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始まりの朝

 んん、意識が覚醒する。

 うっすらと開く目に飛び込んでくる木目の天井。

 はて? 俺の部屋は普通のマンションの一室の筈?


「ああ、そうか、そうだったな」


 そうか、ここはスローライフ・ファンタジアの中だったな。

 あのキミジマチャンネルを見た後、日が暮れてきていたこともあって、そのまま寝たんだった。

 とりあえず起きて飯を食うか、その後金策の手段を探さないとな。

 餓死して死亡はさすがにごめんだ。


「さて、まず先に皮をかぶらないと、んん。さて、こんなもんでいいかの」


 ネカマじゃから素でやると変になるからの。

 …戻れた時、妾はちゃんと男として生活できるか不安になるの。


「とりあえず飯じゃな」


 起きて身なりを整え、一階の酒場を兼ねた食堂へと降りていく。

 食堂は早朝だというのに、多くの客がおり喧騒に満ちていた。


「賑やかじゃの」


「おや、嬢ちゃん早いね。適当なとこに座っておくれ、今朝食を持ってきてあげるからね」


「お願いしますじゃ」


 こちらを見つけてくれた女将に朝食を頼み。座る席を探す、しかしテーブルはどこも埋まっておりカウンター以外の選択肢は存在していなかったので空いている席に座る。


「お待たせ、泊り客はお替り自由だからね、足りなかったら声をかけておくれ」


「ありがとうございますじゃ、ところで女将。この辺りで金策できそうな手段をご存じないですかの?」


「ん? ああ、嬢ちゃんは来訪者かい? それだったら北エリアに冒険者協会があるから、そこに行ってみたらいいよ。 あそこでいろいろと仕事の依頼や斡旋をしてるからね」


「なるほど、では食べ終えたら行ってみますじゃ」


 なるほど、北側にそういった施設があるんじゃな。後で他にもどういった施設があるか確認しておかんとの。


「まぁその前に腹ごしらえじゃな。美味しそうなのじゃ」


 目の前には焼き立てと思われるロールパンとスクランブルエッグの乗った皿、それにスープの入った器が置かれており、美味しそうな匂いを放っていた。


「いただきますじゃ」


 最初にパンを手に取る。手に伝わる温もりから、焼き立てなのは間違いないであろうそれを、二つに割ってみる。

 柔らかくきれいに割れていくパンの中身は白く、ファンタジーにありがちな黒パンではなかった。

 手の感触からフワフワしているパンをさらに一口大にちぎり、口に放り込んだ。


 パンにはバターが練りこまれていたのか。ほのかな甘みと香りが漂い、それ単体でも十分に美味しかった。

 スクランブルエッグは十分に火が通っており、それでいて半熟という素晴らしい出来であり、掛かっている胡椒とともに美味しくいただいた。

 スープはこれといった特徴はなかったが、野菜のうまみが程よくスープに出ており、美味しい一品であった。


「む、いつの間にか食べ終えてしまっておったの。お替りするほどではないし、冒険者協会とやらに向かうかの」


 食べ終えた以上、いつまでも居ては邪魔になるであろうから、早急に立ち去るべく女将を探し、声をかける。


「女将、ごちそうさまでしたのじゃ、美味しかったですじゃ!」


「おや、もう食べちゃったのかい、早いね。もう出るなら、こいつも持ってお行き」


 そう言って女将が差し出したのは、先ほど食べた物と同じパンが二つ入っている袋であった。


「小腹が空いたら食べるといいよ、家のパンは絶品だからね。そうそう、協会だけど北エリアに着いたら大きな赤い屋根の建物を目指すといいよ。その竜に剣と杖が交差してる看板がある建物が協会だからね」


 女将に感謝を告げ、袋を受け取り宿を出る。

 とりあえずの目標は決まった。

 協会で仕事を見つけ、当面はあの宿を拠点に出来るように頑張ろう。


 目標が見つかり若干心が軽くなった妾は、小走りに表通りにかけていった。


 …数分後に宿の名前を見ていなかったことに気づいて、慌てて確認に戻ることになったが。

 〖暁の丘亭〗じゃな。覚えておかんと。

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