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16 大盗賊フェイラル

 どうする。ウルメルを人質に取られた以上迂闊に動けないぞ。


「しっかりしろウルメル! 目を覚ませ!」


「無駄だよ。彼女の意識は今ボクが完全に掌握している。例え肉親の呼びかけだろうと魅了は解けない。さあそこをどきたまえ」


 僅かな可能性に期待して呼びかけてみたがウルメルの瞳は虚ろなままで正気を取り戻したようには見えなかった。


「……おい」


 すると俺の背後に立ったギドーが小声で耳打ちしてくる。


「あの娘を助けたければ俺たちを信じろ」


「どうするつもりだ」


「お前は何もしなくていい。────行くぞボンズ!」


「キヒヒッ、あいよォ!」


 刹那、槍を構えたギドーが飛び出してゆき、猫面の男の放った銃弾がウルメルの腹を貫いた。

 背中から倒れゆくウルメルの隣を風のように通り抜けたギドーがフェイさんの心臓目掛けて漆黒の槍を突き出した。


鋼蛇の枷(エウルシャダート)!」


 突き出された槍がぐにゃりと形を変え蛇のようにしなってフェイさんの手足に絡みつく。

 身動きを封じられたフェイさんは勢いそのまま突っ込んだギドーの猛烈なタックルで押し倒された。

 時間にして三秒にも満たない一瞬の決着だった。


「ウルメルっ!」


 慌ててウルメルのもとへ駆け寄ると、撃たれたはずの腹にはどこにも傷はなく気持ちよさそうにヨダレを垂らして眠っているだけだった。


「眠らせただけだ。意識を失っちまえば操ることはできねぇからな」


 手の中でリボルバーをくるくる回し、フェイさんに照準を定めた猫面の男ボンズは再びなんのためらいもなく引き金を引いた。


「へぁん……」


 額を貫かれたフェイさんは間抜けな声を出したかと思えば次の瞬間にはもうグースカ眠りこけていた。


「天下の大泥棒もこれでおしまいだn」


 ギドーが言いかけた瞬間、『ズドンッ!』と何かが天井を突き破り、降り注いだ土煙で二人の姿が覆い隠されてしまった。


「なっさけねーなぁ、起きろ間抜け。いつまでも寝てんじゃねーぞコラ!」


 天井を貫き現れた巨大なハサミから滑り降りた細身の影がフェイさんを拾い上げる。

 群青色の甲殻と体毛に覆われたその生物に俺は見覚えがあった。


「ズゥ!? なんでこんなところに!?」


「ちぃッ! やっぱり仲間がいやがったか!」


 ギドーが魔法で土煙を吹き飛ばすと襲撃者の姿があらわになった。

 鳥の羽飾りを頭に着けたインディアン風の民族衣装を纏った背の高い金髪の女だ。


「げっ、顔見られたじゃねーかクソが。テメーがモタモタしてっからだぞアホ!」


「ぐっ……。大声で喚かないでくれないか。頭に響く」


 などと漫才しつつもズゥのハサミに掴まった二人の身体が上へと一気に引き上げられていく。

 ボンズが魔弾を連射して逃げる二人を狙い撃つがズゥの巨体を盾にしつつ猿のような身のこなしで上へと逃げていく二人には当たらない。


「って、そうだキューブ!?」


 怒涛の展開に忘れそうになっていたが、アレを盗られないためにここまできたんだった。


「逃がすかぁぁぁッ!」


 加速をつけて巨大なハサミにジャンプで取りついた俺はアクセルを回してズゥの腕を垂直に駆け上がり機銃で盗人二人の動きをけん制する。


「うわっちゃちゃちゃ!? 危っぶねぇ!」


「やっぱり一番警戒すべきは君だったようだねハヤト!」


 フェイさんの円月輪が俺を斬り裂こうと左右から迫る。

 俺は車体を傾けズゥの腕を螺旋を描きながら駆け上がり円月輪の連撃を躱し、すり抜けざまにミサイルの発射スイッチを押した。

 炎の尾を引いてミサイルが空を駆けズゥのぶ厚い甲殻をブチ抜き、天井付近でちぎれた腕がゆっくりと重力に引かれて落下を始める。


「しまったキューブが!?」


「なんだと!? 死んでも奪われんじゃねーぞ!」


 爆発の衝撃でキューブを取り落としたフェイさんが円月輪を掴んで滑空し、落ちていくキューブに手を伸ばす。

 崩れ落ちる腕からジャンプで壁に飛び移った俺はドリフトターンで旋回し、カグナの炎でキューブを遠くへ弾き飛ばした。

 フェイさんの手をすり抜けたキューブは勢いそのまま地上へ向け落下してゆき────。


 ぱくっ!


 通路から飛び出してきたピコの口に転がり込んだ。


「いいぞピコ! そのままウルメルを連れて逃げろ!」


「ぶもっ!」


 ゴツイ見た目にそぐわぬ素早さでカサカサと駆けたピコは、眠りこけたままのウルメルを咥えて持ち上げ背中の座席に押し込むと来た道を風のように引き返していく。


「あーっ!? なんてことを! おいジェラ、あのモルグを止めろ!」


「この距離で届くわけねぇだろ! さっきの爆発でズゥの腕が千切れて契約もパァだ! 仕切り直すぞ!」


「チッ! キューブはまた奪いにくる! そのときまで失くすんじゃないぞハヤト!」


 捨て台詞を残して円月輪に掴まった二人が天井に空いた穴を抜けて逃げていくと、本格的に遺跡の崩壊が始まった。


「おいボンズ! 俺たちも逃げるぞ!」


「ったく、とんだ厄日だぜ今日は!」


 人間とは思えない速度で逃げていくギドーとボンズの仮面マント二人組の後を追いかけ、崩れる天井を右へ左へ躱しながら俺は遺跡から脱出した。


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