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第6話

 兵士長グッジョブとか思っていたのに、なぜか俺は王子の御前にいた。

 なぜ、こうなったんだろう?

 俺は内心頭を抱えていた。

「お前、名前は?」

 椅子に座って足を組んだ状態の王子が、気だるげに俺の名前を聞く。ああ、こんなセリフもゲームにあったよな。王子は必ず言うんだよ、これ。

「はい。ファルシオンと申します」

 俺は頭を下げたまま答えた。高貴なるお方の顔を見るなんて不敬にあたるからな。

「大層な名前だな」

 不機嫌そうな声で言われると、何だか自分が悪いような気がしてくる。

「祖父がつけました」

 なんだかよく分からないけれど、言い訳をしてしまう。これが王子マジックなんだろうか?よく分からないが、自分を卑下してしまう。

「ふむ」

 何やら考え込む仕草をして、手の甲を顎にあてている。その姿がまた憂いを帯びて、 背筋がゾクゾクするのだ。殺されるかも……なんだかよく分からないが、気分ひとつで殺されるかも。そんな予感しかない。

「お前は今日からシオンだ」

 え?なんつった?なんだって?

 俺が返事もしないで黙っていると、咳払いが聞こえた。あ、ああ、そうか、俺の事なんだ。

「名前を賜りまして光栄にございます」

 ってー!!!

 ちがーうー!!

 そ、その名前は、その名前はダメなやつ。


 ダメだ、その名前は、だって、その名前は、

 攻略対象の、名前じゃないか!


 やばい、俺、攻略対象になっちまった。



 親衛隊の制服に袖を通し、マジマジと鏡を見る。

 どー考えてもモブの顔なんだが?

「自惚れているのか?」

 後ろから、先輩の冷ややかな声がした。

 うう、こええよ。いびられるフラグしか立たねぇ。王子のお気に入りだけを集めた親衛隊に、俺みたいなのが入って、しかも、名前まで貰ったなんて、絶対恨まれてる。

「華やかな親衛隊に、俺みたいなのが入っては評判を落とすのではないでしょうか?」

 ほんとに、王子はどーかしちまったんじゃなかろうか?俺は田舎出身の平民兵士だったはずなのに、なんで王子の目に止まったかな?こんな平凡な顔、好みじゃないだろう?

「お前、随分と自分を過小評価するのだな」

「先輩たちに比べたら、俺なんて地味な顔してるし、日に焼けて肌も黒いし、なにより、ガサツなのに…王子を、不快にしかしないと思うんですけどねぇ」

 ふかーいため息をつくと、後ろからドンっと鏡に両腕が着かれた。

「!?」

 驚きのあまり身動きが取れないでいると、俺より頭一つ程大きい先輩は、鏡に移る俺に向かって、

「自分を、卑下するのはやめろ。お前を選んだ王子を侮辱することになる」

 鏡越しにみる先輩の顔は怖かった。かなり怒っているのが分かる。

「っ、すみません」

「分かればいい」

 で?この体制はだいぶ誤解を招くと思うのだが?背後からの壁ドンならぬ鏡ドンだぞ。俺、逃げられないじゃん。

 俺が困って鏡越しに先輩を見つめていると、

「ふっ、すまん」

 ようやく手を離してくれた。あーー、よかった。

 俺はモブで生きて生きたいんだ。攻略対象にはなりたくない。だからこそ、他の攻略対象に極力会わないようにしたいんだ。

 でも、王子の親衛隊になっちまったんだよなぁ。そもそも王子が攻略対象だし、王女もそうだ。ここにいるだけで平穏無事に過ごせるとは到底思えない。

 それに、ここにいる先輩たちは、どっちなんだ?本気で王子の愛人なのか、職業なのか…本当に親衛隊なのか。真相が分からない以上迂闊な言動は出来ない。

「あの、ちゃんと着れてますか、俺?」

 昨日まで着ていた兵士の軍服と違い、親衛隊の制服は洗練されたデザインで、俺のモブ顔だと、確実に負けている。

「まだ服に着られている感はあるが、日焼けした顔が様になっているぞ」

 お褒めの言葉を頂いてしまった。

「ありがとうございます」

 攻略サイトの編集者が、攻略されるわけにはいかないんだ、頑張れ俺!

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