表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ダブり集

姉ちゃん

作者: 神村 律子

長編モノの実験作です。その点、よしなに。

 僕の名前は磐神武彦。高校二年。自分ではごく平凡な男と思ってる。


 しかし、僕の人生は生まれた時から波乱万丈だった。




 僕は夢を見ていた。


 目の前には大好物のスイカ。


 舌なめずりしてかぶりつこうとした。


 んんん?


 何故か口が横に広がる。


 凄い力で引っ張られてる。


 スイカにかぶりつくことができないまま、僕は目を覚ました。




「おお、やっとお目覚めか、武彦」


 目を開けるとそこには何故か姉がいた。


 美人で頭が良くて社交性抜群の姉は、外面はいいが、僕に対しては「傍若無人」だ。


 え? 何で? どういうこと? 何が起こってるの?


「へえひゃん、はひひへんほ?(姉ちゃん、何してんの?)」


 スイカにかぶりつけなかった理由がわかった。姉が僕の口を横に引っ張って遊んでいたのだ。


「もう少し目を覚まさなかったら、鼻を洗濯ばさみで摘もうと思ってたのに、残念」


 姉はガハハと大口を開けて笑い、ベッドから降りた。


 僕は口が伸びてしまったのではないかと思って確認した。どうやら無事のようだ。


「酷いな、もう。何なんだよ」


「愛する弟を美しい姉が起こしてあげたのさ。感謝しな」


 僕に対しては乱暴な言葉遣い。彼に密告したいくらいだが、後の事を考えると恐ろしくて出来ない。


「早く朝飯食べちゃいなよ。遅刻だぞ」


 姉は妙に可愛い声で言うと、部屋を出て行った。




 僕の家族は母と姉。


 父は僕が3歳の時に交通事故で死んでしまった。


 母は悲しむ間もなく、仕事を探して働き始めた。


 当時6歳の姉と僕は、その日から逞しく生きる事を運命づけられた。




 姉は元々過激で暴力的だったが、それが30%増量された。


 泣き虫だった僕は、たびたび姉に殴られた。


 そんな姉でも嫌いにならなかったのは、姉が僕を守ってくれている事を知っていたからだ。


 近所の悪ガキ、凶暴な犬、ずるい猫。


 全部姉が退けてくれた。


「姉ちゃんは強い」


 それが幼少の頃の僕の姉に対するイメージだった。


 そしてそのイメージは今でも変わらない。


 いや、進化した。


「姉ちゃんは更に強くなった」


 最近はそう思う。




「何、武彦? 何か用?」


 食事をしている姉を見ていたら、気づかれた。


「な、何でもないよ」


 僕は慌てて視線を逸らせた。すると姉はニヤッとして、


「ダメよん、武彦。いくら姉ちゃんが美しくても、私達は姉弟きょうだいなの。好きになってはダ〜メ」


「……」


 僕は姉の途方もない返しに何も言わず、食事をした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 興味深い設定ですね。 楽しみになってきました。 とりあえず姉の「強さ」ってのがどんな感じなのか気になります。 次作も楽しみにしています。
2011/02/21 21:42 退会済み
管理
[一言] なかなか魅力的な女性だと思います。 これは女性から見た、ある種の理想像。あの投手の金メダリスト上野さんのような。 この姉と弟が、これからどうなるのか楽しみですね。
[一言] 面白い! つ、続きが読みたい! これ連載にしましょ。 ね、ね、お願い!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