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四つ葉のクローバー

まったりと。


挿絵(By みてみん)


 四つ葉のクローバー。見つけると「幸せを運ぶ」と言われているこの草を、多くの人が今までに一度は探したことがあるでしょう。もちろん私もそうです。見つけたこと、ありますか?


 小学生のはじめの頃に住んでいた家は学校の隣。玄関前に通る二車線道路の先は、小学校の敷地でした。もっとも校門は同じ側にはなかったので、通学時間ゼロ分というわけにはいかず、それでも教室に着くまで五分とかからない立地でした。


 当時だからか地方だからか分かりませんが、基本的に宿題は少なく、塾もない。当然、下校後は遊びまくる事になるのですが「子どもは外」でしたので晴れた日は屋外専門です。

 新興住宅地だったそこには公園もありましたが、整備されたところよりも藪や道路の方が楽しいもの。車も滅多に通らないのをいい事に、拾った白い石で道路に落書きをし、街路樹の葉をむしっては草笛にチャレンジし、藪に行っては蛇苺やスグリを探すという、マイルドにワイルドな放課後を送っていました。


 坂道の多い住宅街。目の前の小学校は傾斜の関係で高い方に合わせて建っていましたので、道路を挟んで隣に立つ私の家の二階とほぼ同じ高さに校庭があります。したがって、家の前には草が生い茂る土手。今だったらコンクリートで固めるのでしょうけれど、当時は草のまま。私は、その草の土手で遊ぶのが好きでした。


挿絵(By みてみん)


 紅白のツメクサ、クローバー。影に隠れてこっそり咲く野スミレ。赤まんまにねじり花。いまいち違いがわからないハルジオンとヒメジョオン。鮮やかな黄色の月見草、なんとなく得した気分になるコスモス。飼っていた十姉妹が好きだったハコベ、全てを覆う勢いの猫じゃらし(エノコログサ)

 きつい傾斜の土手でそんな花を摘んだり、トンボをつかまえたり。オオバコの筋を引っ張ってクイクイ動かしてみたり。タンポポは茎の汁で手にハンコを押したり、まん丸の綿毛を探したり。


 シロツメクサを編むのも好きでした。終わらせ方が分からなくてひたすら編み続けるので、縄跳びができるほどの長さになることもしばしば。クローバーを見るといつでも、四つ葉を探してしまいます。でもシロツメクサで毎日そんなに遊んでいても、四つ葉を見つけることはまずありませんでした。それくらい、珍しかったです。

 その後知ったのは、四つ葉は三つ葉の奇形なので、成長の段階でなんらかの――例えば、踏みつけられる等――傷を受けると出現しやすくなるということ。綺麗な四つ葉が少ないのも頷けます。四つ葉がない、ということはクローバーたちにとっては満足できる生育環境だったということです。健やかな土手だったのですね。


挿絵(By みてみん)


 時が流れて今は、私が育ったところよりもずっと都会に住んでいます。草の土手も、胸の高さまで茂る藪もありません。それでもクローバーはよく目にします。懐かしいな、と見回しても、シロツメクサを摘んで遊ぶ子どもはいないようです。整備された緑地はある程度育つと除草されてしまうので、花冠を編めるような長さにならないのでしょう。

 その代わり、マンションの周辺は子どもたちの外遊びスペースでもあり、住人の通り道。踏まれ続けるせいか、四つ葉も多い――とはいっても、なかなか見つけるのは難しいですが。


 ほんの小さい頃から娘は、なぜか四つ葉を見つけるのが上手。彼女にかかれば、五分もせずに次々と四つ葉は姿を現します。必ず見つかるので、本人は「探せば普通にあるもの」と思っています。有り難みが薄れそうですが……摘んだ四つ葉をお友だちと分けっこする娘を見ていると、まあ、これでいいな、と思います。


挿絵(By みてみん)

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