ハンターギルドのベテラン
短いです。
早朝、森側の門が開けられてすぐ、ベテランのハンターが一人帰ってきた。ただ、何時もと雰囲気が違う。何かあったのだろうか。彼が背負っている籠から察するに、依頼品の納品に訪れたようではあるが・・・。
「おはようございます。依頼品の納品でしょうか?」
「あぁ、頼む。それと、神聖魔術の使い手を紹介してほしい。後、エルフの・・・フーゴ、あいつを呼んでくれ」
「・・・何があったのですか?」
「俺が魅了だの幻覚だのにかかていなければ、森でエルフを見た」
珍しいことではあるが、居ないことはないだろう。しかも森の中だ、偶然出会う可能性だってある。何故そんなに厳しい顔をしているのだろうか。
「かしこまりました、手配いたします。フーゴならすでに来ていますので呼んできますね」
依頼品の査定は別のものにお願いしよう。
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「エルフを見たということではありましたが、貴方がそれほど慌てるようなことではないと思うのですが」
そう言った男は自分の耳を触る。男、フーゴの言う通りではある。目の前にいる男もエルフ、しかも高位のだ。だがあれはモノが違う。
「俺が魅了だのにかかっていなかったらの話だが、格が違った。雰囲気にのまれていたというのは否定しない。だが、ただのエルフではなかった」
「ほう?」
「森が、すべて敵になったような気がした。はじめ、ゴーストか何かだと思って様子をうかがっていた。だが急に森が意志を持っているかのように、こちらを見ているような感覚に襲われた。しばらくして、エルフに出てくるように言われたよ。その時に森から敵意を向けられていることがはっきりわかった」
「尋常ではないお話ですね。しかし、俄かには信じがたい」
「緑色の髪をしていた。魔術か何かだろうな。手元に明かりの様なものが浮いていた。それで確認ができたが、鮮やかな緑色の髪を見て、おとぎ話のハイ・エルフを思い出した」
「貴方が見たのがハイ・エルフであると?」
「その可能性はある。あんたは、あの森で何も武器を持たず、寝間着姿でうろつくことができるか?」
「命を顧みないというのなら。あの森は黒の森ほどではありませんがそこそこマナ濃い。当然、獣やモンスターもそれなりに狂暴です」
「あの森の近くにエルフの集落ができたという話はあるか?」
「ありませんね」
その後神聖魔術師による検診を受けたが、特に魔術の痕跡はなかったとのことだ。検診料金を払おうとして、フーゴが止めに入る。
「私が支払います。その代り先ほどのお話をもう少しお聞かせいただけますか?」
「構わないが、それほど多く話せることはないぞ?」
「それこそ構いません」
その後、彼女な何をしていたか、どのような特徴があったかなどを話す。
「一夜の幻想として思い出にするしかないのかもしれませんね」
「そうかもしれんな。だが、男としてまた拝んでみたい」
「ふむ?」
「巨乳だった」
「ほう?」
「しかもノーブラだった」
「詳しくお聞かせいただけますね?」
いけ好かない奴だと、余り良い印象がなかったが妙に親近感がわいた。今度酒にでも誘ってみるか。
「査定が終わりました。後、その話僕にも聞かせてください」
朝のギルド職員が話に加わる。その後は透け乳首について熱い討論が行われた。有意義な話は、ギルド職員の二人がギルドマスターに殴られるまで続いた。なぜか私まで怒られた。納得がいかない。
目を瞑り思い出す、幻想の光景。青白い月明かりに照らされてしゃがみ込む彼女。小さな湖畔で行われていたその作業風景は、一級の芸術品がごとく。すべての自然が、風景が、彼女を引きたてる。目の前で行われていることだというのに現実感がなく、ただ、ただ、幻想的だった。
一夜の幻想とはよく言ったものだと思う。自分はあの光景を生涯忘れえないだろう。
しかし、一夜の幻想は、そう遠くない未来に彼らの前に姿を現す。
そう・・・変態を伴って。
次回投稿が金曜日になるかもしれません。