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第3話

 1人で歩かれるとまだ危ないということで、俺はさき程まで見えない位置にいた彼女に付き添われてトイレに行った。彼女は予想通りに看護師だった。

 まぁ、一応付き添ってくれているだけで、介護ではないので一安心ではある。

 丸1日ぶりの食事は美味かった。転生に気づいて初めての食事だったが、味付けは体が資本の兵士らしく、だいぶ濃いめで量も多かった。

 風呂に入った時も、看護師の彼女が付き添ってはいたが、扉の外で椅子に座って待っているだけだった。うん、介護ではないからね。と自分に言い聞かせるのだった。



 翌朝、朝食を取って、医師の診断を受け、問題ない。との太鼓判をもらって兵舎にむかった。

 隊長に深深と頭を下げると、特に叱咤されるわけでもなく、すんなりと訓練に参加させられた。体育会系のノリではないようで一安心だ。

 学校を、卒業してから軍に入り、3ヶ月さらに訓練を受けると、正式に配属されるらしい。というのは

 記憶の中にあった。

 俺は地方出身の平民だから、下町の警備兵あたりに収まるのではないかと予想している。なにせ、モブだから。

 休憩をしている時、中庭にこの場に相応しくない人物が見えた。

 ドレスを着たご婦人である。

 やたらとキョロキョロしているので、恐らくは迷子だろう。王宮は簡単な箱の建物の割に、中が複雑な作りになっていた。最初に建物の作りと簡単なマップを教えこまれたので、こういったご婦人が迷子になった場合、スマートにご案内をしなくてはならない。それも国を守る兵士の仕事なんだそうだ。

 辺りを見回したが、俺以外の兵士がいなかった。

 仕方が無いので、背筋を正して歩み寄る。

「如何なされましたか?」

 そう言って、恭しく膝をついた。

 俺の声に驚いたご婦人は、一歩後ずさったようだが、跪く俺を見て安心したらしい、かなり大きなため息が聞こえた。が、聞こえない振りをする。

「あの、ごめんなさい。迷ってしまって」

 予想通りに、迷子だった。声の感じからしてご婦人は若いようだ。

「御無礼でなければご案内させて頂きます」

 あくまでも頭を下げたままで言う。高貴なご婦人の顔を見るなんて、兵士のしかも、見習いの俺がしていいことでは無い。

「あ、ありがとうございます。その…サロンに戻りたいので…」


 恥ずかしいのか、声が時々小さくなる。恐らく右翼棟のサロンでお茶でもしていたのだろう。で、緊張してトイレに来て、右と左の入口のどちらから入ったか分からなくなり中庭に出てしまった。ってところだろう。

 そもそも、トイレが独立した建物なのが原因なんだよな。入口を、隠すように木も植えられてるし、まぁ衛生面とご婦人への配慮なんだろうけど、俺からしたら公園の公衆トイレにしか見えないんだよなぁ

「かしこまりました」

 俺は、できるだけご婦人を見ないように意識して、トイレを避けてサロンへとご案内をした。途中、何人かの王宮騎士とすれちがったが、彼らもご婦人を見ないように目線を逸らしているのがわかる。

 とにかく、高貴な方を見てはならないルール。不敬罪に問われたら下手すりゃ首が飛ぶからなぁ

 なんて、考えているうちにサロンのある一角についた。とにかく、目線を合わせないように膝をつく。

 着きましたよ。って、合図だ。

「あ、ありがとう…」

 ご婦人は、扇をぎゅーーーって握りしめて、サロンへと入っていった。俺はようやく頭を上げて、高貴な方が居ないことを確認してそそくさと中庭へと帰っていった。

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