序
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――星王の朝は早い。
日の出とともに起床し、側仕えの者の手を使わず自分で身支度をする。物心ついてからの毎朝の日課だ。
これは他国から来た家臣によると、仮にも一国の王という身分の人間には大変珍しいことであるらしい。
最も自分でできることを人にさせる必要はない、というのが持論である王は習慣を変えるつもりなどないが。
十人十色というように、星王らしくてよいではないか。
顔を洗い終えた星王・諒は、いつものように露台へ出た。そして足元に広がる王都を眺める。諒はこの景色が密かに気に入っていた。家々が寄り添いあうようにして林立するさまには、どこか温かさを感じるのだ。
ゆるゆると上りくる朝日がまぶしい。もう、人の起きだす時間だ。
何気なく目を閉じた諒は、風に乗ってかすかに聞こえてきたなじみの馬蹄の音にふと思い出した。
三日前、星の丞相であり、異母妹でもある緋凰に招集をかけたのだ。北西にある彼女の領地と王都は、往復でまる二日ほどの距離だからそろそろ到着する頃だろう。
会うのは、二年前に攻めよせてきた晨を撃退した時ぶりだ。こちらには逐一情報が送られてくるのでそんなに久しい気はしないが、やはり実際に会えるのは嬉しくないわけがない。
ただ、面会するにはあと一刻はかかるに違いない。丞相の身でありながら単騎でやってきた彼女が、王都に入って身分を明かしたら大変な騒ぎになるからだ。となるとやはり、静かに手続きが行われ一使者として入城することだろう。そもそも単騎で来ず、おとなしく馬車にでも揺られておけば手続きも簡単でよいものの、彼女は絶対にそれをしない。曰く、性分に合わない――のだそうだ。
「我が公主さま達のご機嫌伺いにでも行くとするか…」
現在最も暇な王は寝起きの二人の娘のもとへ行くようである。
緋凰が来ると言ったら喜ぶだろうか。「一緒に遊ぶの!」と口々に言う様子が目に浮かぶ。
星王は微笑むと衣の裾を翻した。
――また新しい一日が始まる…
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