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人類の英雄だった僕はお金の為に冒険者になります。  作者: 遠山 彼岸
第1章:初依頼
7/7

7話:セオとフラム



セオ視点


「…大丈夫か? 怪我は?」

 俺は手を差し伸べた。

 目の前の尻餅をついた少年は、怯え、震え、瞳孔をこれでもかという程開きながら、呆然と俺の方を見ていた。

「……すまんかった、助けるのが遅くなって」

 後ろにある死体、きっとこいつの仲間だったのだろう。

 無惨にも魔物に引き裂かれた死体を見て、少し目を細める。

 (…あぁ、また助けれなかった)

 少し過去の事を思い出して奥歯を噛み締めた。

「……あの…助けてくれて、ありがとう、ございます…」

 少年はか細い声で俺に言った。

 目尻には涙を浮かべ、鼻水を垂らしていた。

 今まで強がっていたが、緊張がとけ、現実が鮮明に見え、悲しくなった。

 そんな感じだろうか。

「みんな助けてほしかったなんて…そんな事は言いません、そんなの…ただの我儘ですから…」

「……あぁ、だが…すまんかった」

 俺はその少年の様子を見て、ただ謝る事しかできなかった。

 俺の心は同情や哀れみの感情に浸っていた。


───────────────────────



 彼の仲間の死体は近くの木の根元に埋めた。

 街の墓場で埋葬してやりたかったが、持ち帰るには街は遠い。

 この場に埋めるしかなかった。

 死体を埋めた後の二人の間には沈黙が漂っていた。

 森に霧が立ち込めていき、どんどんどんよりとした空気になっていく。

「……そういえば、お前の名前は?」

 俺は彼に聞いた。

 流石にこのどんよりとした空気だったら俺もこいつも気が滅入ると思い、咄嗟に声をかけた。

「…フラム、フラム・クラックスです」

「フラムか、いい名前だな」

「…ありがとうございます」

 そこから会話が途絶えてしまった。

 俺にそこまで会話テクニックが備わっている訳はない。

 今までいろんな人を見下していてまともに会話する気がなかったからこういう時なんて言えばいいかわからない。

 確か過去の俺の仲間がこんな時いろいろフォローしていたが俺には無理だ。

 誰かこの空気を打破する方法はないのか…!!?

「……あの、大丈夫ですか?」

 フラムが心配そうにこちらを見てくる。

「ん、何が…?」

「いえ、眉間にシワがよっていたので何かあったのかと…」

 そんな顔していたのか。

 どうやら俺は悩んでいたら眉間にシワがよるらしい。

 気をつけておくか。

「あぁ、大丈夫だ。ちょっと悩み事がな…」

「そうだったのですか、悩み事だったら私に相談してみてください…これでも仲間達から相談役と言われていましたから……」

「そうかぁ…」

 自分から地雷踏むなぁこいつ。

 そう思いながら魔物の死体を見る。

 獰猛な(クルーエル・)牛人種(ミノタウロス)

 クラスはA級、しかもA級の冒険者でも苦戦するレベルの魔物だ。

 ヴァレニア森林にこんな狂暴な魔物は居ない。

 居てもD級までの魔物までだ。

 しかも獰猛な(クルーエル・)牛人種(ミノタウロス)の生息地域は火山、それも火口付近だ。

 こんな温度の地域にはまず出向いては来ない筈なのだ。

 じゃあ何故だ? 何故こんな魔物が此処にいる?

 可能性は3つ

 1つ目─近くの火山から逃げてきた、または餌を求めてて降りてきた。

 2つ目─誰かがここに運び込む途中に逃げられた。

 3つ目─誰かが此処でこいつを召喚した。

「……なぁ、フラム、この付近に火山ってあったか?」

「火山? まずこの国には火山なんてありませんが…」

「そうか、いやすまんかった。少々引っ掛かってな」

 じゃあ1つ目はないだろう、流石に遠すぎる。

 ついでに3つ目も却下だ、魔物を生み出す魔術、それもこんな上位の魔物の召喚には莫大な魔力が必要になる。

 冷静に考えれば不可能だ、そんな魔力この世界には魔神にしかない。

 魔神は俺が殺したしな。

 じゃあ2つ目の可能性が高いだろう。

 ならなんで運び込んだ?

「…魔物を運ぶ理由って何かあるか?」

「そうですね……王都に闘技場があります。魔物を運ぶなら闘技場で使うんでしょうね…もしかしてこの牛人種(ミノタウロス)も闘技場で使う予定だったって可能性が…?」

「あぁ、その可能性が高いって俺は思ってる」

「なら早く森を探索しないと…!! 闘技場で使うなら単体だけで運ぶ事はほとんどない、きっとあと2匹くらいは居るはずです!!」

「…マジかよ、なら早く探さなきゃな」

「えぇ、僕達みたいな犠牲者は出したくない…」

 …強いな、こいつは。

 そう思いながら再び自分が使っていた棒を見る。

 だが棒はさっきの魔物への攻撃でへし折れていた。

 仕方がなく別の棒を探そうと思い、辺りを見渡す。

 そして牛人種(ミノタウロス)の腕に握られていた戦槌を見つけた。

「…これいいじゃん」

 俺は牛人種(ミノタウロス)の指を強引に曲げて戦槌を奪い取る。

 ちょうどいい重さ、強いて言うなら大きすぎるくらいだろうか。

 鉄でできているからそう簡単にへし折れる事はないだろう。

「…さて、俺は今から森を探索するが、お前は一緒に行くか?」

「……えぇ、足手まといとは思いますが…」

「そうか、じゃあ、行くぞ」

 俺は戦槌を背中に背負い、森林の奥に歩いて行った。

 フラムも、落ちていた銃を拾い、ガンホルダーに入れ、ついてきた。

 探すは魔物を運べそうな馬車の残骸。

 そこから足跡をたどり魔物を見つけて討伐する。

 そういう感じらしい。

 俺達は、魔物の足跡であろう大きい足跡を追いながら、森の奥に歩いて行った。



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