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第20話

「じゃあ、帰りますよ」

 俺は王子の腕を掴んだままだったので、そのまま軽く引いてみた。

 案の定、油断していた王子はそのまま俺の胸の中にすんなり入ってきた。

「女の子だったら、このまま、キスするところです」

 両腕でしっかりとホールドした王子は、さすがに女の子よりデカいし、硬い。

「帰りたくない。とか、言ってくれたら夜遊びしますけど?」

 俺がそう言って王子を見つめると、王子としっかり目があった。話をする時は相手の目を見る。いつもの癖で、王子はそうしただけだろう。

 川沿い、街の灯り、抱き合って見つめ合う。

 シチュエーションとしてはバッチリなんだが?

「帰るぞ」

 憮然とした顔でそう告げられた。

 しかも、顔面に王子の手のひらがやってきた。

「ダメですかぁ」

 俺はそう言いつつ、王子の手首を掴んだ。そうして、掴んだ手を軽く啄む。

「ーーっ」

 慌てて引っ込めようとしているが、俺もしっかりと手首を掴んでいる。

 今度はリップ音付きで啄んでやった。

 盗み見るように王子の顔を確認すると、耳が赤くなっているのが分かった。

 俺は満足して手首を離してやる。

 手を引っ込めつつも、王子は俺を咎めなかった。

「晩餐に遅刻するといけませんので、近道をしましょう」

 俺がそう言うと、王子は不思議そうに俺の指さす先を見た。

「王子でも、ハシゴぐらい登れますよね?」

「バカにするな」

 その冷ややかな眼差し、本日も王子はやっぱりイケメンである。



 王子が晩餐に出席し、俺の本日のお役目は終了した……わけではない。

 いわゆる業務日報を、書かなくては終わらないのだ。

 今日、王子を、下町に連れていき、何を見せて何が起きたか。事細かに書かなくては行けない…ってのが、脳筋騎士には苦痛らしいが、前世でゲームライターしていた俺にとっては全く苦ではない。むしろ楽しい。攻略記事を書く要領でスラスラと書き連ねる。

「相変わらず、よくかけるなぁ」

 同僚が俺の日報をみて感心していた。見れば同僚の日報はまだ3分の1程度しか埋まっていない。

「こーゆーの、好きなんだよねぇ」

 俺は楽しく書き上げると、日報を隊長に提出した。

 もちろん、怒られるのは覚悟している。王子を危険に晒したからね。

「……お前、なぁ」

 隊長が、頭を抱えた。

 まぁ、内容が、ねぇ。って俺でも分かるし、確信犯だし。隠し事は良くないし。

「殿下がご満足なら、仕方がないか」

 隊長は深ーいため息をついて、俺の日報に判を押した。

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