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お家騒動とメイドとタイツ9 メイドとサクリファイス

 

 トイレより出たとき丁度よくお貴族様の使いがやってきた。たぶん待てたんだろう。内緒話をするので個室に呼ばれると思っていたら、中庭に呼ばれる。


 小さな噴水を中心に血管の様に石畳の水路を流れていく。それぞれの区画ごとにテーマがあるのだろう芸術を解さない自分にもそのセンスの良さがわかる。この庭を造った人間はきっとロマンチストだったに違いない。


 石屋根の瀟洒な四阿が目的地だろう。石橋を渡り目的地に到着する。


「お待ちしておりました」


一礼し、勧められるままに座る。オフィーリアさんがお茶を入れてくれる。独特の香りがする。この世界特有の茶葉だろうか。甘い香りがする。お茶のことなど分からないがカップを持ち上げて香りを楽しむ。変態はスカートの中を楽しんでいる。


「楽しんでいただけましたか?」

「はい、初めての香りです。この地方特有の茶葉ですか?」

「ええ、ストーク領の特産品なんですよ。お茶菓子の香り付けにもよく使われます」


 益体もない世間話を続ける。さて、どうやって切り込んでくるのやら。余り交渉とかは得意ではないんだけどなぁ。


「ですが、このままだとこの茶葉も、ただの灰に代わってしまいます。争いを避ける努力をしたいとあなたは仰っていました。その言葉の続きを詳しくお聞かせいただけませんか?」

「たいそうな考えがあるわけではありません。質問に質問で返すようで大変申し訳ないのですが、信用することのできる人間は何人いますか?」

「私と父上を抜かせば、4人おります」

「詳しくお伺いしても?」

「はい、騎士団長のレイナード、メイド長のオフィーリア、諜報などを担当している猫獣人のメイド、後忠誠心は高いのですが、これと言って特技などはありませんが、牛獣人のメイドが一人です」

「その全員を、屋敷の、出来れば人払いをしたところにお呼びすることはできますか?」


オフィーリアさんに目配せをするお貴族様。無言でうなずき行動に移すオフィーリアさん。一応予防線を張っておこう。


「残された時間にもよりますが、かなり行き当たりばったりで、成果が上がるかも運によるところが大きいものとなってしまいます。ですので期待に沿うことができないかもしれません」

「かまいません。本来は私達だけで解決しなければいけない問題でした」


 成果が上がらなくても大丈夫そうだ。まぁ、その時は自分が火消し屋として戦わないといけないんですけどね。後、獣人のメイドさん。夢が広がるね!



 屋敷の一室に集まった人間を見回す。騎士団長はどうでもいい。それより獣人のメイドさん。猫獣人のメイドさんはカララという名前らしい。耳は人と同じ場所にあるがすごくふさふさしている。耳と同じ栗色の尻尾は毛先が真っ白でリボンがしてある。可愛い。耳としっぽ以外はほとんど人と変わらない。牛獣人のメイドさんは頭に小さな角と、同じく人と同じ場所に綿毛のような白い耳がついている。尻尾の先に黒い毛が綿毛の様に生えている。そして何より特質すべきはその胸。自分やオフィーリアさんよりさらにでかい。特注サイズであろうメイド服も、はち切れんばかりに伸びている。名前は。


「私はモータンと言います!」

「・・・」


 ニッコリ微笑み頭を撫でてごまかす。親は何を思ってこの名前を付けたのだろう。


「自己紹介も終わったところで、このたびの作戦の成否にかかわることを確認しようと思います。ハンニンさん、天井に張り付いてください」

「・・・」


沈黙が痛い。変態も手を振りムリムリとジェスチャーで示してくる。無言で今はいているパンツを脱ぐ。


「な、なにを!」


一番に反応するオフィーリアさん。可愛い。だがここはスルー。


「天井に張り付いて移動できたらこれを・・・」

「ほにいいいいい!」


 奇声と共に天井に張り付く変態。なんだ、やっぱりできるじゃないか。パンツを壁に向かって投げてみるとカサカサ!という擬音が聞こえてきそうな方法で天井から壁へ移動し、パンツを掴む。問題はなさそうだ。


「この方法を使ってこの屋敷の情報収集を行ってください。昼夜は問いません。隠密は使えるのでしょう?」

「・・・」


 近接を極めたこいつなら忍者系のスキルを必ず取得しているはずだ。そうでなければこれまで見せてきた動きに説明がつかない。


「それと、モータンさんにお願いしたいことがあるのですがよろしいですか?」

「はい!私でお役にたてることがあるなら!」

「ありがとうございます。お礼と言っては何ですがこちらを」


ゲーム内通貨であったコインを取り出す。


「う、受け取れません!」

「私達が使っていた通貨ですが、こちらで両替できるか分かりません。そのため金としての価値しかありっません。もしかしたら装飾品としての価値はあるかもしれませんね」

「そ、それで金ですよ!?」

「今回の作戦で、もしかしたら人が死なずに済むかもしれないのです。それを考えるなら金貨の1枚や2枚は安い物だと思います。自分で両替が難しいようであれば、アレック様に両替してもらうのがいいかもしれませんね」

「問題ありません。ご希望であれば私が責任をもって両替いたしましょう」

「で、でも・・・」

「差し出したものを受け取るのは少し恥ずかしいので納めていただければ助かります」

「は、はい!がんばります!」


将来この子が悪い大人に騙されないか心配である。パンツをかぶりクンカクンカしている変態に向き直る。パンツの、ある意味正しい用法なのかもしれない・・・。さて、更にエサを与えてやる気を出してもらおう。


「収集した情報はアレック様達と判断し、有力なものと判断できた情報の数だけモータンさんの胸を好きにしていいですよ。快く引き受けてくれたモータンさんに感謝してください」

「うひょーーーーーーーー!」

「え・・・」


 やる気に燃えていたモータンの顔が凍り付く。現実は時に残酷一面を見せるものだ。




 

こうして少女は大人の階段を上る。

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