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悪役令嬢VS黒ヒロインVSインクイジター【第二部連載中!】  作者: まつり369
第二部 第四章 アム学Days ―神学科Side―

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 授業が始まると、神学科では地球人であるリク・イチジョウの知らないアークヴァルトの神話や聖属性魔法の使い方や理論などの講義が目白押しだった。


 元の世界でも成績が良い方だったリクでも、ついて行くのに一苦労だった。


 しかし、実技の方は問題なかった。最大レベルであるLv.5の光魔法や聖魔法に加え、回復や浄化など聖女に必要なスキルは満遍(まんべん)なく(そろ)っていたため、あのマリアーネ・チェスターと比べられても遜色なかった。


 インクイジターによる大量逮捕で多くの聖女ヒロインが退学または抹消扱いになったとはいえ、まだリクやマリアーネのような才能ある聖女が残っていることを担任のプラサード司祭は喜んでいた。


 転入生や編入生たちは一種の洗礼を受けるというが、おかげでリクを(あなど)る者はいなかった。リクには、魔の森開拓という大きな実績があることも功を奏したのかもしれない。


 それよりも、他の問題があるようだった。




 教会区、神学科高等部校舎。

 朝の教室。

 ある人物の足音が近付くと、そわそわしていたクラスメートが一斉に教室のドアに注目した。


「皆様、おはようございます」


 登場したのは、目の醒めるような美貌の女子生徒――カレン・スィードだった。


 鮮やかな躑躅(つつじ)色の髪は歩くたびに揺れて(つや)めき、透き通るような(みどり)の瞳には溜息がもれそうになる。雪を(あざむ)く清らかな肌と美しい曲線を描く肢体。そして光り輝くような微笑みは、女神のように老若男女問わず誰もを惹きつけるものだった。


「おっ、おはようございますスィード嬢!」

「はぁ……。カレン様、今日もお美しいですわぁ」

「鞄をどうぞ、カレン様!」

「カレン様、おはようございます」


 ある者は教室の出入り口まで移動して出迎えの挨拶をし、ある者は使用人のように鞄を受け取ろうとした。そしてある者は、挨拶の後に当然のようにカレンに(こうべ)を垂れた。


 そんな彼らに恐縮したカレンは、自分の鞄を死守したうえでクラスメートたちを押しとどめて言う。


「ええと……。私は貴族でも聖者でもありませんから、そのように対応されると困りますのだ……」


「何を仰います! スィード大神官様のお身内であり、『星河の巫女』様でいらっしゃるカレン様を無下に扱うことなどできません!」


「父や兄と、私は違います。それに『星河』のお役目を頂いていますけれど、私はただの巫女と変わりませんのだ……です」


 カレンは笑顔で対応しようとしているが、途惑うあまり『星河の巫女』モードの敬語が崩れがちであった。しかしそんなことは、彼女を慕う者たちには何の影響もないようだった。


 彼女は、始業式の日のホームルームにはいなかった。


 その後、インクイジターが映っていた学園長室にいたことから、始めからインクイジターと共に逮捕劇の裏方にいたのだろう。


「……全く、気に入らないわね」


 気が付くと、リクの座っている席の横にマリアーネ・チェスターが来ていた。


「何のこと?」


 リクが首を傾げると、マリアーネは明らかに青筋を立て、カレンを取り囲むクラスメートたちを密かに指し示して小声で言った。


「あの女のことよ! ヒロインの私たちより目立つなんて、何様のつもりかしら!?」


 マリアーネは当初からカレンを目の敵にしていた。マリアーネも可愛らしい美少女ではあるが、カレンの神々しいまでの美しさには及ばない。マリアーネにもファンはいるが、彼らは同時にカレンも信奉していた。


