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第4章 静寂

第4章 静寂



かれこれ歩いてもう5時間程になるのだろうか…。

こんなに長い時間普段は歩かないからとても疲れる。


あぁ〜。ここの人達はこうやって長い距離を移動してるのかと考えると僕が住んでいる世界が恵まれている事に感謝しなくてはならない。



「キンシーさん。次の村やらはまだなんですか?」



「あー。この森を抜けると丘が見えるのだが、その丘の上にある。あと少しで森も抜けられる。」



僕はため息混じりに

「なるほど…。」

と答えるとキンシーが



「どーした?喋る元気もないのか?どーやらあんたは向こうの世界では随分楽してたみたいだな。こっちでは歩くのは基本。このくらいで、へばるようならこっちの女にはモテんぞ。」


キンシーは笑いながら言った……次の瞬間。

キンシーの歩みが止まった。


「まて!」


キンシーは僕に歩みを止めるように手で静止を促した。


しばらく静寂な時が流れた…。



なんだ?何もないじゃないか…。

「キンシーさ…」

キンシーに声を掛けようとした時、自分たちの右方向から草を掻き分ける音が聞こえてきた。


それも凄いスピードでこっちに向かって来ている。


明らかにこちらに向かっている。


音が近づくにつれて僕の心拍数が上がってるのがわかる。


オークとか言うバケモノか⁉︎何が迫ってるんだ⁉︎


こんな知らない土地で何がいるかもわからない世界で。


早く…早くこの場から逃げないと!!!


僕が進行方向へ走ろうとした瞬間



「大丈夫だ。私の後ろにいろ。」



キンシーは音が聞こえる方をジッと見つめて冷静に言った。

音はどんどん近づいて来ている。


「1人と…2匹。」


キンシーはこう言った。

僕は恐怖で声も出せず、今すぐにでも走ってこの場から逃げ去りたいくらいだ。


もう音はすぐそこまで来ている。


右方向の草が激しく揺れながら音を立てている。


もう…ダメだ。

間に合わない。




と頭の中がその言葉でいっぱいになった瞬間。




「うわぁーーー!!誰かーーー!!」



子供?…の声?


「誰かーー!!誰かーーー!!」


声の主は叫びながらこちらに向かっている。

声は明らかに恐怖に怯えながら叫び散らしている。



「うわぁーーー!!助けてーー!!助けてーーー!!」


もう目で確認出来る距離。



木や草で肌を傷だらけにしながら草を必死に掻き分けてこちらに向かってくるのは、1人の少年。


そしてその後ろ5メートルほど離れた位置に2匹の獣が唸り声をあげながら猛追している。


2匹の獣は…狼のような動物だが明らかにサイズがデカイ。

馬まではいかなくても、ポニーくらいはあるんじゃないのか…。


そんな2匹の獣もこちらにもうすぐ辿り着きそうだ。




「お…お願いだーー!たっ…助けてーー!!見捨てないでーーー!!」


少年は涙を浮かべながら必死にキンシーに向かって叫ぶ。



キンシーはゆっくりと半歩ほど少年の方へ踏み出す。

そして腰に携えている刀に近い西洋よりのデザインのソードのような物を鞘から抜き

、構える。




キンシーへ向かい必死に走る少年。




その後ろから2匹の獣が追う。




もう僕らとの距離もない。

あと数秒で…

あと数秒で…



「伏せろ!!!少年!!!」


キンシーは叫ぶ。



少年は転がるようにキンシーの足元に伏せた。


キンシーと少年に飛びかかる獣達。






一瞬の出来事だった。





先程まであれほど騒がしく、色々な感情が入り乱れてたこの辺り一帯が静寂に包まれた。




その場には…


首が飛ばされたのと、胴体から輪切りに真っ二つにされた2匹の獣の亡骸

と。



彼女の足元でその光景に唖然とする少年。



今も何が起こったか頭の整理が出来ない僕。



そして刀をもった女性。




キンシーは少年に振り返りながら笑顔でこう言った。


「大丈夫?あなたは本当に運が良かったわね。」



その少年に声を掛けている女性は、獣を斬ったときの返り血を浴びており着ていた黒いローブは血でより濃い黒になって、白く美しい肌は返り血でより美しく見えた。


なぜかそんな彼女がとても魅力的に見えた。


そんな彼女から瞳を逸らすことが出来なかった。



「で。あんたは?大丈夫?だいぶ怯えてたみたいだけど?」


キンシーは小馬鹿にしたような笑みで僕に言う。


僕は慌てて目をそらし


「だ…大丈夫。少しビックリしたけど…。」




「なら良し!獣は2匹ほどご臨終だけど他は誰も怪我もないみたいだしね。」


キンシーは顔に付いてる血を拭きながらそう答えた。



「あーあ。ローブが血塗れよ。このローブ買ったばかりで高かったのになぁー。」


自分の着ているローブを見ながらキンシーは喋っている。



「で。少年よ。君はこんなところで何故ドーベルに追われていたんだね?」


キンシーは僕に見せるような不敵な笑みで少年に問いただす。



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