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帰り道 3
あのお兄ちゃんのお葬式は、薄曇り
幼い私も参列していた
兄を亡くしたお姉ちゃんは、泣いていた
夏休みは、始まったばかり
あのお兄ちゃんは、明け方の森に
虫を取りに出かけたそうだ
(誰よりも早く)
そして、夜と明け方の間に走る電車に
昔の、遮断機のない線路を横切り轢かれた
「お葬式の後は、来た道と同じ道を通ってはダメなのよ」
母は、そう言うと
公園の中を歩き出した
公園の遊具に、亡くなった男の子の影が見える様な気がする
私たちは、これからも歳をとっていくのに
あの子が、あの子だけが
亡くなったその日の姿のまま、そのままでいるのか
夏の終わりに似合わない風が吹く
目を閉じると、あの子が
真っ黒に日焼けした顔に悪戯っ子の笑みを浮かべて
その小さい体で全力で走って来るのが分かる
しかし、私に気づく事なく走り去って行く
ただただ、元気いっぱいに
公園を走り抜けていく
そして私は、夏が怖い