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悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第三章 聖女認定式

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 王宮。

 『光の乙女』に貸し与えられた客室は、国賓などを招いた際に使われる迎賓館の一室にあった。

 リクたちが身なりを整えられた後、タイミングよく訪れた者がいた。


「あなたが『光の乙女』か?」


 突然現れて客間の出入口を塞いでいる男に、リクは真正面から睨まれていた。


 流れるような銀髪に、翳りのある黒灰色の瞳。白い肌の相貌は均整の取れた美丈夫で、帯刀した立ち姿にはぴんと弓の弦を張り詰めたような強さとしなやかさを感じられた。


「うわぁ……。あの人、めちゃくちゃキラキラしてるね。ハリウッド俳優みたい。あっ、昨日の王子様とは違うタイプっていうか」


「ハリウッド!? 何て懐かしい単語を……。そ、そうですわ。あの方は名門ラッハ家の長男ですわ」

「有名なの?」

「もちろんですわ! 代々、聖騎士を排出している家系で……」

「うんうん」

「それに、『ななダン』の攻略対象ですわよ!」

「はわぁー!」


 こそこそと外野がうるさい。

 リクの後ろでアミとミラフェイナが目を輝かせてこちらを眺めていたが、リクを助ける気はないようだ。


 はあ、とリクは溜息を吐いて、


「どちら様?」


 と尋ねた。


 男はしばらくジッとリクの顔を見つめてから、ようやく気付いたかのように言葉を発した。


「……ああ、まだ名乗っていなかったのか。これは失礼した。私はレンブラント・ラッハ。神殿より聖女を護衛するよう命じられて来た」


 そう言って名乗った彼の身に纏った白い外套は、神殿に属する騎士の証であった。


「あなたを認定式へお連れする」

「認定式?」


 リクは片眉を吊り上げて言葉を返した。


「何も聞いていないのか?」


 リクたちが聞いていたのは、午後からの式典の話だけだ。リクは振り返ってミラフェイナを見た。


「何のこと?」

「も、申し訳ありませんリク様!」


 ミラフェイナが慌てて頭を下げた。






 式典の準備で大わらわだったために説明がもれていたのは、聖女認定式のことだった。

 その後、リクたちはレンブラントに連れられて王宮敷地内に併設されている礼拝堂に案内された。


「認定式……つまり試験ね」


「神聖星教会から聖女だと認めてもらうための形式的なものですわ。リク様は鑑定で『光の乙女』であることは間違いないのですし、心配いりませんわ」


 ひらひらした純白のドレスを着せられてげんなりしているリクに、公爵令嬢ミラフェイナが元気付けるように言う。


 二人の後ろに付いて行きながら、白い魔術師姿のアミが遠慮がちに言った。


「それって私、部外者なんじゃ……」

「あなたの行かないところへ、私だけが行くことはないわ」


 急にリクがキリッとした表情で断言した。


「……このように仰っていますので」

「何でぇぇ」


 アミが、だばーっと滝の涙を流した。旅は道連れにしすぎである。






「『光の乙女』をお連れした」

「入れ」


 礼拝堂に到着すると、レンブラントは入口で待機した。

 堂内には宰相シリングスと、隆々とした筋肉と長い髪を持つ背の高い騎士がいた。

 リクたちの姿を認めると、宰相が挨拶をした。


「これはリク殿。……とアミ殿もいたのか」

「おはようございます」


 アミが先に挨拶を返したが、宰相がそれに返す気配はない。


「さっそくで悪いが、こちらは騎士団長のクレイシンハ公爵だ。覚えておいて損のない人物だ」

「アダム・クレイシンハと申す。お見知りおきを」


 騎士団長が右手を差し出したが、リクは宰相に倣って無視をした。


「あの子を無視するなら、私も話すことないけど」


 辛辣なリクの言葉に、宰相たちは色を失って取り繕い始めた。


「まさか、そんなつもりは。おはようアミ殿」

「アミ殿もご機嫌いかがかな!?」


 取って付けたようなあからさまな挨拶だったが、「……いいわ」とリクは騎士団長の手を握り返した。


「リ、リク……!」


 後ろでアミとミラフェイナが一連の態度に対し、目を丸くしている。彼女たちの言いたいことは分かっていたので、リクは敢えて何も言わなかった。


 騎士団長の顔をリクは覚えていた。初めて召喚された時、儀式場にいたはずだ。


「やはりお美しい。不思議な異界の衣服も神秘的だったが、ドレス姿もとてもお似合いで見違えた」

「……?」


 訝る様子を見せながらリクが背の高い騎士団長を見上げると、彼は照れたように笑った。


「これは不躾だったか。同じ年頃の息子がいてね。よければ今度、紹介させて頂きたい」

「そういうことなら、特にご紹介頂かなくて結構です」


 リクは、きっぱりと拒絶する。


「……ははっ。これは参ったな。殿下もフラれる訳だ」


 潔く白旗を揚げ、騎士団長はカラカラと笑った。

 騎士団長とリクのやり取りを眺めていた宰相シリングスが溜息を吐くのを、アミは見た。


「はぁ……。一体どうすればリク殿のお心を掴めるのやら……」

「宰相さんも大変なんだね……」


 『光の乙女』を国に留めておくのも重要な国策のひとつなのだろう。宰相の密かな苦労を目の当たりにして、アミは同情の念を禁じ得なかった。


「……私は聖女の認定式というのを受けろと言われてきたのだけれど」


 リクが尋ねると、シリングスが答えた。


「我々は立会人だ。本来ならコルネリウス殿下がこの場にいらっしゃるはずだったが……」


 宰相はチラリと公爵令嬢の方を一瞥し、目が合いそうになるとゴホンと咳払いして誤魔化した。


「まだ体調が」

「はぁ」


 生返事をして、第一王子にはあくまで興味のなさを貫くリクだった。








登場人物が多いので、物語内作品や勢力ごとにまとめます


転生/転移者・攻略対象等まとめ

【ななダン】

・ヒロイン:リク

・悪役令嬢:ミラフェイナ

・攻略対象1:コルネリウス王子 ※フリました

・攻略対象2:レンブラント ←New!


【作品名未公開】※はじまり語りに出てます

・ヒロイン:ユレナ

・悪役令嬢:ディアドラ

・攻略対象1:クリスティン王子


【不明】

・???:アミ ※作品名も役柄も不明



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― 新着の感想 ―
[良い点] 聖女認定式……。どんなテストをさせられるのか気になりますね。
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