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人類の英雄だった僕はお金の為に冒険者になります。  作者: 遠山 彼岸
プロローグ:僕が冒険者になるまで
1/7

1話:勇者は堕落しました

初作品になるため、お手柔らかにお願いします。

──この世の中は金だ。恥ずかしげも後ろめたさも一切なく思う。生きるためには金が要るし、食べる為にも金がいる。もはや貴族のクソガkゲフンゲフン。お子様とか以外にはよくわかる話だろう。だが昔の俺はその金の重要さを貴族のク◯ガキと同等レベルで理解していなかったらしい……例えるならまるで全財産を全て奪われ、地に落ちたエリートのような虚ろな目をしながら、いや実際例えるならどころか事実であるが。俺は路地で1人、空の酒瓶に水を入れ、微かにブドウ酒の味のする水を飲んでいた…いったいどうしてこうなったかというと、これは10日前の話だった。



───────────────────────



かつて世界は魔神と呼ばれる強大な魔族が弱い魔物達を統率し、世界を滅ぼそうと各地で略奪や破壊活動を行っていた。それに対抗する為に、人類は勇者と呼ばれる存在にこの世界の命運を託し、魔王の討伐を依頼した。

え?勇者はどんな奴なんだって?

察しの言い方ならもう気付いているだろう?

そうだよ俺だよ悪いかよ。

文句があるなら全力でかかってこい、金を恵んでくれるなら命乞いどころかお前の靴まで舐めてやるからさ。

─まぁ俺が勇者だった。パーティーは俺を含む4人。俺、戦士、魔術師、回復術師。なかなかいいバランスのパーティーだった。日頃の訓練(主に筋トレ)とチームワークのお陰で、俺達は誰1人欠けることなく見事魔神に勝利し、そのまま国へ帰った。王からは魔神討伐の報酬として1人1人に10万金貨ずつ貰った。

だがこの金額が俺の金銭感覚を狂わせた。


俺はこの金を持ち酒場へダッシュした。酒は魔神討伐中の唯一の自分へのご褒美だった。俺は酒場で3日間くらいずっと酒を飲み続けた。そこまではまだよかった。むしろこれくらいハメを外してもいいじゃないか。なんせ魔神を倒したんだ。今までの娯楽すらなかった生活、これくらいハメを外さなきゃ人間じゃねぇ、無一文の今の俺でもそう思うね。


だがここからやらかした。

俺は酔った勢いで競馬場に行った。人生初めての賭け事だ。正直やり方すら真面目にわかっていないしどの馬が速いかとかは一切理解していなかった。俺は何を思ったのか、そのレースで一番弱いだろうポニーのような大きさの馬に今持っている全財産を賭けた。

結果は最下位。普通の人間ならわかりきって絶対やらないミスを見事完遂した。

俺は泣き叫んだ。

その姿にかつての魔神討伐を果たした勇者の姿なんてなかった。ただの駄目人間だっただろう。

今思い出せば頭が痛くなるどころじゃない。恥ずかしすぎて首を吊りそうだ。


─という訳だ。今の今までわずかに持っていた魔物のアイテム等を全て売り、ギリギリ手に入れた金で食べてきたが、今残っているのは銅貨3枚。明日の食品すらない。だがこの街のバイトは月給制しかないため、普通に働くには実質今から1ヵ月何も食べずに生き残らなければいけない。俺は人間だ。魔力さえあれば食事を一切必要としない森精種(エルフ)や何も食べなくても生きれる魔族とは違う。人間は何か食べなきゃ最速2日で死ぬ。

人間はなんと貧弱な事か。

俺は曇り空を見上げた。今にも雨が降りそうな空へ向かい、俺は手をかざした。

「あぁ…何か俺にできる職業ないかな……」

昔は勇者だったが、今は魔神も居ないから勇者の価値なんてそこらの石ころと一緒だ。

天気と今の俺の状況のせいでセンチメンタルになる。気分は最悪だよ。

そうやって目を瞑り座り込み、現実逃避に入る。

もう駄目な気がする。何もかもが手遅れになってしまった。このままこの路地で潔くの垂れ死ぬしか………


そう思っていると、突如大通りの方から声が聞こえた。

「いやー、今日のトロールは強かったな!!死ぬかと思ったぜー」

「ちょっと~、不謹慎な事言わないでよ~。第一、貴方トロール程度には負ける気がしないでしょ?」

「それもそうだな!!ハッハッハ!!!」

陽気な喋り声だ。トロール?そんな奴と戦う職業あったか?

「さて、じゃあトロールの素材、とっととギルドに持っていこうぜ!!」

「わかったわ、早く行きましょ?今日は多めに狩れたし、飲みましょ?」

「お、いいな~それ!!行こう行こう!!」

その2人は笑いながら走って行った。ギルド?俺はしばらくして直ぐに気付いた。

「…冒険者か」

そう、冒険者。さまざまな所から依頼を引き受け、それをこなす事によって報酬を得る職業だ。

「…これなら俺でもできるんじゃね?」

失念していた。まさかそんな職業があったなんて。武器や防具は食いぶちを繋ぐ為に売り飛ばしたが、それでも木の棒くらいの物があれば戦える。どこかの国ではひのきの棒で戦う勇者もいたくらいだ。きっと俺にもできるだろう。

俺は立ち上がった。先ほどまで曇っていた空から光が差し込む。まるで俺の新たな門出を祝福するようだ。

「…よし、やるぞ!!」

俺は酒瓶を投げ捨て、そこらの街路樹から枝をへし折り腰のベルトに差し込み、歩いていく。

目的地は冒険者ギルド。俺はそこで、第2の人生を始めるんだ。

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