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お家騒動とメイドとタイツ11


 昼食が終わり、若干っ暇である。外には出られないし、指定された場所のみ行動を許されている。練兵所で魔法の練習でもしようか迷う。今の自分にはゲームでできたことは勿論のこと、その応用まで多くのことができる。試さなければいけないこと、試したいことが多すぎて今の状況は窮屈で仕方がない。早いところ解決して、テンプレートを消化したい。まずは、冒険者登録だろう。この世界ではハンターと呼ばれる人たちがそれにあたる用だ。そんなことをつらつら考えていると声をかけられる。


「はじめまして、貴女が兄や騎士団を救ってくれたという話題の人ですね?」


 うおぉ、黒幕(暫定)がいきなりなんでエンカウントするんだよ!心臓に悪いは!兄ということは、件の弟さんで間違いないだろう。


「はじめまして、モードと申します」

「失礼、ストーク家次男クレオです。噂に違わず美しいかたですね」

「はい、自分でもそう思います」

「あはははは!失礼そのように返されたのは初めてでしたので」

「恐縮です」


 ツボに入ったのかしばらく笑いが収まらなかった。このまま話を逸らしたいな。そんなに上手くは行かないようだ。


「ふぅ、・・・。改めて、このたびは兄と騎士団を救っていただきありがとうございます」

「いえ、その様な大層なことはしておりません。回復魔法を少し齧っておりましたので負傷者に回復魔法をかけた程度です」


 実際そのような話となっており、自分の戦闘力については現時点では秘匿されている。


「ご謙遜をなさらずに、貴女がいなければ兄は命を落としていたとお伺いしております」


 一礼で返す。下手に返答すると墓穴を掘りそうだ。にしても本当に感謝をしているように見える。実は黒幕ではないのかもしれないと考えてしまうが、その辺の駆け引きはさっぱりだ。ただ、悪党ではない、そんな気はする。


「父上や兄は忙しいようでなかなか時間を作れないようです。これから茶会を開こうと思っているのです。貴女にもぜひ、来ていただきたいのですが、いかがでしょう」

「お誘いありがとうございます。大変うれしく思います。しかし、現在私はあまり遠くには・・・」

「中庭で開くつもりです。後、許可もいただいておりますのでお気になさらずに」


 何してくれちゃってんの!?許可なんて出すなよ!あほかああああああ!


「それでは、お邪魔いたします」

「ええ、準備はできております。こちらへ」


 くそう、こう答えるしかないじゃないか・・・。



 中庭の四阿にはすでに先客がいた。


「その方が深緑のエルフ様ですか!」


 何それ?そう叫ぶのは金髪ロリッ子。7~9歳くらいだろうか?自分は相手の年齢を当てるのが苦手なので間違っているかもしれない。


「はじめましてモードと申します。その、深緑のエルフと言うのは?」

「失礼しました!私はカトレアです!」

「妹のカトレアです。お転婆が過ぎますが大面に見ていただけますか」

「クレオお兄様の意地悪!」

「ははは」


 そう言いつつ頭を撫でて機嫌をとるクレオ。いいお兄ちゃんぶりである。


「深緑のエルフというのは貴女の髪と伝承から来ているものですね。風魔術に回復魔術の使い手。伝説のハイ・エルフは自分の髪の色と親和性の高い魔術を得意としたそうです。それ故伝説のハイ・エルフではないかと目下噂になっています」

「そうだったのですね」


 知らなかったよ。噂の人物はそれを知らなかったよ。というかハイ・エルフさんは伝説の人か。自分は本当にハイ・エルフなので半分は正解。魔法は水属性のほうが得意なくらいだ。それに魔法は万遍なくすべての属性が使える。いや、ヒーラー職なので神聖魔法が最も得意かな。神聖魔法を極めるために闇魔法は取得してなかった。


「それで、どうなのですか!やはりハイ・エルフ様なのですか!」


 ロリッ子のキラキラした視線が自分の汚れた心を浄化してくるようでなんだか心が痛い。


「いえ、ただのエルフです。ご期待に沿えず申し訳ありません」

「続きはお茶を入れてからに、さぁどうぞこちらへ」



 まさか本当にハイ・エルフが実在したとは・・・。彼女は否定こそしたがおそらく間違っていない。第一印象は知的な人であると思ったが、どうにも考えが顔に出る。本人は顔に出ないよう努めているようではあるが見る人が見ればまるわかりだろう。そして本人も交渉事は苦手であることは自覚しているようだ。


 恐らく彼女は若いエルフだ。少なくても百年どころか数十年くらいしか生きてはいまい。それでも自分よりは年上だろうが。


 妹の無邪気な質問に、しどろもどろになりながら答えている彼女が面白くて笑いをこらえるのが大変だ。なかなか楽しい茶会となった。もうすぐ死ぬかもしれないというのに可笑しなものだ。


 この茶会でいろいろなものが見えた。何より彼女が悪人ではないことが分かりホッとする。兄はかなりの豪運の持ち主のようだ。

 さて、せいぜい足掻くとしよう。そうでなければ、死なせた多くの者たちに申し訳が立たない。何より義理立ていただいたユール卿に迷惑がかかる。これ以上ユール卿を不利にさせるわけにはいかない。


 まずは、許可をもらわずに茶会を開いた言い訳から考えよう。



 

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