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人類の英雄だった僕はお金の為に冒険者になります。  作者: 遠山 彼岸
プロローグ:僕が冒険者になるまで
2/7

2話:住所で悩む勇者


─冒険者ギルドにいる冒険者目線─


今日はいつも通りに冒険者ギルドは賑わっていた。

ある者はダンジョン等から手に入れた武器や防具を自慢したり、またある者はギルド1階にある酒場で飲み比べをし、ワイワイと騒ぎあっていたり、それに興味のない者や仕事を受けに来た冒険者は依頼書が貼ってある看板を見て、自分にあった依頼を選んで受ける。


冒険者の僕は、いつも通り依頼を見る。ゴブリンやグール、オーガの討伐依頼が多く、ほとんどが初心者向けのミッションだった。D級冒険者だった僕はゴブリンの討伐依頼書を取り、受付へ提出する。こうする事で依頼を受けた事となる。僕は早速武器を鞘から出し、整備をし、出発しようとした。

その時だった。


「たのもー!!!」

バンとギルドの扉が開かれ、威勢のいい声が聞こえる。ギルドにいた全員が、ギルドの扉を見る。

そこには、ボロボロの麻の服を着て、腰に棒を差した、痩せ細った人が立っていた。



────────────────────────




(フッ、決まったぜ)

俺はマント(そんな物は着けていない)をバサッと払う仕草をする。

その仕草は本人からしたらかっこいいのだろうが、周りからしたらただのナルシストが虚空へ腕を降った様にしか見えていない。

当たり前だ。当の本人は実は冒険者ギルドを探す途中で迷子になり、1日間街をさ迷ったせいで餓死寸前で幻覚すら見えて来ているのだから。

俺はギルドの受付へ向かう。お腹が空いた。早く依頼を受けて達成しなきゃマジで死にそうだ。


「あの…依頼ってどう受けるんすか」

「……あの、お客様。まず冒険者の証は持っていらっしゃいますか…?」

受付女が心配そうに訊ねてくる。

「冒険者の証?なんだそれ」

「ここでの依頼は冒険者としての証を持っていないと受けられないんですよ。今から発行する事は可能なので、今から冒険者登録しますか?」

「あ、お願いします」

「では、こちらの書類に必要事項を書いておいてください」

俺は書類と羽ペンを受け取り、受付前の椅子に足を組んで座る。

なんだ、証が必要だったのか。じゃあ早く発行して貰わないとな。

俺は書類を書いていく。氏名、性別、出身地、職業、住所と欄がある。

もちろん職歴は最近まで無職だったと書いておいた。実際事実だから俺も反論はしまい、パン屋だったとか書いても虚しいだけだ。

そして住所だ。生まれてずっと旅をしていたせいで住む家もないから住所はない。これに関してはどうしようか……仕方がない、ないと書いて提出した。

書類を見た受付女はもちろん困惑したように

「あの、住所がないと冒険者の証は発行できないのですが…」

「すみませんね、最近金が無くて家もないんですよ」

「…そうですか、なら証を発行できません。住所がなきゃ発行できないという取り決めなので…」

「…マジかよ」

俺の中に絶望が生まれる。

膝からぶっ倒れてそのまま飢え死にそうだ。

「…はぁ」

口から魂を出すようにため息を吐く。どんどん目の前が暗くなっていく。あぁ、俺は此処で死ぬんだな…俺は素直に目を瞑りそのまま倒れた。パト◯ッシュ、俺もう疲れたよ。勿論天使が迎えにくるとかはないけど。

あぁ、あの時競馬場なんか行かなかったらこの人生ももっとマシに生きていけたのかな……。


「…この子、私が引き取るわ」

「……様!…いの…すか?」

「えぇ…も……ん」

消え入る意識の中。微かに声が聞こえる。これが天使の声って奴か?

もしかして俺はネロにでもなったのか…?


そんな事を考えながら、俺の意識は刈り取られた──




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