お家騒動とメイドとタイツ1
ハンニンを追いかけること数十分。森の中なのに妙に開けた場所に到着する。月明りだけでは確認できなかったため魔法で辺りを照らしてみる。ゲームにはなかった魔法ではあるが、何となく使える気がしたので試してみたら出来てしまった。
「血の臭いがするな。何があった?」
「ほいほいほいほいほい!」
「いや、わからないから・・・」
くねくねした動きをして何かを伝えようとしているようだが解読できない。何故普通に話さないのか・・・。だが漂う血の臭いから血が流れるような何かがあったのだろう。
「よかった・・・その変態・・・さん?後ろの方は・・・」
荷馬車から警戒するように一人の女性が出てくる。緊張した面持ちではあるが、どこかほっとしているようにも見える。取りあえず自己紹介と何があったか聞こう。ハンニンに聞くより正確な情報がわかるだろう。
「始めまして、モードと申します。もう少しすると騎士団の方が到着すると思います。よろしければ何があったか教えていただけませんか?」
「あ、えっと、ミトと申します。その、そちらの黒ずくめの方とはどのような関係で・・・?」
警戒されているなー。なんでだろう。この変態より警戒されるとか少し寂しくなる。
「これと言って何かあるわけではありません。この変態に来るよう頼まれたので来てみただけです。先ほどまで私達は盗賊の襲撃に遭い、これを撃退したところに現れたのが彼です。」
「うひょー!」
「そうでしたか・・・。私達も盗賊に襲われ危ないところを彼に救われました。」
「達?」
自分が疑問を口にするとぞろぞろと木々の陰から、人が現れる。ふむ警戒して何かあればすぐに対応できるようにしていたのか。にしても年頃の娘を囮にするのはいかがなものか。
「なぜ、決めたとことを守らずに出て行ったんだ?」
「盗賊ではなく、彼だということが確認できたからですよ、お父さん。命のお恩人を疑うのですか?」
「それはだな・・・?」
「まぁまぁ、その辺で。彼を警戒するのは親であるなら当然でしょう。変態ですし。後、彼の名前はハンニンと言います」
ふむ、娘さんの独断か。悪い人たちではなさそうだ。軽く事情を聴いたところで、騎士団の皆さんが追いついたようだ、よく自分たちのペースについてこれたものだと感心する。
「ここは?」
「盗賊達が拠点として使っていた場所だと思います。此処にいた盗賊達は彼が倒してしまったようですけどね。」
「彼らは?」
「盗賊達に襲われたキャラバンだそうです。詳細については彼らに聞いてください」
「はじめまして、私は・・・
話が長くなりそうだったので辺りを見回る。盗賊達の死体は一カ所に集められている。死体は1体を除き大きな外傷が見られない。たぶんハンニンがまだ自分の力を把握しきれていなかったのだろう。2人目以降からは力加減を理解したのか、綺麗なものであった。一応血の臭いに惹きつけられて獣やモンスターが来ないか警戒していたが、特に何もなく時間が過ぎていく。獣たちが少ないのだろうか?現代日本人には判断がつかない。
「話は分かった、街道に騎士団が待機している。合流する、付いてきてくれ」
話がついたようだ。めんどくさい話を丸投げ出来たのでついてきてくれて助かった。お願いしてみるものだ。
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ぞろぞろと現れた自分たちに臨戦態勢を取っていた騎士団の皆さん。危機管理が素晴らしい。現れたのが自分達だと認識するとすぐに武器を下げてくれた。事情を聴いた騎士とキャラバンのリーダーである商人が事情を説明しに行く。さすがに疲れた。異世界転生に盗賊達との戦闘、自分の人生でこれ程まで濃い1日があっただろうか・・・。にしてもいずらい。キャラバンの人たちはキャラバンの人たちで、騎士団の人たちは騎士団で固まって行動している。自分はどちらに行くこともできず少し離れたところから様子を窺っている。こういうとき、コミュニケーション能力が低い自分が恨めしい。変態はブリッジしながら自分のスカートの中を覗いている。悩みなどないのだろう・・・。
無為に時間を過ごしていると騎士団の隊長に声をかけられる。何となく面倒事の予感がする。お貴族様が自分達に話があるようだ、自分は分かるがブリッジをしている変態に話ができると考えているのだろうか。
面倒事をどうにか回避できないか思案しながら馬車へと足を向ける。
早く休みたいな・・・。
次回投稿は月曜日になりそうです。