前すぎるリクが、レンブラントの手を取る日は来るのだろうか。


(リク様には、恋愛より気になることがあるみたいですわね……)


 相変わらずと思いながらも、ミラフェイナは僅かにレンブラントにも同情の念を禁じ得なかった。




 待ち合わせ場所は、チケット売り場の近くだった。


 一足先にそこで待っていたのは、白いレースとチュールスカートのドレスを着た可愛らしい令嬢――シエラ・クローバーリーフだった。


 ミラフェイナたちと同じグランルクセリア出身の伯爵令嬢で、今回は無関係ではいられないと付いて来てくれたのだ。


 シエラは通信用魔導具の小さな水晶玉を持っていた。いつも秘密サロンのテーブルに置いてあるものだ。リクたちに挨拶をすると、シエラは水晶玉に話しかけた。


「皆様、ごきげんよう。いらっしゃいましたよ、姫様」

『……ええ、聞いているわ』


 答えた声は、誰あろうグランルクセリア王国第一王女エクリュア・ヴァイス・グランルクセリアだった。隣にディアドラ・フラウカスティアもいるようだ。水晶玉の中の映像で、会釈をしているのが見える。


 その通信用魔導具は、秘密サロンで従者を人払いして秘密の話をする時に外部と連絡するために使っていたものだ。


 今回は安全のために王女たちは来られないため、シエラに持たせたのだろう。


『紹介状だけじゃ弱いかもしれないからね。いざとなったら、私も話すわ』


 シエラの手には、一通の封筒があった。それがエクリュア王女からの紹介状だろう。同じグランルクセリア王国の貴族であれば、無視はできないはずだ。


『姫様が話されるのは、最終手段でよろしいかと。始めは、事の成り行きを見守る予定です』


 エクリュア王女の横から口を挟んだのはディアドラだった。それにはミラフェイナも頷く。


「わたくしも、それが良いと思いますわ。侯爵に会えるかどうかも、まだ分かりませんし……」


 シエラたちが方針を確認している間、リクは辺りを見回してある人物を探していた。


「……アミは、まだ来ていないのか?」


 リクが尋ねると、シエラが気付いて言った。


「そういえば、まだいらしていないんです。馬車が通るたびに見ていたのですけれど、ヘイデン家の馬車はまだ……」


 シエラの言葉に、リクとミラフェイナは悪い予想をせざるを得なかった。アミが世話になっているヘイデン家は、あまり歓迎していないような雰囲気だったからだ。


「あのヘイデン家ですから……。ちょっと心配ですわね。お迎えに行けばよかったですわ……!」

「…………」


 リクは少し思案し、数ヶ月前、この都市に来た日のことを思い出していた。






 グランルクセリア王国から北の方角へ田園地帯を抜け、馬車で草原を数日駆けてなだらかな丘陵を越える。


 左手に遠く森林地帯が見えた辺りで、国境を越えた。アシュトーリアの領地へと突入する。


 ある都市の防壁に入る手前で、一行の馬車は関所の列に止まった。それなりに警備は万全のようだ。

 御者が関所の役人と応対している。馬車の窓から外の光景を見ながら、リクが言った。


「着いたみたいね」

「ええ。グランルクセリアから七日間。長かったですわぁ」


 うーんと伸びをしながら、ミラフェイナが言う。


 馬車がつつがなく関所を通過すると、大陸中央部のさらに中心にある永世中立国アシュトーリア王国の都市に一行は足を踏み入れた。


 この国は大陸で広く信仰されている神聖星教会の聖地『星の遺跡群』を擁し、首都には五大神殿に守られた総本山である星河神殿があるという。


 一行が訪れたのは、首都よりやや南にある学園都市エクスであった。


「学園は、三日後の月曜日からですわ。長旅で疲れが溜まっていらっしゃいますでしょう? 今日のところは、公爵家のタウンハウスでお休みを取って頂きますわ」


「そういえば、アミは……」

「アミ様は、残念ですが……」


 この国まで三人でやって来たが、アミは別の貴族に引き取られることが決まっていた。












今回、シエラもドレスを着ています。

なかなかイラスト化の順番が回ってこないので、可愛いの想像してね。

シエラがピックアップされる時も、いずれは来ますので……!


さてアミが遅刻していますが、少し過去の回想に入ります。


学園都市エクスに来た日で、第二部序章の「プロローグ1:セパレーション」で端折られた場面になります。

序章で出せなかった理由は、次回分かります。お楽しみに~☆

先が気になるという人は、いいねや☆☆☆☆で応援してね!



転生/転移者・攻略対象等まとめ

【ななダン】乙女ゲーム グランルクセリア王国 

・ヒロイン:リク

・悪役令嬢:ミラフェイナ 光属性に目覚める

・攻略対象1:コルネリウス王子 ※フリました

・攻略対象2:レンブラント 護衛の神殿騎士

・攻略対象3:アウグスト 騎士

・攻略対象4:クライド 魔術師

・攻略対象5:マティアス王子 ※丁重にお断り

・攻略対象6:レナード 聖騎士見習い レンブラントの弟 騎士科聖騎士コース


・隠しキャラその3:ローゼンベルグ公爵 ♥一歩リード


・モブ王女:エクリュア グランルクセリアの次期女王



【あるネット小説(作品名未公開)】グランルクセリア王国

・モブ?:シエラ 伯爵令嬢 錬金科





挿絵(By みてみん)










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