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第4話 ミコト村
ミコト村は自然豊かで、牧歌的な村だった。
ヒツジや牛がそこら辺を歩き、農場や菜園が村の外周に広がっている。
村の内部には木々や花々がたくさんあり、町の中には綺麗な川がいくつもある。
町を歩くと、ミコト村の村人たちは、よそ者であるミレイに声を気安くかけてきた。
「さいきんやってきた者かね」
「何か不便があったら遠慮なく言うんだよ」
記憶がないと言えば、体の心配をし、行く当てがないといえば、寝床の心配をした。
ミレイはそれに対してどんな反応を返せば良いのか分からなかった。
久しぶりに人と喋ったかのような感覚を抱いていた。
それは前世の記憶に関係するのかもしれない。
記憶を失う前のミレイは、孤独だったのかもしれなかった。
けれど、分かるのは。
目の前にある穏やかさが嫌ではなかったという事だ。