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お家騒動とメイドとタイツ15

 

 自分が目を反らしていることなど、自分が一番わかっているのだ。いや、やはり分かってはいないのだろう。何せ、現実から今も逃げているのだから。彼女に指摘され怒鳴ったのは、それが図星だったからだ。


 だが、この期に及んでも、自分は現実を受け入れるのが怖かった。弟はとっくの昔に覚悟を決めているというのに、年長者である自分は未だに覚悟を決めることができなかったのだ。


「弟に、死んでもらいます」


 結局自分は、自分の手を汚すことを、弟が死ななければいけないという現実を、弟が悪人ではなく貴族だったということを受け入れたくなかった。


「分かった。今夜の晩餐会だな?」

「はい、父上」

「手配をする。そちらの準備はできているのか?」

「はい、父上。彼女が、いえ、弟がすべての準備を整えてくれているでしょう。私達はそれに乗ればよいだけです」

「そうか」



 今夜晩餐会が開かれるとの知らせが、使いのものより伝えられる。 予想より早く兄が覚悟を決めてくれた。実はもっとうだうだ悩んで時間がかかると思っていたため、準備が整っていなかった。とは言っても、一筆したためるだけなのでさして時間はかからないのだが。

 恐らく、あのエルフが兄の背中を押してくれたのだろう。いったいどのような手品を使ったのか気になる。死ぬ前に妙な未練ができてしまった。あのエルフはやはり面白い。


「でも肝心なところに気が付いていなさそうだ。清濁併せ呑んでこその貴族というのは、建て前ではないんですよ」



 モータンに嫌われた。泣きたい。何もかもあの優柔不断お貴族様のせいだ。


「モータンさんに嫌われてしまいました。寂しいです」


 オフィーリアさんに甘えてみる。頭を撫でてくれるオフィーリアさん。溢れ出る母性に窒息しそうである。でも、このままおっぱいに頭を押し付けて窒息死したい。


「モード様、貴女には何が見えているのでしょうか。貴女の言葉でアレック様の雰囲気が変わりました」

「様は要りません。様付けされるような人間ではありません」

「話しにくいことなのでしょうか・・・」

「・・・いいえ、実は偉そうに言っていましたがそれほど多くは見えていません。ちょっと恥ずかしかったので・・・」

「ご謙遜を。事実アレック様はお覚悟をお決めになられたご様子でした」

「真実というより、私の願いです。それに、私が背中を押さなくても何れ覚悟を決められたでしょう。私がしたのはその程度なのです」


 実際、全体は見えてはいない。自分が根拠としたのは本当にクレオの人柄だけだ。何にせよ答え合わせは今夜行われる。私の予想、いや想像が正しいのか否か。

 だが、それよりも私にはやらなければならないことがある。


「オフィーリアさん」

「はい」

「テーブルマナーをお教えてください。あと常識を」



「初めてまして、私はストーク家の当主、ビルド・ウル・ストーク。このたびは息子と騎士団の者たちをお救いいただきありがとうございます。ストーク家の当主として、父親としてお礼申し上げる。ありがとう」


 腰が低い。あれ、貴族ってみんなこんな感じなの?


「恐縮です。お礼は現金でお願いします。それ以外はいりません」

「はははは、面白いお嬢さんだ!」


 うむ、調子に乗ってしまった。そしてモータンの視線がすごく痛い。めっさ睨まれてる。


「改めて、私からもお礼を。ありがとうございます。さて、堅苦しい挨拶はこれくらいにして食事にいたしましょう。父上」

「そうだな。さぁ、こちらへ」


 教えてもらった付け焼刃のテーブルマナーのせいで料理の味がわからない。変態は早々に自分のスカートの中を覗きにテーブルの下に入る。

 それについてカトレアちゃんがお冠。ご当主様もそれについて一言あったが、彼の行動を止めるのは、騎士団総出でも無理なことと、気にしないことが一番であることを、当事者である自分が伝えることで、スルーされることになった。変態のメンタルが強すぎる。


「それで、クレオ何故私を殺そうとしたのですか?いくら考えても納得のいく物がお思いつきませんでした」


 おっと直球ストレートで勝負をかけてきた!?さすがにこれは予想外。お貴族様もといい、アレックが切り込みをかける。正直、からめ手的な感じで話を進めていくものだと思っていたので驚きを隠せない。カトレアちゃんも固まっている。


「まさかその様に真正面から来られるとは思いませんでした、兄様」


 自分もだよ。でも認めたな。何が飛び出してくるやら。






 

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