この国の形
地球に大きな戦争が起きた。
押してはいけないボタンを「とある国」の大統領が押した。報復が報復を呼び、無数ミサイルが地球の文明を破壊し尽くした。一瞬で世界はリセットされたのである。
地下やシェルターに逃れ、運よく生き延びた人類は、たくましかった。何もないところから中世まで時間軸を戻したのである。
復興した世界は、中世のヨーロッパのような風景であった。城を築城し、街が作られた。当然、そこで作られた世界でも、上に立つものが現れる。民衆の上に立ち領主となった。
やはり、歴史は繰り返される。領土をめぐり戦いが始まり、その先に覇者が誕生して王となった。王は世襲制をとり、今に至っている。歴史は繰り返されるのだ。
ただ、難を逃れた人類は地球だけではなかった。戦争の引き金が引かれる前に、宇宙へ飛び立った人々。すでに、スペースコロニーは完成しており、一部の金持ちやエリートは宇宙で生活を開始していた。人類は二つに分けられたのである。この二つの世界は、三〇〇年の間、国交もなくお互いに意識することすらなかったのである。
宇宙に住む民は、どうしても地球に向かわなければならない理由があった。資源が枯渇したのである。食べるものを製造するには、問題はなかった。ただ、金属は違った。どうしても、リサイクルを回しても足りない。コロニーの大統領は、地球に住むかつての同胞に頼るしかなかった。
彼らが選んだのがアイアイエ国。衛星から覗いた箱庭の中で、一番、発展した優れた国に見えた。
そして、大統領の特使として選ばれた五名が地球に降下した。特使達は、宇宙服を脱ぐことは出来なかった。宇宙で純粋培養された彼らでは、地球の空気で生活することは不可能になっていた。彼らが地球に持ち込んだのは、人型をした作業用機械とそれを監視するために造られた騎士であった。
最初に降りた地に、アイアエアの軍が近づいてくるのは、わかっていた。最初に、騎士を出して威嚇することも計算のうちだった。アイアイエの兵士にしたら、まるで巨人兵が攻めてきたようなものである。18mある甲冑をつけた巨人と睨み合いが続いた。
そして、拡声器からいくつかの言葉が発せられた。その言葉の一つに反応した。「ワレワレは、テキではない。」巨人兵の胸が開き、人が現れた時アイアイエの兵士達も驚いた様子だった。
特使達は、アイアイエと交渉できるようになった。特使の中に言語学に精通しているものがいた。また、手に持った小型の四角い箱を取り出し情報を収集し始めた。宇宙服を着たまま、兵士達に質問をして、言語の仕組みや文法、単語等をAIで分析した。翌日には、簡易な翻訳機に四角い箱はなっていた。
交渉は成立した宇宙民は資源を、アイアイエの国民は作業用機械と騎士を手にしたのである。