メールが来ない
私には推しがいる。その推しはあるソシャゲのキャラクターであり、とにかく顔がいい男なのだ。いや、顔がいいだけではない、声もいいし服も好きだし過去もそれに伴う因縁もライバルキャラとの確執から憧れの人との関係性まで……ッ! とにかく、この余白は推しを語り尽くすには狭すぎる……ってやつだ。私は推しについてなら多分壁に向かって三時間くらいは話せると思う。いや、五時間くらい話せる。
最初期から推しを推している私は限定含む推しを全部完凸するだけでなく、勿論グッズも関係者以外手に入れられないような物以外は全て揃えている。アクスタや推しの概念グッズやCDを集めて作った祭壇はもう一室を埋め尽くさんとしている程である。
そんな、自他(この場合の他は界隈の相互フォロワーさん)共に認める推しのトップヲタの一人である私であるが、今月に入り、とある試練が私を襲った。
それは、推しの所属するユニット単独でのリアルライブである。
しかも今回のユニット毎のライブ形式ではユニットのメンバーの一人一人がソロのオリジナル曲を発表するのである。他のユニットではそうだったのでこれはほぼ間違いない。
ライブが円盤化するのは何ヶ月も後、ネット配信も無し、というかまずその場に居ないと意味が無い。だから私にはそこに行く以外の選択肢がないのである。だが、それが難しくなってきているのだ。以前まで推しの所属するユニットはコンテンツ全体の中で不人気扱いされていたユニットだったのだが、半年前の二周年イベとアニメでの活躍で一気にニワカファンが増えたのである。つまり、それはライブのチケットの当選確率が下がるということと同義なのである。
……確かにファンが増えたことは嬉しいんですよ。でも推し始めて半年のニワカが初のユニットのソロライブに行けて私達みたいな古参が行けないってことがありそうなのってどうなのともおもうわけで。半年ROMれっていうか自重しろっていうか。誰がここまで推しのユニットを支え続けてきたのかニワカの人達は分かってないと思うんですよね。推しのユニットが今までの軌跡をなぞってくれてるの見てその人達は本当に感動できるの? ってカンジ。あー、推してる時間か愛の総量で当選確率が変わればいいのに。そしたら私なんか三枚くらい当たって相互さんに配れちゃいますよ(笑)
応募完了後、倍率を見ながら裏垢でひっそりと苛立ちを混ぜて呟いた2つの140文字、それはなんでか表に顔を出して、いっそ面白いくらいに燃えた。
慌てて謝罪文を出して裏垢も消したけど、もう収集はつかなかった。
フォロワーは100人単位でブロ解するか普通にフォロー外すかで消えていったし、見えない引リツもツイート毎に10件以上ついていた。
結局皆同じことしてるのに、なんで私だけ。そうも思ったけど運が悪かっただけだと割り切ることにした。ファンコミュニティなんてどうでもよくって私には推しがいればそれでいいのだ。そう思いながら再度ツイッターを閉じて、またツイッターを開いた。止まらない通知。先程閉じた筈のDMに何かが来てないか気になってしまう。
フォロワーは今何をしている? 私のことをどう思ってる? どうツイートしてる?
TLを見ればそこにあったのはいつも通り ──── 少し違うとすればツリー上に表示されないツイートが何件もある ──── の学級会で、どこか安心した自分がいたりもした。 なんだ、トップオタが燃えたとしても何にも変わらないのか。どこか不満に思った自分がいたりもした。
そうしてあっという間に数ヶ月が経った。
どうやらフォロワーと共に私の推しへの愛も減ってしまったようだった。新グッズを買う度に投稿してきた祭壇の写真ももう一ヶ月は挙げてないし、まずグッズ自体買えていない。ゲームへのログインすら億劫になって、ついにリリース当初から続いていた連続ログインまで切ってしまった。大切な何かが切れたような感じがして翌日はずっと気分が沈んだままだった。推しのユニットのイベントも期限ギリギリまで溜め込んで、クリアを手っ取り早くするためにストーリーをスキップした時、どうしようもなく推しに対して私は冷めてしまったのだとわかった。
フォロワーが減り、炎上もあって誰もいいねすらつけてくれなくなったツイッターをふと見ると、まだ残っていた相互フォロワーが当選通知第一弾に当たったと喜んでいた。その投稿にはいいねが100件以上ついていて、リプライも沢山ついていて、ひどくそれが羨ましかった。
もうダメかもしれないと呟いた別のフォロワーにもリプライが沢山ついていて、それもまた羨ましかった。
相互のなんでもない推しについてのツイートにいいねが何個もついているのが羨ましかった。
試しにツイートをしてみて、私の投稿に一つもいいねはつかなかった。
……もっとなにか特別なツイートをしなければ。
……私の元に当落通知メールはまだ来ない。




