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プロローグ

 果てしなく広がる荒野、青空は広がり、照り付ける太陽の熱が灼熱の熱さを生む大地。

 見渡す限りの青き海、水底に潜む強大な生き物たち、常に変化し続ける大海。

 見渡す限りの鬱蒼とした緑、鳥たちが舞い、獣たちが詠う、壮大な密林。

 浮島が浮かび、雲による白き大地が点在し、刻々と姿を変える、蒼穹の大空。

 無限の可能性、広大な世界な世界を遊びつくせ!


 ……という謳い文句で高らかと世界に産声を上げた世界初のフルダイブ型VRMMORPG〖スローライフ・ファンタジア〗


 大盛況のうちにオープン・ベータテストを終え、正式稼働を迎えるこの日、一人のプレイヤーがこの世界に足を踏み入れたことから、この物語は始まる。




 周囲に0と1で構成されたデジタルな空間。

 その空間に佇む一人の少女、目をつぶり、ただ一人この空間で、必要とされる時を待っていた。


 そして、不意に空間が歪んだかと思うと、その場に白い影が現れた。

 少女は目を開き、その影を迎えて声をかける。


「ようこそ、〖スローライフ・ファンタジア〗へ! あなたの冒険はこれから始まります! まずは始まりの町〖アイリス〗へどうぞ! 行ってらっしゃいませ!」


 少女の背後に白く輝く出口が生まれ、影はその出口を潜っていく。

 影が去り、出口が閉じると、少女は新たに開いた別の出口から、その場を後にした。


「さぁ、始まりますよ。我らが創造主の悪意と愉悦の入り混じる混沌の時が」


 不吉な言葉と、クスクスという笑い声を残して。




 彼がそのゲームを始めたのは偶然であった。

 元々MMORPGが好きで、暇があればコントローラーを握り、ネット上の友人達と狩りに行き、時には一人でのんびりと過ごす。

 そんな生活が普通であるぐらいにゲームが好きであった。


 そんなある日、特に親しくしていたゲーム仲間の一人から誘われたのである。

「〖スローライフ・ファンタジア〗って知ってるか? 知ってるよな? あれの正式稼働第一陣になったんだ。凄いだろ! でな、これ当選者と四人まで第一陣に参加できるんだ、だからよ、お前らも一緒にやらないか?」


 魅力的な誘いだった。だが、彼はもちろん、他の仲間も現実の知り合いを誘ったらどうかと、そう言った。

 だが、彼の返答は。

「やだよ、何であいつ等なんか。確かにいい奴らなんだぜ? でもよ、どっからか嗅ぎつけたのか、この権利が当たったって知ったとたん、変にすり寄ってくるんだぜ? 胡散臭い笑みを浮かべてよ、はは、笑顔って気持ち悪い物だったんだな」


 泣きそうな顔でそう告げる仲間を見て、彼も、他の仲間も何も言えなかった。

 ただ一つ気になったことがあった。


「俺たちは良いのか?」


「いいんだよ、お前らは信用してるからさ、長年連れ添った仲間じゃないか」


 そう言ってくれた仲間に、彼らはこう返した「「俺たちでよければ」」と。

 こうして彼らは〖スローライフ・ファンタジア〗へと足を踏み入れることとなった。

 そして。




『すまん、本当にすまん』


『いや、お前のせいじゃないし』


『そうそう、さすがにこれは予想できないって』


『そうそう、これはさすがにねぇ』


『いや、これを予想できる者がおったら。妾、そやつが黒幕と疑うのじゃ』


 彼らは、このゲームを始めるきっかけとなった仲間の謝罪をボイスチャットで聞きつつ、ログアウトボタンが消えたシステム画面を見ながら、閉じ込められた現実を前にこれからどうやって過ごしていくか、頭を悩ませていた。

 何よりも、信頼できる仲間である5人が離れ離れになって各地の始まりの町に散ってしまったという事実とともに。

 始まりの町〖アイリス〗をはじめ、各始まりの町に響く悲喜交々の叫びを聞きながら。


 これが、世界初のフルダイブ型VRMMORPGにして史上初のデスゲームとして悪名を轟かす〖スローライフ・ファンタジア〗その始まりの時であった。

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