お家騒動とメイドとタイツ10
「集める情報はお金、物資の動きを中心に集めましょう。理想はユール侯爵家との取引書類ですね。軍という組織を動かした以上、密約であっても口約束ということはないでしょう」
「・・・」
刺さる視線が痛い。でも負けない!
「私は両家のことを知りません。アレック様、もしユール侯爵家とストーク公爵家で取引が行われたとしてどのような取引が行われたか予測できますか?」
「予測はできますが、申し訳ございません私から話すことはできません。それよりも、ハンニンさんの報酬を見なおしませんか?金銭であればかなりの額をご提示することができます」
手を振る変体。予想はしていたがお金に全く執着をしないな。別の報酬となれば誰かの胸か、別の変態的な行為となるだろう。オフィーリアさんとカララさんを見るが、目をそらされてしまう。まぁ嫌だよね。
「わ、私なら大丈夫です・・・」
顔を青くさせながら言った言葉が心に刺さる。仕方がない、美人メイドの自分が一肌脱ごう。
「ハンニンさん、申し訳ありませんが今私が付けているブラで妥協してください」
「な!?」
「じ、自分の胸をもんでください!ぐはあああああああ!」
血迷ったことを言うレイナード騎士団長。その発言に変態の拳がレイナードに突き刺さる。何気にこいつが直接的な暴力を振るったのは初めて見たかもしれない。まぁ気持ちはわかる。ぴくぴくしているレイナードに回復魔法を飛ばし、服の上からブラを外す。
「有益な情報を確認できましたら私のつけている下着をお渡しします。よろしいですか?」
「ほにー!」
サムズアップをする変態。報酬はこれで問題がない様だ。ブラを受け取り頭に装備する。頭にパンツとブラを装備するハンニンはどこに出しても恥ずかしい変態であった。
何時ものように自分のスカートの中を覗こうとしてくるハンニンに、オフィーリアさんとカララさんが鋭い踏み込みで阻止する。寸前でよける変態。まともに受ければ頭が陥没するような一撃だ。変態なら直撃しても耐えそうだが。
「お話しは以上でよろしいでしょうか、アレック様」
「あ、ああ」
「では、お召し物をご用意いたしますので、お部屋へ向かいましょう」
有無を言わせないオフィーリアさんの一言に、思わずと言った体で返事をするアレック。そういえば今自分はノーパンノーブラである。
「・・・明日、また使いのものだします。昼食前にまた集まりましょう」
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大切な話があるとのことでレイナード様、オフィーリアとアレック様の部屋に向かう。恐らく彼らに絡んだ話だろう。私は昨日変態の素顔を確認することが困難であることと、最終的に彼らに頼ることになるかもしれないが情報収集などについては余り当てにできないであろうことを報告した。
それをどう判断するかはアレック様次第だが、間違っていないと思う。話を聞いてから判断するとのことではあったが、彼らは目立ちすぎる。囮としては有用かもしれないが情報収集は無理だろう。
・・・そう思っていた。が、思わぬ方法で情報収集を提案するメイド服の女、モード。私は彼女のことを図りかねる。よくわからないのだ。変態以上に警戒が必要であるとは考えている。強力な風魔法の使い手、そして回復魔法まで使うことができる稀代の魔術師。変態を手なずける手腕。何より同性であるはずのモータンを簡単に変態へ売りつける。・・・正直あの提案を聞いたとき自分ではなくてよかったと心底安堵してしまった。
報酬変更の話題が上がり、モードが私を見たとき、思わず目を逸らしてしまう。モータンには悪いが我が身は大切なのだ。結局、彼女が自分の下着を変態に差し出すことで丸く収まったが大きな借りができてしまった。これで有益な情報が見つかった場合どのようにしてこの借りを返せばいいのか。すべて計算尽くだとするとかなり恐ろしい女だ。
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私はモータン。実家は小さな畑を耕して細々と生活をしている。自分は末っ子であったため、富豪、商人の家に奉公として家を出された。それは寂しいことではあったが、仕方のないことであると諦めた。だが、その奉公先の商人はかなりの悪人だったようで、私は国外に奴隷として売り払われるところであった。牢に繋がれこれからのことに絶望していたとき、助けに現れたのがアレック様率いる騎士団だった。
それから私は恩人であるアレック様のお屋敷で働くこととなる。何度も何度も感謝の言葉を重ねるが気にするなと、私の感謝を受け取ってくれなかった。でも、私はアレック様のためならこの身を捧げる覚悟である。
・・・だからあの恐ろしい提案にも頷くことができた。
何より、アレック様が私のために別の報酬を提案してくれた時は涙が出るほどにうれしかった。だがそれに甘えることはできない。結局モード様がご自身の下着を差し出すことで話が纏まってしまう。
「この金貨はどうしたらいいのでしょう・・・」
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妹分ができた。モード様は幼少の頃にあまり甘えることができなかったのかもしれない。実際の年齢は分からないがあれ程の魔術の使い手だ、幼少のころより厳しい修練をなされてきたのうだろう。その反動で人の温もりを求めてしまうのかもしれない。
ただ、貞操観念が低いのか簡単に人前で下着を脱いだりしてしまう。何よりモータンを報酬として差し出してしまう。これらについて、一度モード様とお話をしないといけないだろう。服を自分で着ることができないなど貴族、またはそれに準ずる家の出だとは思うが、どうにもちぐはぐな印象を受けてしまう。
私をあの変態から庇ってくれるなどの優しさを見せてくれたことから悪い人ではないだろうとは思う。
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あの変態はかなりの使い手である。昨日は騎士団と警備兵、魔術師でもってしても奴を止めることができなかった。何より先ほどの一撃がその実力を物語っている。一応屋敷の中ということでフルプレートの鎧こそ着ていなかったっがそれなりの鎧を身に着けていた。だが、在ろうことか奴は鎧越しにダメージを与えてきた。しかも、だ、鎧に全く傷がない。私にだけダメージを与えてきた。あいつは変態ではあるがかなりの手練れである。
「モードさんはピンクの下着か・・・」
あれほどの実力をどこで、どのようにして体得したのだろうか。
「今は、ノーパンノーブラか」
武人として奴への興味が尽きない。
PCがやっと安定した。