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悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第二部 第五章 アム学Days ―魔法魔術科Side―
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「次は私ね」


 今度はスピリニラが鑑定魔導具の前へ移動した。


 スピリニラが水晶玉に触れると、数秒置いてから、ふわりと風が吹いて彼女自身の黒い髪を揺らした。


 やがて浮かび上がった円形の光は、八割が銀色だった。残り一割が金色と白色だった。

 銀色は癒やしの聖属性であり、金色は強力な退魔性質である上位の聖属性を表す。


 しかし、水晶玉の中にレベルは表示されなかった。補助教員のミセス・ベルタが首を(ひね)る。


「あら? おかしいですね」

「先生、私は……」


 スピリニラが重い口を開こうとしたが、ささっと資料を見たミセス・ベルタが遅れて納得した。


「ああ、そういうことですか。この魔導具は魔力値を測る機能はありますが、神霊力は数値化できません。従って、神霊力がレベルに関係する人はレベルの鑑定ができないようですね。元は魔法魔術科の生徒用に造ってもらったので仕方がありませんが……。ともかく、属性は分かったのでよしとしましょう」


 スピリニラのレベルが表示されないのは、彼女が神霊力を持っているからだということだった。


 戻って来たスピリニラに、アミが尋ねた。


「スピリニラちゃん、聖属性メインなんだね。……神学科じゃなくてよかったの?」

「ええ。どのみち私は、自分では神霊力を使えないから」

「そ、そうなの……?」


 若干心配そうに、アミとミラフェイナが顔を見合わせた。スピリニラは少し笑って、言った。


「気にしないで。大した理由じゃないから。アミさんたちには、そのうちお話しするわね」

「う……うん? 分かった。話したくなったら、言ってね」

「もちろんよ」


 聖属性と神霊力を持つ者が神学科を辞めたというのは、何か特殊な事情がありそうだ。

 いずれにしろ、本人が心配するような理由ではないと言ったため、ひとまずアミは安堵した。


「――先、行きますね」


 アミたちが話をしていたので、もうひとりの女子生徒が先に鑑定魔導具の前へ移動した。

 名前は、コートニー・ガウディクスという。青みがかった灰色の髪を二つ結びにしている。

 コートニーが水晶玉に触れると、浮かび上がった円形の光は青色一色だった。

 青い光は、水属性だ。水晶玉の中の数字は、『Lv.18』となっていた。


「単一属性は、珍しくありませんよ。レベルはこれから伸ばしていきましょう」


 補助教員が励ますように言うと、コートニーは無言で頷いて席へ戻って行った。

 最後は、アミの番となった。


「うぅ……。緊張する……」


 アミが恐る恐る水晶玉に触れるのを見て、クラスメートたちがくすくすと笑った。誰かが、「結果は変わらないのにね」と言った。確かにその通りだった。


 ミセス・ベルタは魔力を流して下さいと言っていたが、どうやって物に魔力を通すのかアミは感覚がよく分からなかった。通常のスキルを使う時とは、勝手が違うようだ。


 そんな心配とは裏腹に、鑑定結果の円形光はすぐに現れた。


「……よかった。できてた……」


 現れたのは、灰色の真円だった。水晶玉の中の数字は、『Lv.9』と表示された。


 リクと違って、アミは半年前のドラゴンゾンビ討伐後からレベルが上がっていない。リクやミラフェイナと一緒に戦闘訓練をしたこともあるが、アミはレベルの上がりにくさが顕著(けんちょ)であった。同じことをしてリクたちがレベルを上げても、アミは全く上がることなく置いてけぼりだった。