「何様……というなら、巫女様……?」


 リクの隣に座っているイングリッド・リヒタールが、何の気なしに言った。


「彼女のこと、何か知っているの?」


 リクが尋ねると、イングリッドは人差し指を顎に当ててカレンを取り囲む一団を見ながら言った。


「知っているも何も、有名ですよ。神聖星教会の三人の大神官のひとり、スィード大神官様をご存知ですか? カレンさんのお父様が少し前に退任された先代の大神官様で、お兄様がそのあとを継がれて当代のスィード大神官様になられたんです。それでご本人も巫女の長に立たれていて、神霊力も高いと聞いています。元々は神殿の学校にいらっしゃったのですが、今は特別にこの学園の神学科においでになっていると聞いていますよ」


「それはすごいサラブレッドだな」


 リクが感心して言うと、マリアーネは噛みつくように反論した。


「それがどうしたって言うのよ! 私と、あなたは聖女なのよ? どうして、たかが巫女に負けなきゃならないのよ!?」


 リクは肩を竦め、下らないと首を振った。


「チェスター令嬢。私とあなたは異世界の神にスキルだけ与えられた、いわば見かけだけの聖女に近い。……でも、彼女は()()のように見える」


「はぁ!? ホンモノって何よ? 私だって、本物の『ヒロイン』よ!」


 何が見かけだけよ、とマリアーネが声を荒げた。何事かと、クラスメートたちが一瞬こちらを見た。


 マリアーネはすぐに切り替えて、「ごめんなさ~い」と笑顔で手を振った。『ヒロイン』特有の外面の良さと、切り替えの早さである。クラスメートたちはまた、カレンの方へ視線を戻した。


 リクは溜息を吐いて言った。


「……私もよくは知らない。けど本物の聖者(せいじゃ)というのは……たとえば信仰心があって、きちんと修行をしていたり、社会に奉仕したりお役目を果たしている人のことを言うんじゃないのか?」


 リクはグランルクセリアで聖女認定をインクイジターに邪魔された。その時の言い分はまだ実績が足りないということだったが、確かにスキルを持っているだけで聖者と認められたら苦労はない。


 おそらく普通は純粋な心であったり、信仰や修行がなければゲームの『ヒロイン』が持っているような奇跡的な聖女スキルは発現しないのだろう。リクたち『ヒロイン』は、それを異世界の神によって特別に与えられたチートにすぎないのだ。


 マリアーネが原作通り聖女だと認められているのも、おそらく異世界の神に与えられたチートに含まれるのだろう。


 しかし、マリアーネには理解できないようだ。


「お役目くらい、私だって果たしてるわよ! 聖女スキルを上げるために、毎週の魔獣退治のイベントをこなすの大変なんだから!」


「たぶん、そういうことじゃない……」


「何よ。あなた、あの女の味方なの!? あの子は、インクイジターの仲間なのよ!?」


「それは分かっている。そうじゃなくて、この世界は現実なんだ。ゲームや原作にとらわれずに、『ヒロイン』だからとかじゃなく広い視野で常識的に考えた方がいい」


「私が常識ないって言いたいわけ!?」


 マリアーネが何か言われるたびにヒートアップするので、2人の会話は激化する一方だった。












新章開始です。

本当はアミたちの魔法魔術科と同時進行で交互に描こうとしたのですが、

分量が増えて一章に収まりきらなくなったので、分けました。


アミたちの様子は次章までお待ち下さい。


↓おさらいのため、貼っときます。


インクイジターサイドまとめ

★インクイジター:ラビ

裁判長:リネン 知識の神の地上代行者。どこかの山奥に住むショタ


お手伝い出張

・星河の巫女:カレン 17才

・心泉の巫女:シプリス 9才


お留守番組 ※インクイジター第0話に出てます

・責任者:大神官ツクミト

・混沌の巫女:ヒルデナーダ 12才

・大地の巫女:ナディア 8才

・無限の巫女:セミュラミデ 11才

・神門の巫女:キスカ 10才


その他の巫覡

・調和の覡:???

・道標の巫女:メルア 5才


五大巫女①~⑤ ※能力順

①ヒルデナーダ

②???

③セミュラミデ

④???

⑤シプリス


※『星河』を持つカレンは①より上です




↓今回、セミュラミデはいませんが、カレンが美人なので貼りますね。

そんじょそこらのヒロインでは勝てませんよ~笑


挿絵(By みてみん)







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