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第8話

「以外にも冷たい男でしたのね」

 大広間を出たところに、なぜか王女が立っていた。

 親衛隊になったので、高貴な方々の顔も見られるようになった。

 俺は、どう対処するのがバットエンド回避に最適か咄嗟に考えた。俺は攻略対象のシオンである。シオンルートとコレットルートが絡むとほぼバットエンドへのフラグが立ちまくる。シオンとコレットは絡まないのが安全なのは確かだ。

 で、王女とコレットが絡んだ場合。コレットと絡んだ令嬢が破滅エンドを迎える。害虫による被害が起きた領地を治める公爵に、令嬢を嫁がせようと画策され、その令嬢は飢えに苦しむ領民に襲われて死亡する。

 コレットは、絡んだ令嬢をもれなく破滅エンドに導く悪役なのだ。が、王女だけはバットエンドも破滅エンドも迎えない。コレットと一緒になってそれを楽しんでいてしまう。悪役令嬢(王女)となって君臨するキャラになってしまう。

 だから、王女とコレットが絡むルートが開かなければ、多少なりの令嬢がバットエンドを回避できるはずだ。そして、それに俺が巻き込まれるフラグも立たない。と言うことになる。はず。


 よし!


「ここにいる以上俺はシオンなんですよ」

 俺は笑顔を見せてそういった。

「へぇー」

 王女は意味ありげな顔をする。

「王子から名を賜りましたからね。その瞬間からシオンとなったんですよ。だから、俺をファルと呼ぶ女など知りませんね」

 こんな感じでどうだろうか?

 ゲームの設定にも、コレットとシオンが幼なじみということは書かれていなかった。それは、つまりこういうことと解釈すればいいはずだ。


 シオンはコレットを知らない。


 あとは、王女が無闇にコレットに関心を持たないこと。王宮で籠の鳥をしている王女に、うっかり火遊びを教えないよう、監視をする必要があるな。

「随分と悩ましい顔をするのね」

 俺を下から眺めるように見つめる王女が、嫌味ったらしく言ってきた。

「おや、これは失礼を。デリータ王女を誘ってしまいましたか?」

「冗談言わないでちょうだい、親衛隊ごときの誘いに乗るとでも?」

 そう言って扇で口元を隠すが、満更でもないというのが目でわかる。

「もちろん、お部屋までお送り致しますよ」

 恭しく礼をすると、王女は満足気に微笑み俺の手を取った。

 とりあえず、王女の興味を俺にひかせよう。



「あら、お兄様」

 当然といえばそうなのだが、当たり前のように俺と王女の前に王子が現れた。

 王宮なんだから、いて当たり前なんだが。

「デリータ、昼間から随分だな」

 若干、王子が不機嫌そうに見えるのは、気のせいだろうか?つか、王子、今の時間は執務なんじゃ?

「道に迷いましたら、この者が案内をしてくれましたのよ」

 王女がそう言うと、王子の眉間のシワが深くなった気がする。

「生まれてから住んでいるこの王宮で道に迷うのか、お前は?」

「ええ、誰の手を取ろうか迷っておりましたら、この者が手を出してきましたので取った次第ですの」

 扇で口元を隠しながら品よく言ってはいるが、内容はお上品では無いと思う。

 仕方が無いので、俺は涼しい顔をして黙っていることにした。

「明日の段取りは確認したのか?デリータ」

「あら?私は黙って立っているだけですもの、確認も何もないでしょう?」

 そう答えると、王女は俺に先へと促した。

 俺は、手を取っている王女の指示に従いその場をあとにした。

 王女の部屋の前まで来ると、王女は1度後ろをふりかえって、ふんっと鼻を鳴らした。

「お兄様の、取り巻きがウザイ」

 ハッキリと俺に聞こえるように言った。

「俺も?」

 手を話さないまま聞くと、王女は少しだけ頬を赤らめた。

「そうでもないわね」

 俺の手を離すと、そのまま自室にはいっていった。もちろん、扉は俺の目の前で音を立てて閉じられた。

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