 どっ――と、クラス中から笑いが巻き起こった。

 皆が皆、腹を抱えて爆笑しだしたのだ。


「な……何それ~。無属性って……。ありえな~い」

「たったのレベル9!? 初等部レベルじゃないか!」

「〝異界魔術師〟ってたいそうな肩書きは、ポンコツっていう意味だったの?」


 誰かが述べた感想に、また輪を掛けて笑いが湧き上がる。

 教室の後部席を陣取っている『ヒロイン』らしき生徒たちが言った。


「なぁ~んだ。ニム期待の新しい子のひとりだっていうから、どんなチート持ちかと思えば……。ただのへっぽこじゃな~い」


「レイン、それ言っちゃいけないやつ。可哀想よぉ」

「…………っ」


 実際には同情など微塵(みじん)もしていなさそうな彼女たちの方を、ミラフェイナがきつく睨み返した。


 しかし今度は、レインと呼ばれたヒロインがべーっと舌を出して返してきた。あたかも、嘲笑うことが正当であるかのように。


 クラスメートたちの笑いさざめくなか、ミラフェイナは唇を噛む。

 危惧(きぐ)していたことが、現実となってしまった。

 リクと離れたアミは、必ずどこかで軽んじられると。


「えっと……」


 クラス中の笑いが収まらないなか、アミは困惑したようにきょろきょろするばかりだった。


 アミはグランルクセリア王国ですでに鑑定士による鑑定を受けているため、属性がないことは分かっていた。しかし、これほど笑われることになるとは思っていなかった。


 グランルクセリアでもアミは冷遇されかけたが、あの時は『聖女の器』であるリクが(かば)ってくれた。だから今までは、こんな嘲笑を受けずに済んでいたのかもしれない。


 予想通りの、落ちこぼれ街道がスタートしたようだった。


「うぅ……」


 がっくりと肩を落としたアミを、マスター・アスターが静かに見つめていた。






 放課後、アミたちのところへ二人の女子生徒がやって来た。


 ひとりは美しい蒼銀の髪をした儚げな印象の令嬢で、もうひとりは淡いブロンドの巻き髪をした憂い顔の令嬢だった。彼女たちは周囲に気を配りながら接触してきた。


 最初は警戒したミラフェイナが、アミを守るように立ちはだかった。まるでリクの真似をするように。


「……何のご用ですの?」

「突然、ごめんなさいね」

「驚かせてしまったなら、謝るわ」


 二人は低姿勢だった。何か話があるようだ。アミは受け入れて答えた。


「いいよ。私に用なんだよね?」

「ええ……でも、他の方は席を外して頂けると……」


 銀髪の方が、ちらりと一緒にいたスピリニラを見て言った。他人には聞かれたくない話らしい。となれば、巻き込む訳にもいかない。


 大丈夫、の意味を込めてアミが頷くと、スピリニラも頷いて言った。


「分かったわ。じゃあ、私は先に帰るわね」


 軽く手を振って、スピリニラはその場を離れた。

 スピリニラを見送った後、ミラフェイナが毅然として言った。


「申し訳ありませんけれど、わたくしはアミ様から離れる訳には参りませんわ」


 牽制したつもりだったが、二人は当然のことと頷いた。


「ええ、あなたは問題ないですわ。ローゼンベルグ公女」

「私たち、悪役令嬢に味方してくれるという『ヒロイン』の話を聞いたの」


 二人はどこか切羽詰まっているような、焦燥感があった。


 それゆえ二人が口にした言葉に気付くのに、ミラフェイナは数秒掛かった。アミは呑気に首を傾げている。


「それって、リクのこと……?」


 アミがきょとんと首を傾げると、その反応に戸惑った二人の女子生徒たちが顔を見合わせた。


「あなたも、『ヒロイン』だと聞いたのだけど……」

「えっ、私!?」


 今度はアミがぎょっとして自分を指した。


「ちょ、ちょっと待って下さい。……今、『悪役令嬢』と『ヒロイン』と仰いまして?」


 ミラフェイナは驚いて確認を取る。二人は目配せして頷き合い、本題に入った。


「はい。お察しの通り、私たちも転生者なのです」

「お願い、助けてほしいの。私たち、このままじゃ『ヒロイン』に殺される……!」


 あまりに物騒な単語に、今度はアミたちが顔を見合わせた。













また新たな転生者がアミたちに接触してきました。

続きが気になる方は、いいね評価等よろしくお願いします。


キャラまとめは、ちょこちょこ情報を追加していきます。


転生/転移者・攻略対象等まとめ

【作品名不詳】 ←New!

・ヒロイン:レイン ←New!

・悪役令嬢:???

・攻略対象:???



転生者でない普通の登場人物でわりと重要な人をまとめます

【非転生者】

・ナユタ アシュトーリアの王女でアム学の総生徒会長。神殿サイドの味方

・スピリニラ アシュトーリアの伯爵令嬢 元神学科 神霊力持ち ←New!※情報追加

・コートニー 魔法魔術科転入生 水属性 ←New!※情報追加



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