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第9章 ケルト十字

第9章 ケルト十字





黄金の鎧に身を包んだ騎士は振り返りゴブリンの方へ向き直す。



一歩。


大きな一歩だった。


騎士はゴブリンとの距離を詰めた。





「て…てっ…テメーどこの金持ちか知らんが、今は決闘中なんだよ!どっか行けよオッサン!!」


ゴブリンは騎士の気迫に明らかに押されている。

ただ…。ゴブリンは決闘を盾に他を受け入れないように鉄壁な守りをしている。





「そうであったか。では、なんの問題もない。これから貴方の罪深き汚い腕を切り落とすとするか。」


騎士は剣を構えた。





「まっ…まてまて!!テメー話聞いてるのか?だから!このガキと決闘をしてんだよ!!」





「このマヌケが…。だから低俗な奴と話すのは嫌だ。」


騎士は溜め息混じりに言った。



「な…な…なんだとぉーーー!!俺様を低俗と言ったなぁーーー!!」



ゴブリンは低俗と言われたのがよっぽど気に入らなかったのか、先程まで気迫に押された騎士に対して怒りを前面に押し出し始めた。




「テメーはそもそも、騎士風な格好してるクセに決闘も知らねーのかよ!!格好ばっかのハリボテ野郎が!!」






騎士はまた溜め息を吐いてこう答えた。


「そもそも、私は貴方が決闘している夜空によってケルト十字を使い夜空が持っているタロットカードから召喚されたのだ。そうなると……決闘には違反していない。」






召喚士(サマナー)…。」


キンシーは思わず口にする。





「召喚士だと…?そんな訳あるかーー!!このユーフォニア王国でもまともな召喚士はたった1人だぞ!!それが…こんなクズが…」





「貴方が理解できないのは別によいが…現に私は夜空によってここに召喚された事にはなんの嘘、偽りは無い。よって。貴方との決闘を継続する。」





「待て!!わかった!わかったよ!」


ゴブリンは急に態度を改め始めた。


「いやね。まさかこの恩方が偉大なる召喚士だとはおもいませんでした。誠に度重なる無礼をお許しくださいませ〜!!この決闘は私の負けで結構でございますので、この娘様もお返し致します。」




「どうする…?夜空よ。」


騎士はゴブリンから目は離さずに後ろにいる夜空に問いかけた。



「今、馬車にいる人達も解放するなら決闘は終わりにしてもいいよ。」



夜空もゴブリンから目を離さずにそう答えた。





「ははー。ありがとうございます。それでは今居る商品は全て解放致します!では!これで決闘は終わりですね?」



ゴブリンは深々と夜空と騎士に対して頭を下げながら言った。




「それでは!早速解放して参ります!」


ゴブリンはイソイソと馬車へ向かって走って行った。







「アンタやるじゃん!!」


キンシーは先程までの険しい顔から笑顔で夜空の元へ駆け寄った。





「いや…僕も何が何だか…」


僕は疲れとケガからかその場に座り込んだ。




「いやー。まさかアンタが召喚士だとは…。しっかし!!人は見かけによらないね。」


キンシーはいつものように僕をからかい出した。





「娘を助けて頂きまして…ありがとうございます。この恩、どうお返ししたらいいのか…」


捕まっていた娘さんのお母さんが深々と頭を下げている。



「そんな…いいですよ…。散々カッコ悪い所をお見せしてしまいましたし…。」



僕は苦笑いで答えた。



「いえ。あなたはとても勇敢でした。あなただけでした。娘を救おうとしてくれたのも…。このご恩は決して忘れません。」



「いやいや…」


こんなにお礼を言われた事はないので対応に困ってしまった。




しばらくして、娘さんとお母さんは何度も何度も礼を言いながらこの場を去って行った。






「しかし。このナイトさんは立派だねー。」


キンシーは騎士の鎧を見ながら言った。


「国中探してもこんな立派なナイトがいるとしたら王国騎士団くらいなもんよ。」





「有難いお言葉ですな。失礼でなければ貴女のお名前を…。」


騎士は膝を付き礼儀正しくキンシーに聞いた。



「私はキンシー。薬を売りながら旅をしている者よ。今は、あなたの主人と一緒に旅してるけどね。」


キンシーはいつもの笑顔で答えた。




「夜空よ。素敵な貴妃ではないか。是非皆に紹介したいな。」





「え?皆?」


僕は唖然とした。

この騎士は今確実に《皆》と口にした。




「そうだ。夜空よ。私は大アルカナの11番正義を司る者だが…大アルカナは全部でいくつある?」




「22枚。」




「そう。あと21人いる。」



色々考えたが…何故か急に不安になってきた。

何故なら……

どう考えても皆がジャスティスのように教養があるとは思えないからだ。





「私はこれでタロットに戻るが、夜空が私達の力を必要とした時には、心の中に《ケルト十字》を思い描くのだ。さすれば、その時に夜空の力になれる者がタロットから現れるだろう。」



そう言い残しジャスティスは僕のポケットにあるタロットに戻って行った。







「にーちゃん…実はスゲー奴だったんだな!!」


カップは目をキラキラさせている。


「次、早く召喚してよ!!」




「いやいや…簡単に出来るもんじゃないし、実際未だにやり方がよく分かってないんだから…」





「なーんだ。つまんねーの。」


カップは軽くスネた。

子供を相手にするのは大変だ。


そんなカップと僕を見てキンシーが話題を変えた。



「しかし。さっきのゴブリン。以外とあっさり手を引いたな…。なんかキナ臭いな…。」



キンシーの読みは当たった。




馬車に乗った先程のゴブリンは大声で夜空達に向かって言った。


「おい!クソガキが!誰が奴隷を解放するか!!こっちだってこれに命掛けてるんだ!テメー覚えてろよ!ポロメリアに帰ったら仲間連れてお前らを細切れにして、ドラゴンの餌にしてやるからな!!」



そう言ったゴブリンは慌てて馬車を発進させようとした時…


小柄な深い緑の肌をした者が立ち塞がった。




「な…なんだ!テメー!!邪魔すんならぶっ殺すぞ!!」





1発の銃声がまた。


村に鳴り響いた。






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